アイ采07
「本日の訓練はここまで。各自速やかに寮に戻り食堂へ集合しろ。以上、解散」
いつもどおり教官のそんな声を聞きながら、私たち防衛遊撃科の生徒六名は寮へと帰った。
自室に戻り、訓練着から制服へと着替える。いつもならここで、騒がしい友人がそのドアをノックし部屋に乱入してくるところである。
しかし、それはもう過去のこと。ティア・レオナードは先日<ヒトガタ>から思わぬ攻撃を受けて帰らぬ人となってしまった。
はあ、と深いため息をつきながらベッドの上に寝転ぶ。
瞳に映るものはほのかに発光し室内を照らしている無機質な天井と、カラカラと同じ所ばかり回り続けている三枚ばねの形をしたオブジェクト。
なんだかそれが妙に心に響いた。
まぶたの奥からは熱い何かがこみあげてきた。液体に浸食され、滲んで見える視界に映るもの。
それはさきほど視認した自室の物ではなく、つい先日まではそこにあった確かなもの。
「う……うぅ…………う……」
無意識のうちに涙があふれ出していた。
ティア・レオナードという少女と私が過ごしたのはわずか二カ月にも満たないわずかな時間。しかし、そんな短いときの中でも積み重ねた友情や想いはあるのだ。
それが一瞬のうちに失ってしまった。それも、ある意味では私の不注意が招いた結果で。
後悔しても、悔やみきれなかった。
いつまでそうしていたのだろうか。
私は控えめにノックされるドアの音に気がついた。
涙をぬぐい、扉を開く。するとそこには、一人の少女が立っていた。
「…………。いつまでたっても来ないからなにしてるのかと思えば…………。まあ、いい。ほらっささと食堂に来い」
沙羅先輩はいつも通りの声音でそう言い、すぐさま食堂方面へ歩き出した。
それを少し駆け足気味に追いながら、私たちは食堂へと入った。
「まったく、あなたたちは集合時刻に一時間も遅れてやってくるとは……」
中へと入った私たちを迎えたのは、寮監のそんな声だった。
と、そこで。私はふとした疑問がわいてきた。
「いや、梨香は悪くないんですよ。ちょっとアタシが相談に乗ってほしいことがあるっていったんで、巻き込んじゃったみたいな感じなんで。そうだよな、梨香?」
だが、その疑問を口にする前に沙羅先輩からそんな言葉をかけられた。
私はそれに反射的に「はい」と答えた。
「そうですか……。まあいいでしょう。あなた方があまりにも遅いので他の生徒の迷惑にならないように先に話してしまいましたが……」
寮監はそこでいったん言葉を区切り、私たちに続きを話していいかと視線で訴えてくる。
もちろん、それを拒否する理由なんてものは存在していない。
首を縦に振る。寮監は一つ頷いて、続けた。
「来週から、本学園に生徒が一人転入してきます」
「珍しいですね。学園に転入生が来るなんて」
私も沙羅先輩と全く同じ疑問を感じていた。
この学園に転入生が来るなんて不可能に近い。
なぜなら<フェアリーアーマー>の適性の有無は決して変わることなどなく、仮に変わったとしてもそれを検査する方法はない。そして、仮に検査で来たとしても、今度は自身の<フェアリーアーマー>がない。そして、専用の<フェアリーアーマー>がなければ全てのカリキュラムを受けることができない。そうすると必然的に転入する意義はない。
そう言った理由で、今までこの学校に転入生というものはいなかったのだ。
「いえ、正確にいえば転入というよりも、特例で進級といった方が正しいんです」
しかし、寮監は自分で言ったことをすぐさま訂正した。
そして、それによって疑問が解決した。
事前訓練科の生徒とならば専用機持ちでも不思議ではない。それに<エンシェントエネミー>の知識なども私たち防衛遊撃科の生徒には及ばなくても一般の学生たちよりも知っているだろう。
しかし、防衛軍に加入する前に基本的な訓練を施すのが防衛遊撃科をはじめとした<アルカディア防衛特殊訓練学院>だ。そしてそこに入るために一通り必要なものを教えるのが事前訓練科なはずだ。
それなのになぜ、その事前訓練科の生徒が防衛遊撃科に転入してくるのだろうか?
