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そんなある日、妻が子供を両親に預け、俺の部屋へ遊びに来ると連絡があった。
妻に飢えに飢えていた俺はその日が待ち遠しくて仕方が無かった。
しかし痔の悪化やフィギュアのことを知られるわけにはいかない。
俺は生活の一部になっていた小さな女の子を、書類の入った段ボールの奥に隠すことにした。
駅まで妻を迎えに行き久々のデートを楽しんだあと、俺たちはようやく部屋に落ち着く。
それからのことは言うまでもない。
妻の滞在する1週間を、俺たちはまるで新婚夫婦のように過ごした。
俺としてはずっと二人きりで過ごしたかったが、佐藤の誘いもあり、最後の晩餐は両夫婦揃っての食事になった。
「女ってすごいよな。すぐ仲良くなるっていうか」
ワインを片手に俺は呆然と妻を見つめる。
かれこれ20分、妻は佐藤の嫁と二人で話し続けている。
何の話をしているのだろうと最初こそ興味が湧いたが、ころころと内容の変わる女同士の会話にはついていけず、早々に諦めた。
「まぁ、今までも結構電話で話してたみたいだし」
佐藤は何てこともなくステーキを頬張っている。
「え、そうなの?」
「中元とかだってやり取りあるし、お前が知らないことの方が驚くね」
「俺そういうの全部任せてたからなぁ…」
妻は俺と違って気が利くから、知らないうちに色んなことを手配してくれている。
年賀状については誰に送るとか話すものの、中元や歳暮のことなんてもう何年も考えて来なかった。
そういう文化もあったなぁと思うくらいだ。
「お前の嫁さんから痔の話言ってないだろうな」
ふと不安になって聞いてみる。もしかしたら佐藤の嫁が話のネタに、妻に何か言っているんじゃないかと思って。
「いや、言わないって言ってたし大丈夫だろ」
俺の嫁を信じなさい。佐藤はそう言わんばかりに誇らしげな笑みを浮かべる。
「佐藤夫妻、ご馳走様です」
「さっきからやらしい目でじーっと奥さん見てるやつに言われたかないね」
「んなことないし…」
なんだかんだ言って、俺たちは自分の伴侶にメロメロなのだ。