詐欺師と勇者と新たな仲間
「おい、少年。この後どうするんだ?」
勘定を済ませ街中を散策しいてる。もちろん、勘定は俺が払った。少年は本当にお金を全く持っていない。当然だがおごったのではない。建て替えたのだ。いつか返してもらう。利子付きでだ。
「本当は冒険者登録したかったんだけど……。」ジー
やめろ。俺を見るな。
「それは後回しだから……。仲間集めかな?」
仲間集め。マーホイ王国やコンブ帝国はまだしも魔族領まで付いてきてくれる物好きはそう簡単には見つからない。それこそ少年が俺にやったように実力行使で従わせるしかないだろう。
俺はこの少年の危険性を十分に理解した。だから、確実に安全に逃げられる時を待つ。それまでは『仲間ごっこ』に付き合ってやろう。そうだな、最低でも魔族領に入る前に少年とは縁を切りたい。
「そうか、なら……。奴隷市場にでも行くか?」
これが確実だろう。奴隷なら1度契約してしまえば主の命令は絶対。他国だろうが魔族領だろうが従わせることができる。
「奴隷か。確かにテンプレだけど……。」
「何を躊躇している?金か?金なら貸してやる。だが、貸すだけだ。後で返せぇ。もちろん利子付きでだぁ」
「おじさんそればっかりだね。」
少年は苦笑いを浮かべながらうつむく。
何を考えている、何を企んでいる。俺は正式に少年を危険人物トップ3に加えることした。
「当然だ。俺は三度の飯よりお金が好きだからなぁ」
「わかった。行こうか、奴隷市場に」
どうやら方針が決まったようだ。
★ー★ー★
やってきました奴隷市場。正直ここに来るのは俺も初めてだ。奴隷に興味がなかったからな。人間や獣人、魚人や小人が檻にぶち込まれているサマを見るのはなかなかくるものがあった。俺は詐欺師だ。捕まれば囚人奴隷にある可能性がある。つまり、将来的に俺が世話にある可能性がある場所だ。
「旦那、今日はどういったご用件で?」
店の店主らしき小太りな男性が話しかけてきた。
「買い物だ。それと買いに来たのは俺じゃぁない。こっちの少年だ。俺は付き添いだぁ」
ちなみにお金はもう少年を貸してある。
「それはそれは。失礼しました」
店主は少年の方を向き改めて挨拶し始めた。
ここから俺は一切介入しない。少年が店主と話してる間、俺は暇なので市場を見学することにした。もちろん、1番に向かったのは囚人奴隷などが拿捕されてる檻だ。
老若男女様々だ。頭の悪そうな顔をした者や屈強な者。はたまた痩せ細ってはいる者や何か企んでる顔した者。
俺は将来こんな奴らと寝食を共にする可能性があるのか。絶対に嫌だ。改めて決意を固めるのであった。
その後、1時間ほどぶらぶら見学していたが、ようやく少年の買い物が終わったようだ。少年が手を振りながらこちらに向かってくる。その隣にメイド服を着た少女がいた。
「おじさん、終わったよ!」
「は、はは、は、じめまして!私はリリーって言いま……申します。えーっと、えと、あ!炊事洗濯戦闘なんでもござれです!よろ、よろ、よ、ろしゅくお願いします!」
なんかとんでもない奴がきた。オドオドしい少女だ。
よろしくなど本当はしたくないのだが「よろしく」と軽く挨拶する。
改めて少女を見る。身長は少年より少し高い。髪は肩まで伸びている。顔立ちもよく清潔感もある。世間一般では美しいだとか可愛いとでも呼ばれる人種なのだろう。とても奴隷だとは思えなし見えない。それになぜメイド服を着ている。奴隷は普通鼠色のボロ服と相場が決まっている。それと、ッ______!まさか、な。
「詳しい話しは旅の道中でするとして……」
少年は俺の顔を見る。
「冒険者ギルドがある1番近い町か村ってどこにあるの?」
冒険者ギルドがある1番近くの町か村、か。
そうだな。
ここから直線距離で徒歩3時間。ここ、アリナンカ都市の北側にあるキタナンカの町が1番近い。
今から出れば夕暮れ前にはつくだろう。
「キタナンカって町が1番近い。歩いて3時間と少しだ」
「ふぇ!??キタナンカの町ですかっ⁈わ、わわ、私!案内させてください!!」
突然、奴隷少女リリーが声を上げる。
奴隷の癖に態度がでかい奴だ。でかいのは胸だけにしと……、なんでもない。
「リリーはキタナンカの町知ってるのか?」
少年が尋ねる。
「ハイ!私はキタナンカの生まれ……なの、でェ…。」
奴隷少女リリーの声がだんだんと小さくなる。どうやら今更、奴隷あるまじき態度を取ってしまったことに気がついたようだ。顔から血の気が引いていく。
「す、しゅ、しゅみまッ「よし!じゃあ、リリー!案内頼むよ!」ひゃ、ひゃい!!」
本当に大丈夫なのだろうか。そもそもコイツ本当に奴隷なのだろうか。怪しい。
約3時間の道なりだ。なに、詳しい話は道中みっちりじっくり聴かせてもらおうか。
次の投稿は10月5日です。
1話1話短くてスミマセン!