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翌朝、妻を駅まで送ってから出社した。
もちろん、家を出る前に思いっきりハグとキスをして。
この1週間、後悔しないようにと存分に濃密な時間を過ごしたが、それが逆に寂しさを募らせる結果になってしまった。
仕事を終えスマホを見ると、妻から『無事帰宅しました\(^∀^)/』とメッセージが届いていた。
帰っちゃったんだなぁ。寂しさを改めて感じる。
誰も居ない部屋へ帰ると、俺は真っ先にフィギュアを掘り出した。
電源を入れトイレの棚に置くと、彼女の元気な声が響く。
「あのね、あのね、こんにちは!」
「こんにちは」
少女の言葉に応えながら、俺はちょっとだけ不満を零す。
「奥さんがね、帰っちゃったよ」
「…」
可愛い小人は満面の笑みを浮かべたまま、話すことはない。
「もっと一緒に居たかったよ」
「…」
俺は応えのある言葉を口にする。
「寂しいな」
「一緒にいるよ!寂しくないよ!」
「好きだよ」
「大好き!」
はぁ…と溜息を吐きながら、俺は少女の頭を撫でる。
この子が妻だったらいいのに、そんなことがふと頭を過ぎった。
それから毎日、俺は小人さんに胸のうちを話した。
妻を愛して止まないこと。
一人でいるのが嫌なこと。
痔のことを黙って嘘を付いているのが心からつらいこと。
心配をかけまいとする気持ちの他に、下らないプライドが素直になれなくしていること。
そんな話を聞きながら少女は時折返事をし、そして再び黙って笑っていた。
不毛な相談ではあることに違いはなかったけど、それでも俺には嬉しかった。