「えっと……、なんで事前訓練科の生徒を急に進級させたんですか?」
だから私は、寮監にそんな質問をしてみた。
「それには主な理由が二つほどあります」
と、案外簡単にその理由を聞くことができた。
「二人は集団戦を想定して設計される<フェアリーアーマー>があることは知っていますよね?」
が、しかし。唐突に話がとんだ。否、そう思えただけ。
おそらく、その転入生の機体も、いずれかのシリーズに属す機体なのだろう。
「はい。アーラが使っている<シルフィード>もそのうちの一つですよね?」
「ええ、彼女の機体は<エレメンツ>のうちの一つです。あなた方生徒会に限って言えば、他にはサーシャの<アルカイド>が<グラン・シャリオ>に所属しています」
「えっと、それがどうかしたんですか?」
なんとなくの察しはついたが、一応確認してみる。
寮監は一つ頷き、予想通りの答えを言う。
「彼女の機体<ピュラリス>は、アーラの<シルフィード>と同じく<エレメンツ>に所属している機体です。そのために、今から戦闘面や友人面などを築けるのならば早いことにこしたことはないという理由です」
しかし、そんな理由ならば何も、こんな急に進級させる必要もない。他にも何らかの理由があるのだろう。実際、さっき理由は二つあるって言っていたし……。
「でもそれだけだと、こんなに急ぐ必要もないんじゃないですか?」
沙羅先輩も同じことを思ったのだろう?
そう寮監に訊いている。
「それは二つ目の理由につながっていて…………。実は、今年の事前訓練科の生徒はあまりやる気がないらしくて……」
「自由参加だからといって、まったくきていないと?」
あえてぼかした表現だったが、沙羅先輩が的確にそれを言葉に直した。
「ええ。訓練が始まってから実際に参加した人数は毎回一人だけです」
事前訓練科というところがどういうところなのか、私はまったくと言っていいほど知らない。
私は、先輩たちと一緒になって<フェアリーアーマー>を操縦し<エンシェントエネミー>の討伐を行って、実地訓練を行っていたからだ。
だが、当然他の生徒皆事前訓練科に通っていた生徒のみだ。もちろん、通う通わないは個人の自由だ。
ただし、旧日本にならって定められているところで言う三学期に相当する一月から三月までの期間はかなり重要なものらしいので積極的な参加が推奨されている。
しかし、それにも全く参加しなかった私は初めて同級生と出会ったのは今年度に入ってからだ。
そのため、「なんか見た事ない生徒がクラスにいるっ!?」とか言われたっけ。
今思い返してみると、それに反論したのが初めてティアと会話した時で、そこに事前訓練科のころから比較的中の良かったアーラが止めに入って……いや、あれはただ傍観していただけだっけ?
とにかく、あの時に私たち三人のパーティができたと言ってよかった。
…………って、今はこんなあまり昔ではない昔のことを思い出している場合じゃないんだった。
で、他の生徒から話を聞いた限りでは、事前訓練科の内容は、防衛遊撃科で教えている内容よりはワンランク下らしいのだが、それでも実戦では使うことのできる程度のレベルはあるらしい。
あくまでも、その生徒個人にとっての感想だから少々説得力に欠くが、複数人に聞いて皆そう答えたのだからあまり問題はないと思う。
そして、そんなところに通う生徒を、こんな急に進級させることで果たしてどれくらいの利益がうまれるのだろうか?
