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イリペス03

 あたしには幼馴染の親友がいる。

 彼女は小さい頃から母親と一緒にボランティアをやっていて、あたしもよく一緒になってやったものだ。

 それは、彼女の母親が死んでしまっても続き、むしろエスカレートしていったほどだった。

 アタシは、そんな彼女のストッパーとして支えていこう。

 そう、思っていたんだ。




 朝、いつもと変わらない新しい通学路を私とあきなは歩いていた。

「聞きましたよ―、奥さん。もうすでに先輩と仲良くなったそうじゃないですか!」

 妙に上機嫌なあきなが、テンション高くそういった。

「…………情報早いね」

 そう答えながらも、内心はどこまで知ってるのか不安である。もし、明菜がイーリトスのことについて知っていたら、戦いにはなるべく巻き込みたくない。

 “イーリトス”、私にもよくわからない話なのだが、昨日のあれで私はそのイーリトスという伝説の戦士の一人である“ルービス”に変身したらしい。

 イーリトスに変身するためには、“プレアーストーン”というアイテムが必要で、これがないと変身することはできない。普段は各自にアクセサリーとして装着され、特別な力を持たない者には見えないらしい。

 そもそも、私たちがイーリトスに変身するわけは悪の集団である“アステル”の野望を阻止することにあるそうなんだが、なんでもその野望、構成メンバーについてはよくわかっていないらしい。わかっているのは“あの方”を中心に十三人の幹部がいることのみ。その中で、エルナト、スピカ、ハマル、レグルス、アルカブという五人のメンバー以外の素性が判らないらしい。

 どれもこれも、学校の先輩でもあり、イーリトスとしても先輩でもあるラーピスこと洋蘭あいか先輩の教えてくれたことだった。

 だけど、あいか先輩はエルナトとスピカに倒されてそのプレアーストーンをうあわれてしまったのだ。

 そのため、私はたった一人でアステルのメンバーと戦わなくてはいけない。

 もっとも、イーリトスはまだ他にもいるはずらしいのだけど……。

「ええ、もちろんです! わが社の情報収集能力を侮らないでください!」

 そんな私の心のうちも知らず、あきなはとても楽しそうだった。

「いや、別に侮ってるわけじゃないんだけどさ……。それで、誰から聞いたの?」

「クラスメイトの望月さんからだよ! なんでも、望月さんの叔父さんがこの近くで喫茶店をやっているらしくてさ、後で遊びに来てって言われてたんだ!」

「望月さんって、あきなの後ろの席の子だよね?」

「そう、そのこ! でね、昨日帰り道にあかねと寄ろうと思ってたんだよ!」

「でも昨日あきなは忘れ物をして学校に戻って私と別行動になってしまった、と。それで?」

「仕方ないからあかねのうちまで行って確認したんだけどチャイム鳴らしても返事がなかったし、ケータイも圏外らしかったから、仕方なく一人で行ってみたんだよ!」

 そういえばあの灰色の空間にいるときは確かに時間が進んでいた。だから、あの二人もタイムセールがどうこう言って撤退したのだろう。

 それにしても、あの二人はどうしてあいか先輩のプレアーストーンだけを奪っていったのだろうか? 私のものも奪ってしまえば再度戦うという手間も省くことができるのではないのだろうか? それに、エルナトが最後に言っていた事だの意味の気になるし……。

「そしたらさ、ついさっき副会長と一緒に店に来て奥の部屋に入っていったみたいでさ。いつのまにそんな仲良くなったの?」

「えっと、望月さんの叔父さんの経営してる店ってガラクシアってよんだりする?」

「うん、その店! で、どうしてあかねはその店に言ったのかなー?」

 にやにやとした表情を浮かべてあきなが近寄ってくる。

 その目は好奇心という魔物に取りつかれたような目をしていた。

「いや、ちょっとデパートに言ったら先輩が貧血かなんかで倒れたからベンチに連れて行って休ませてたんだよ。そして、そのお礼がしたいって言われてあんの店に……。あいか先輩はあのお店の常連客みたいだし」

 適当でっちあげた内容で答える。

「まあ、いいや! それにしてもさ」

 幸い、明菜の興味はすぐ別のことに移ったようだった。

「なに?」

「昨日ね、ちょっと不思議な体験をしたんだよ!」

「どんな?」

 興味本位でそう訊いてみた。

「あのね、信じてはもらえないかもしれないけど……」

 あきなが話した内容は昨日私が体験したことと少し一致していた。

 学校に戻ろうとは知っているはずなのに、気が付いたらまた同じ場所に戻っていたこと。

 信号が止まり、辺りに人が全くいなくなっていたこと。

 そして突然元に戻ったこと。

「ね? 何を言っているかわからないでしょ?」

 あきなはそういったが、それが何なのかを私は知ってる。それが何を意味しているのか、このときの私には、まだわからなかった。


「おはようございます、御神楽殿、紅葉路殿」

 教室に入るなり、望月さんに話しかけられた。

「あ、望月さんおはよー!」

「おはよう、望月さん」

「お二人ともお早いんですね」

 現在時刻は七時五十五分。朝のショートホームルーム開始時刻にはまだ三十分以上の時間があった。

「まあ、いちおうね。そういう望月さんもだいぶ早いね」

「小生はここからそれなりに近いところにすんでいるからですよ。それに、教室に一番乗りなどしてみたかったのです。それにしても、どうやって洋蘭殿と知り合ったのでありますか?」

