詐欺師と勇者の出会い
俺は、詐欺師だ。なんならこの国1番の詐欺師と呼んでもらっても構わない。そんな俺は先日、人生1番のミスを犯した。犯してしまった。
「おじさん!本当にありがとう!!助かったよ!おじさん良い人だね!!!」
俺の顔をこれでもかとう言うほどに目を輝かせて見つめてくるこの少年。身なりがかなり良い。顔も整っていておそらく世間一般ではイケメンと呼ばれる人種なのだろう。こいつは昨日公園で倒れていたところを俺がゆうかi…保護した。身なりが良いもんだから良いところのお坊ちゃんだと思った。貴族の坊ちゃんなら保護したお礼として親から金をせしめるつもりだった、んだがな。
まさかコイツが巷で噂されている”異世界からきた勇者様”だとは思わなかった。
隣国、”カリクラ国で勇者を召喚した”という噂が流れたのは丁度1週間前だ。噂では勇者は複数人召喚されたそうだ。だか、しかし、そんなことは俺には関係のないことなのだから軽く流す程度にしか聞いていなかった。
まさかこんなにも関わるとは思はなかったが。
「おじさん、おじさん!仲間になってくれるって話し考えてくれた?」
この人懐こいコロコロした笑顔を見ていると心底イライラする。まるで小さい頃の自分を見ているとようだ。それはもうピュアピュアした笑顔で観光客に近づきカバンは拝借する。子供特権の窃盗法だ。
「……。まず、おじさんと呼ぶのを止めろ。それと、いつまで猫を被ってるつもりだ。」
「フフッ。おじさんやっぱり面白いね。」
少年の雰囲気が変わった。明らかにキャラを作っていたのは一目瞭然だったがここまでスイッチの切り替えが早いと逆に引いちまう。
「それで、どうなのさ?俺の仲間になる?それとも……。」
少年から殺気が放たれる。正気の沙汰じゃあない。
この少年の目、明らかに人殺しの目だ。ここの街に来る前にすでに何人か殺めてる。そんな目をしていた。俺は一流の詐欺師だ。だが、人殺しではない。
そうだ、丁度いい。今の現状を話そう。今いる場所はアリナンカ王国の端にある俺の家の中だ。俺は愛用のイスに手と足を縛られた状態で座らされている。その俺の前に少年が魔法杖をペン回ししながら俺の返答を待っている状態だ。
つまり最悪の状態と言える。もしここで少年の仲間になるのを断れば俺は殺されるだろう。仮に仲間になったとしても、俺は恐怖で夜もヨチヨチ寝てられなくなる。そのうち発狂死してしまうかもしれない。
今死ぬか後で死ぬか。当然答えは後者だ。仲間になったと嘘つき、隙あらば逃げだす。
「わかった。お前の仲間になる。だからおじさんと呼ぶのをやめr「ィヤァッターーーーー!!!」……。」
「いやー、ごめんね。おじさん!」っと言いながら少年は無防備に魔法杖を机の上に置き俺の手足を縛っていたロープを解いてくれた。
ありえない。さっきまで殺そうとしていた相手を「仲間になった」だけでここまで信用するものなのだろうか。
驚いたがここはポーカーフェース。とりあえず自由になった手足を軽く動かす。
「おい、しょうねn「あ!そうだ!!」……。」
このガキィ、わざとか?
「おじさん、すぐ旅の支度してね!」
これが俺(詐欺師)と少年(勇者)との出会いである。