確かに、今から三年後。私たちの学年が防衛軍に加入する年の加入人数は確かに増えるだろう。
しかしながら、翌年の加入人数はその分だけ減少することになる。
そして、私の記憶が正しければ、私たちの一つ下の学年は適合者が六人しかいない学年だったはず。
さらにその翌年の学年に十三人とやや平均よりも多い人数が控えているとはいえ、あまり得策ではないと思う。
「それが今度の転入生ですか?」
そんな思考を中断させたのは沙羅先輩のそんな一言だった。
私は少々あわてながらも、意識をそちらに向ける。
「ええ。それで、労力や設備の使用費などが少々かさむのでそれを減らしていかないと資金が持たないのです」
そう言えばさっき、参加しているのはたった一人って聞こえたから、やはりそこが原因なのだろう。
元から人数が少ない。
少ないから当然集まる人数も少ない。
少ないなら少ないなりにやろうとしてもやる気がない。
やる気がないから、集まらない。
集まらないから、無駄だし出来ればやらない方が資金がかからない。
でもまじめな生徒が一人だけ毎回参加しているからやらざるを得ない。
今までは、こんな状況で運営していたのだろう。
しかし、それならば予算の都合上行わない方が賢明な判断。それでも、参加する生徒は訓練をした方がいい。
そんなところに、一つ上の学年で一人死者が出た。
その枠にこの娘をかわりにいれたらどうだろうか?
そんなことを転入のタイミングと、寮監の言葉が物語っていた。
その後、いくつかの注意事項を言い渡された私たちは、アーラたち生徒会メンバーと合流し、生徒会の今後について話し合った。
「そう言えば、今度転入してくる生徒は生徒会に所属されるらしいですね?」
私たちがテーブルに着くなり、そう切り出したのはアリサ先輩だった。
「ん? ああ。アーラと同じシリーズの操縦者だからだろ?」
沙羅先輩はそう言ってアーラのほうに視線を向けたが、当のアーラはというと、ペラッっというページをめくる音を返すのみだった。
「…………まあいい。とにかく明日、その転入生が来るらしいからそのときにいろいろと打ち合わせればいいか」
このようなアーラの反応に慣れたのか、沙羅先輩は会話をやや強引に進める。
「って、あれ? 確か転入してくるのって来週じゃありませんでしたっけ?」
再びアリサ先輩が問う。
「いや、事前の準備も何もなしに転入することなんて普通に考えてないだろ」
若干呆れたような声音で沙羅先輩は言う。
アリサ先輩はそれで納得したようで、「どんな子なのかな」と天災の名に恥じぬことを発し隣の恋人はやや膨れていた。
そんな姿を眺めていると唐突に沙羅先輩が椅子から立ち上った。
「アタシちょっと用事で来たから先に戻るわ」
そう言って、沙羅先輩は自室とは反対方向へと消え去った。
そして残された私たちは特になにをするわけでもなくそのままお開きとなった。
「えっと、はじめまして。ユリア・リヴォーヴナ・サウニナです。よろしくお願いします」
そう言って目の前の少女は深々と頭を下げた。
脇で揺っているストロベリー・ブロンドの髪が顔をあげた拍子に勢いよく跳ねる。
その真紅の瞳はどこか不安げに揺れている。
「アタシは鳴神沙羅だ。これでも一応生徒会長を務めている」
「私は名目上副会長を務めているアリサ・ラ・フォンテーヌです。以後お見知りおきを」
「同じく副会長のサーシャ・スチュアートです」
「はじめまして。私は桐原梨香って言います。よろしくね」
「アーラ・フォン・ヴォルフェンビュッテル」
ユリアの自己紹介を受けて順に軽く自己紹介をする。
場所は私たちが生徒会に入った時歓迎会が催されたのと同じ場所だ。
そんな場所で、各自の交流を深めながら食事などをとって過ごすこと一時間。
「よし。じゃあ、そろそろ時間だから、みんな準備しとけよ」
唐突に沙羅先輩がそう言った。
それを受け、私を除く四人はてきぱきと片付けを行って行く。
「ん? 梨香どうしたんだ? そろそろ準備しないと間に合わないと思うが……」
特になにをするわけでもない私の様子を見て、沙羅先輩は不審に感じたのだろう。そんな声をかけてきた。
「時間がないって、このあと何かありましたっけ?」
