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究極の愛  作者: 瑠璃
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2

「ったぁ……」


スマホ片手に便座に腰掛け、俺は直に体を抉る痛みをやり過ごす。


ウォッシュレット付トイレにこだわって部屋を決めたのは妻だ。


半年前、マンションを購入した直後に転勤を言い渡された。


1年だけの異動ということで、俺は単身赴任を選んだ。


痛みは山場を越えたものの、便を拭き取ろうと紙を当てた途端その鋭さを取り戻す。


この半年、痔の調子が良くない。


もちろん、妻への排便報告は続けている。


妻はいつでもちゃんとそれに応えてくれるし、専用の軟膏も無くなる前に送ってくれる。


一人暮らしが始まる前に「治療したら」と言ってくれた妻の言葉を、ちょっとした見栄と不安で断った俺が悪い。


妻の有り難さを思い知る。


言わんこっちゃ無い、と呆れられるのが嫌なのか、私がいないとダメね、と笑われるのが嫌なのか。


下らないと自覚しているのに、男の見栄は現状を知らせることを阻む。


『2日ぶりのトイレ』という俺のメッセージに対し、妻から返事が来る。


『お尻さんの調子はどう?(´∀`)』


『出血多量…(T_T)』と打ってから、削除する。


少し考えて、結局俺はまた嘘をついた。


『快調快調\(^○^)/』


すぐに『良かった(*´∀`*)』と返事が来る。


「ごめんな…」


こんなに愛しているのに。どうしても言えない。


なんてちっぽけな男だろう。自分が嫌になる。


それでも俺は、日々その嘘を白状することなく、また塗り重ねてしまうのだ。

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