表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

イリペス04

 支えていたつもりだった親友はいつしか自分だけの力で立っていた。

 最早、あたしはただの足かせでしかないのか?

 でも、そんなことはこの際どうだっていい。

 あたしは、彼女の親友なんだから。

 親友を助けるのに、理由なんかいらない。


 あかねと担任が教室を出ていってから、教室内はざわざわとした空気に包まれた。

 あかねのことだ。別に悪いことをして連れて行かれたわけではないだろう。しかし、どうしても気になってしまう。

 あたしは望月さんと一緒に様子をうかがいに行った。

 本当は、さっきあかねと楽しそうに話していた早乙女って人も誘ってみたんだけど、私には関係ありませんって顔をしてどっかにいっちゃった。

 まあ、なにはともあれまだ会話もろくにしたことのないクラスメイトたちを伴ってドア越しに様子を探っていたら、先生に気付かれて追い返されてしまった。

 しぶしぶと教室に戻ってあかねが戻ってくるのを望月さんと会話をしながら待っていたときにそれは起こった。


 突然として、辺りの音が消えた。

 一瞬前までは、賑やかな生徒達の声がBGMとして流れていたはずである。それにもかかわらず、一瞬ですべての音が聞こえなくなった。

「何が起こっているのでありますか?」

 いや、私以外にたった一人教室にいる望月さんの声だけは聞こえる。

 そこであたしに一つの疑問が走る。

 あれ、いつ他の生徒達は教室から出て行ったっけ?

 気になって辺りを見渡すと、灰色に染まった空の中をこちらに向かって飛んでくる人影が目に入った。

 あたしの席は、窓際二列目、後ろから三番目にある。

 そんな座席の位置だからこそ、割れたガラス片が降り注ぐのである。

「危ない!」

あたしはとっさに望月さんを庇いつつ地面に伏せる。

「大丈夫?」

「かたじけないであります」

 望月さんの安全を確認し、あたしはその侵入者をにらみ付ける。

「あんた、いったいなんなのさ! ここ学校だよ!」

 しかし、小学校高学年くらいのそいつはあたしに気付いていないのか、何か独り言をふ部やいている。

「ここが高峰か……。エルナトもスピカもここに通っているのにどうして今の今までラーピスとかいう奴を倒せなかったんだか。それになんか最近ルービスとかいうやつまで出てくるしよ。って、あれ? ラーピスはこないだスピカがやったんだっけ? ま、いっか。とりあえずそのルービスとかいう奴をぶっ殺しっちまえばいいや。……ん?」

 そこでようやくそいつはあたしに気がついたようだ。

「うわ、今の聞かれてたのかよ。めんどくせーな、たく。ま、一応始末しとくに越したことはないかな。もし万が一こいつらがそのルービスとかいうやつの素性を知っていたりして呼ばれたりしてもめーわくだしな。……っと、そういえばこの空間の中ケータイの電波届いてねーんだったな」

 けだるそうにそう言いながら、そいつは右手を前方に突き出す。

「<勤勉な農夫の(ティーガーデン)>!」

 何が起こっているのかは、あたしにはわからない。だけど、そいつの周りに何かが集まっているのだけはなんとなくわかった。

 そんな時だった。

「メタンフィエシス!」

 聞きなれた親友の、そんな声が耳に入ってきたのは……。

「熱情の赤き光、ルービス!」

 いつの間に着替えたのであろうか? テレビから出てきた魔法少女のような服装をしたあかねがあたしたちの前に立ちふさがる。そのまま、侵入者から放たれた変化光が彼女に命中し、そのまま吹き飛ばされ壁に激突する。

「あかね!」

 急いであかねのもとへ駆けつける。

「あきな……。怪我は、ない?」

 衣服のあちこちが破れ、ぼろぼろになりながらも何とか起き上り、駆け寄ったあたしに対して、あかねは無理に笑顔を作ってそういった。

「はっ、あいつがルービスじゃん。もう少し骨のある奴かと思ったけど、なんの力も持たない虫けら庇って直撃受けてやんの。ははは、なんだ。思ったより強くないじゃん。ま、俺として見ればミッションの難易度は高ければ高いほど盛り上がるけどよ、やっぱり簡単なのもいいな。だって俺つえーんだもん。そいつを再確認できるって、やっぱサイコーだね」

 侵入者はそういって腹を抱えて笑っている。

 

なんだろう、この感情。


 親友を傷つけられて、あいつのことを憎らしい。今すぐぶちのめしたい。

 そう思っているのに……。実際、今まで似たようなことに会ったときは、あたしがそいつのことをぶん殴ってやった。

 それなのに、今回はそんな気が起きない。大好きな親友のために、我を忘れて怒るなんてことができない。

 いや、そうではない。

 私は確かに起こっている。苛立ちを感じている。

 しかし、それは誰に対してだ?