さっきからそんなことばかり聞こえるが、私には一切心当たりがない。だから、そう沙羅先輩に聞くことは当たり前の行為のはずだ。
「え? ……ああ、そう言えば梨香には言ってなかったけな?」
しかし、予想に反して沙羅先輩はそんなことを言った。
「この後、STE―07dの討伐訓練を行うんだよ。ユリアの実力は皆が知っておいて損はないからな。というわけで、梨香とアーラと三人で討伐訓練を行ってもらうことになっている」
何気なしにその言葉を聞いていたが、そこでふとした疑問が一つ浮上する。
「あれ? じゃあなんで沙羅先輩は私にそれを教えてくれなかったんですか?」
その質問に対し、沙羅先輩はひどくあわてたように答えを返した。
「え? そ、それは、その……あれだよ。うん、あれ…………」
「…………」
「あ! いや、その、忘れてたわけじゃないんだ、うん。ただ、ほらさ、アタシと梨香って付き合いそれなりに長いじゃん。だったら、言わずともわかってくれるかなぁって…………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
妙な沈黙が下りる。
「ま、まあ、あれだ。ほら。結果的に間に合ったんだし、な?」
「…………まあ、いいですけどね」
沙羅先輩の表情が、パァッと明るくなった。
が、すぐに一つ咳払いをし、気を引き締めて行った。
「さてと、伝人準備ができたようだし、これから第二ゲートへと向かう」
「…………で、結局こうなるわけね」
目の前に広がるのは、殺伐とした雰囲気の観客席。
見物人や監督を除くと、見物人は全くいない。
何でも、わざわざ今この場には立ち入り禁止が出されているらしい。
『すいません、桐原先輩』
通信からユリアの声が聞こえる。
<エンシェントエネミー>の討伐訓練に緊張しているのか、それとも、初対面の相手と一緒に戦うことに対してなのか、はたまたそのどちらも、あるいはどちらでもないのか。
とにかく、その声には不安や緊張といった類の色が浮かんでいた。
『よっし、訓練の内容はさっきも言った通りだがSTE―07dの討伐訓練だ。頭数は三十.制限時間はないが目標時間は一年のこの時期の目標である六分十五秒を切れ。以上だ』
通信から入ってくる、沙羅先輩の声。こちらからは、毛糸会に所属している人間なんだから、出来て当然だよな? と、無言のプレッシャーが放たれていた。
『それでは、カウント入ります。五……四……三……二……一……』
「「「ゼロ」」」
アンジェラ先生のカウントがゼロとなったと同時に、双方が動きだす。
正面の扉が開き、羽の生えた卵のような見慣れた外見の生物が一斉にこちらへと向かって飛んでくる。
「アーラ、後方支援お願い! ユリアちゃんは、私と一緒に前に!」
ともに行動する二人に軽い指示を出しながら私は敵の軍勢に切り込む。
「Strengthっ!」
目の前に出現した剣を右手でつかみ、一気に目の前の敵に斬りかかる。
あっけなく切り裂かれたそれは、ほのかな光となって宙へと融ける。
それにかまうことなく、近くにいる<エンシェントエネミー>から順に処理を続ける。
何匹狩っただろうか? 一匹の敵に斬りかかったときに、そのちょうどま後ろからさらにもう一体の<エンシェントエネミー>が出現する。
あわてて攻撃を中断し、回避行動をとる。
すると、横からオレンジ色の線がSTE―07dに衝突する。
一瞬にして炎に包まれた<エンシェントエネミー>は、灰も残さずに消滅した。
「大丈夫ですか? 桐原先輩?」
肉声で聞こえてくるほどの至近距離。
そこに鮮やかな紅色をした<フェアリーアーマー>があった。
「うん、大丈夫。ありがとね、ユリアちゃん」
そんな頼もしき後輩にお礼を言い、敵のほうに向きなおる。
幸い、STE―07dからの攻撃はこちらには飛んでこず、最後の一匹がアーラの射撃によって一落とされるところだった。
『そこまで』
聞きなれた訓練終了の合図が耳に入る。
『経過時間は?』
アーラの声が端末を通じて聞こえてくる。
「五分二十六秒四七。この間よりも、タイムが上がってるな」
いつの間に近寄ってきていたのだろうか?
