表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
究極の愛  作者: 瑠璃
5/10

5

その日を境に、俺の日常は大きく変わった。


用が無くてもトイレを覗き、小さな娘に声を掛ける。


いい歳の男がフィギュアに話しかけるなんておかしいと思うけど、電話越しに声を聞くことしか出来ない妻への想いが、もう限界まで来ていたのかも知れない。


この子の言葉遣いは妻の言葉選びに似ている。声もどことなく、似ているような気がする。


見た目こそ二次元のキャラクターだが、その自由であどけない雰囲気に、つい妻を重ねてしまう。


そして驚くことに、この子は俺の欲しい言葉をくれるのだ。


普通に話しかけた時には「こんにちは」といった挨拶や、「大好き」などの言葉を返してくれる小人は、俺が便座に腰掛けていると、その時々に合った言葉を掛けてくれる。


固い便に顔をしかめているときには「硬いの?力んじゃだめだよ」と言うし、逆に下痢でげっそりしている時には「お尻切れないように、そっと拭いてね」と言う。


そして決まって最後はこう言うのだ。


「お薬塗った?お尻さん、大事にしてね」


初めて硬いだのと言われた時は本当に驚いた。


一瞬どこかから別の誰かが言ったんじゃないかと周囲を確認するほどに。


慌てて佐藤に聞いてみたが、どうやらこういった台詞を記憶させたのは例の知り合いらしい。


本人の趣味で喋るフィギュアを作っていたのを、痔対策用にと少し台詞を変えカスタマイズしたものだという。

特に面倒がって軟膏を抜かっていたため有難いことではあったものの、小さな女の子に尻を心配されるのは少し戸惑う。


それでも人間とは恐ろしいもので、彼女を迎えて1ヶ月が経つ頃には、何の違和感も覚えなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