 目の前にいる不思議な力を使う侵入者に対してか?

 否、それは何もできないあたし自身に対してだ。

 確かに、あかねを傷つけた侵入者は絶対に許せない。でもそれ以上に、あたしのことを庇ってくれたあかねに示しがつかない。

 あたしが弱かったから、あかねが傷ついた。だったら……、あかねが傷つかないためにも、あたしも強くなればいい。

 傷ついたあかねを守るために、あたしと同じで巻き込まれた望月さんを守るために、もし叶うのなら、あたしに力を!

「メタンフィエシス!」

 オレンジ色の眩い光があたしを包みこむ。

 不思議な感じだ……。なんだかよくわからないけど、何かが体の中からあふれてくる。そんな感じだ……。

「友情の橙の光、トーパス!」

 気がつくと辺りの光は消えていて、残されたのはあかねが来ている物と同じデザインの、オレンジの意匠がほどこされた服に身を包んだあたしだった。

「これは、いったい……?」

 いつの間にかまとっていたその服を可能な限り確認していると、突然その侵入者が大声を発した。

「はぁ? また増えんのかよ。ったく、めんどくさいことこの上ねーな。まぁ、でも。そういうの俺、嫌いじゃないぜ? それによ、こちとら今日の襲撃を楽しみにしてたんだよ。つっても、昨日の夜からだけどな。ま、それはこの際どうだっていい。たった一人つぶしたくらいじゃ、満足できねえんだよ!」

 そういってその侵入者があたしに向かって飛びかかろうとしたそのとき、

「はい、二人ともそこまで」

 唐突にだれかが割り込んで来た。

 それは、ダークグリーンの衣服に身を包む一人の少女。その牛とには、ダークブルーで同じような服装の少女もいる。

「おい、エルナト! こいつは人の得物だぞ、横取りすんじゃねえ。それによ、お前ら増えた敵は一人って言ってたじゃねえか。嘘の情報つかませんなよ。こいつ最初に出てきたときには若干だけどビビったんだぜ? 俺を驚かそうっていうサプライズなら、もう少し心臓に優しいものにしてくれよな! いや、まあ、あれはあれで好きな展開っちゃ、好きな展開なんだけどよ」

 エルナトと呼ばれは、その少女は落ち着いた物腰で侵入者に向かって言う。

「ねえ、ハマルくん? 今何時なのかきちんと理解している?」

「エルナト、そいつはねえぜ! 流石に俺もそこまでは馬鹿じゃない。いや、もっとも、俺は馬鹿ですらないんだがそれはこの際どうだっていい。今の時刻は確か午前八時四十分過ぎ。まだまだ社会全体が完全に覚醒してない時間帯だな。んで、それが何だっていうんだ。そんなこといちいちきかなくったって、んなもん時計でも見りゃ一瞬で判んだろ。なのにどうしてわざわざきくんだよ、めんどくせー」

「あら、時間が判っているならどうしてここにいるのかしら。今は学校の時間のはずよ?」

「んなこったどうだっていいだろうよ。あんな虫けらどもと同じ時間をどうして過ごさなくっちゃいけねーんだよ。俺は俺の好きなようにやる。別に文句はねーよな? 俺もお前もあの方に忠誠を誓った選ばれし者だ。それなのに、どうして選ばれなかったその他大勢と同じように下らない日常をダラダラと消費しないといけねーんだよ」