今回も<フェアリーアーマー>を装着し、フィールド内に立っていた沙羅先輩は表示されているタイムをそのまま読み上げた。
「前回より上がってるってなんですか?」
思わず、そんな言葉が口から出ていた。
「前回って言いますけど、あのときいたティアは……、ティアは……」
沙羅先輩に詰め寄って、なにかを言おうとした。
しかし、押し寄せてくる感情に阻まれてそれを行いことはできなかった。
さっきの発言をしたときの沙羅先輩には何の悪気もなかったかもしれない。先輩たちの間下も、組んでいたチームを解散して新たに組み直すことだってある。
それと同じ感覚で、そう言った言葉を言ってしまったのかもしれない。
でも、そんなことは関係なかった。沙羅先輩がそう言ったこと。
それは私の心に重くのしかかった。
「………………悪かったな」
と、唐突に沙羅先輩がそう言った。
「確かに、今の発言はアタシが明らかに悪かった。すまない」
沙羅先輩の唐突な謝罪に、一瞬私はなにを言われたのかわからなかった。
「え? あ、いえ。いいんです」
「え? あ、おい。梨香!」
沙羅先輩はまだ何か言いたそうだったが、私はそれを無視して、訓練場をあとにした。
「桐原先輩、こんなところにいたんですね」
学園内の食堂。
その座席のうちに一つに腰をおろし、下を向いていると、唐突に椅子を引く音が聞こえ、そんな声が投げかけられた。
祖緒をあげると、そこには今日初めて出会った、後輩の顔があった。
「あ……、ユリアちゃん…………」
時間が時間だけに、私以外誰もいなかったから油断していた。
「先輩のこと、みんな探したんですよ」
椅子に腰をおろし、ユリアは真正面に私の顔を見ている。
対する私は、またしても視線を下方向へと修正した。
「…………辛いことは誰にでもありますし、逃げたいことなんてそれこそ誰にでもあります」
どれくらい時間が立っただろうか。
急にユリアがそんなことを言った。
「…………ユリア、ちゃん?」
「話はさっき沙羅先輩から聞かせていただきました。レオナード先輩のこと、<ヒトガタ>のこと、それから桐原先輩のことも」
さきほどから話しているユリアの声音は、自己紹介をしたときに比べ落ち着いていて、またトーンも低い。
「…………そう」
私には、そう言うことしかできなかった。
それほどまでに、私はユリア・リヴォーヴナ・サウニナという少女の醸し出す雰囲気に押し負けていたのだった。
「大丈夫。だって、周りにはまだたくさんの人がいます。だから、桐原先輩は…………」
はたして、ユリアはそのあとになんと続けるつもりだったのだろうか?
この後、特に何も起こらなかったならばそれはすぐにわかっただろう。しかし、それを知ることはできなかった。
なぜなら、
――――デンジャー、デンジャー――――
――――第二階層に小型エンシェントエネミーを確認――――
――――その数およそ五……十……二十……特定完了 その数三十一――――
――――合同政府は第二警戒態勢を発令――――
――――住民はシェルターへ避難の避難準備を開始してください――――
――――上級訓練兵以上の防衛軍は至急第二ゲートまで――――
――――繰り返す……――――
そんなアナウンスが辺りに鳴り響いたからだ。
「ユリアちゃんっ!」
そう声をかけて彼女を見ると、彼女は一つ頷いた。
「先輩、早く行きましょう!」
「もちろん」
私たちは駆け足で指定された第二ゲートへ向かった。
「梨香っ!」
第二ゲートに着くなり、こちらの姿を確認した沙羅先輩が駆け寄ってきた。
「どこに言ってたんだ。みんな探して…………」
「それよりも、敵はどうなんですか?」
さっき何も言わず勝手に戻ってしまったのは少々申し訳ないと思う。
だが今は、状況が状況だ。<エンシェントエネミー>の討伐の義務を課せられた私たちだからこそ、今はそんな無駄なことに時間を使っている余裕はない。
「ああ、敵は主にSTE-18aとbだ。他にも若干多種はいるが圧倒的にSTE-18が多い」
ある程度は一緒に戦っている沙羅先輩のことだ。私の考えぐらいある程度は分かるのだろう。
「……ったく。アタシたちも出撃すっから早く準備しろ」
そうは言ったものの、まだここに来ていないアリサ先輩とあー社先輩を待ったがために、結局私たちが出撃する頃には大半が討伐荒れたあとだった。