 忠誠を誓った、辺りで一瞬エルナトの顔に陰りが見えた気がした。しかし彼女は小さく頭を横に振ると、またさきほどまでと同じような顔をする。

「とにかく、私たちはまだ学生の身なのよ? それをわきまえた行動を心掛けないと私たちの正体がばてちゃうじゃない。これからは気を付けるように」

「たく、めんどくせーな。ま、愚民どもに怪しまれて正体がイーリトス側にばれるのもなんか癪に障るし、今日のところは引き返してやるよ。あそれと、エルナト。そこの女は俺の得物だから手ー出すんじゃねーぞ?。そいつは俺が殺す。お楽しみをあとあとまで引き延ばされたんだ。ま、放課後辺りにでもそいつを殺しにくっかね。あ、もちろん俺の放課後だぜ? お前らこーこーせーと違って、中学生は時間あるからな」

 そういって窓枠からハマルと呼ばれた人物は飛び去って行った。

「それで、君の名前はなんていうのかな?」

 と、いきなり先程戦闘を中断させたエルナトと名乗る人物が話しかけてきた。

「あ、あたしは……トーパスです! えっと……あなたたちは?」

 一瞬、自分が変身した時の名前が思い出せなかった。でも、仕方がないよね? だって一回しか名乗ったことないんだから。

「あ、私はエルナトって言うの。それで、あっちにいるのが妹のスピカ。もちろん、あなたと同じくほん尿ではないわ。一応、あなたたちイーリトスとは……敵対する立場にあるんだけどね?」

 そう言いつつ、彼女からはどういうわけか敵意は感じられなかった。

「<セラピア>」

 私の身体が、温かな光に包まれる。どこか、安らぎをもたらす、そんな光だった。

「ちょっとお姉ちゃん! いつもいつもなんで敵を回復させるのさ!」

「だって彼女たちだって生きているんですもの」

「いや、だからって……」

 そんな会話を行いながら、同様のことをあかねにも施して彼女はいった。

「それじゃあ、私たちはこの辺で。きっとまたいつか近いうちに戦うことになるだろうけど、それまではお互いに平凡な生活を送りましょう」


そして世界は再び色を取り戻した。

「今までのことは、なんなんでありますか?」

 どう答えていいかわからない質問とともに……。




 おまけ~デパートの戦い、その後~

 

 私は今、お姉ちゃんと一緒に帰り道を歩いている。

 私の隣で、買い物袋をぶら下げて歩いている彼女は、実は私の実の姉ではない。いや、彼女だけではない。今私が暮らしているのは、孤児院のような場所だ。

 身寄りのなかったり、いろいろな事情で親に捨てられた子供たちが一緒になって生活する、そんな場所で知り合った人物だ。

 お姉ちゃんは小学校の時に家に強盗が押し入ってきて家族がみんな殺されたそうだ。そのとき、ちょうど妹とかくれんぼしていたお姉ちゃんだけは、偶然見つからずに生き残ったそうだ。

 家に着くと、小学校低学年くらいの子たちが一斉に私たちに近寄ってくる。

 その中で一番年長のたーくんは小学二年生の男の子。交通事故で両親をうしなったらしい。

 た―くんよりも少し誕生日の遅いみーちゃんも、小学二年の女の子。父親が友人の借金の連帯保証人になったばっかりに逃げられて、やむを得ずここに入れられたそうだ。

 彼らより一つ下のまーくんの母親はすでに他界していて父親が一人で育てていたんだけど、その父親はリストラに遭い、育児に疲れて自殺してしまったらしい。

 一番年下で幼稚園年中のゆーちゃんは虐待を受けていて保護されたらしい。

 そんなそれぞれの事情を抱えてここに来た家族と比べて私の場合は……。

 私はもともとの家族を恨んでいる。彼らは、何の不自由もなかったのに私を恐れ、捨てた。

 たぶん、私がアステルの一員に選ばれたのが理由だろう。この、身体に突然浮かびあがったおとめ座の紋章。

 これがあったから、彼らは今も生きているのに……。それなのに、私は……。

 私は彼らを恨んでいる。

 願わくば、彼らに復讐の時を……。





~次回予告~

新たなる敵幹部、ハマルとの戦闘を終え、一時の平穏を手にしたかと思われた私たちであったが、まだ解決せざるを得ない課題が残っていた。

あきなと同じく、戦闘に巻き込まれた望月さんに、私たちのことをどう説明すればいいの?

そこに、またしてもハマルが現れて……って、嘘!?

次回、Chapter05.「級友」



みんなの願い、いつかきっと、あの虹の向こうへ……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