 その答えには先程あきなにしたのと同じ答えを返した。

 その後は、和気あいあいとおしゃべりを楽しみ、気がつくとかなりの時間を消費していて他の生徒も次第に学校に集まってきた。

「それでね」

 キーンコーンカーンコーン。

 無情にもチャイムが教室中に鳴り響く

「あ、じゃあ私はこれで」

「ではまた次の時間に」

「じゃーね!」

 二人に見送られ私は自分の席についた。


 今日はガイダンスなどを行い授業はまったくないので特になにをするわけでもなく、ただ前をぼんやり見ていると唐突に背中をつつかれた。

「なに?」

 振り向く。そこには当然、一人の少女が腰かけている。

 えっと、彼女の名前は確か……

「おはよう、紅葉路あかねさん」

「うん、おはよう。えっと、……早乙女さん」

 早乙女あおい。結局思い出せずに彼女の制服についているネームプレートに書かれた名字で呼ぶ。

「それで、私に何かよう?」

「うんうん、別にようってほどじゃないんだけど、奇遇だなって思って」

「何が奇遇だと思ったの?」

「それはね、名前に色を含む私たちの席が前後になったことかな?」

 そう言われてみると、私の名前にはあかが含まれているし、彼女の名前には青が含まれている。

「そういえばそうだね」

 そんなたわいもない会話を多少いて入ると担任の武井先生が教室へと姿を現した。

「諸君、昨夜は流石に駅前に入っていないよな?」

 そんな言葉に始まったショートホームルームは特にこれといった問題もなく消化されていった。

 しかし、問題はそのあとだった。

「あ、紅葉路。ちょっとこっちに来てくれないか?」

 あきなたちのところへ行こうとしていた私を、手圭が呼ぶ。

 周りの、こいつ進学そうそう何をやらかしたんだといった目げ突き刺さりながらも、私は先生のもとへ歩いていく。

「紅葉路、ちょっと話がある方ついてこい」

 そういって先生は教室を出て、二つ先にある選択教室へと入っていった。

 心なしか、私に突き刺さる視線が強まった気がしてならない。

「ん、まあそこに座ってくれ」

 教室に入ると武井は適当に椅子に腰かけた。私は指定された先生の後ろの席に着く。

「なに、話といっても大したことじゃない。ただ、なるべくならほかに生徒には聞かせられない話だからな」

 そういって彼は立ち上り教室のドアを開ける。

「お前たち、そんなところで立ち聞きしてないで教室にいろ」

 廊下にいた生徒たちを教室へと追い返す。ちらっと見えた生徒の中にはあきなの姿もあった。

「さて紅葉路。お前、イーリトスをやっているそうじゃないか」

 唐突にそう言われて、私はなにを言っていいのかわからなくなった。とりあえず、正体がばれたことに対して身構えた。

「いや、そうおもむろに警戒しなくていいから」

 そうは言われても警戒を解けるはずはない。右手の人差指にはめられている指輪状のプレアーストーンに力を込める。

 これはあいか先輩から聞いた話なのだが、変身をするにはそうするのが一番らしい。

「銀河から聞いたんだ。あいつとは高校時代からの友人だからね」

 そう言われて妙に安心した自分がいる。アステル側に正体がばれたわけではないとわかり、警戒を解く。

「それで、なんですか?」

「うん、もし授業中にアステルが現れたときは僕が君に適当な用事を言い渡したりするから君は教室を出たあとは戦闘に言ってくれ」

「あの、先生はどうしてアステルの存在を知っているんですか? それも銀河さんから?」

 そう訊くと、先生は苦笑して言った。

「もう二十年くらい前のことになるんだけど、その頃は俺と、銀河と、あと早乙女ってやつ。後は藤堂ってやつの四人でポラリス率いる当時のアステルと戦ったんだよ」

「当時の?」

「ああ、そのときポラリスを封印したはずだったんだけどな。完全じゃなかったらしい。こうも簡単に復活されるとは……」

 そういって先生は頭をかいた

「まあ、後は銀河のやつにでも聞いてくれ。ほら、教室の戻るぞ」

 そういって先生は教室の外に出ようとした。しかし、その脚はドアを開いたところで止まる。

「おい、紅葉路。早速だが敵のお出ましのようだ」

 世界が、灰色に染められていた。

 パリーン。

 なにかが割れるような音がどこかから聞こえる。

 私はとっさに、教室へと駈け出していた。

 あいか先輩はこう言っていた。

『イーリトスになる資格を持つ者は空間が閉鎖されていてもその中に迷い込むことがある』

 もしかしたら。

 急いで教室のドアを開けると、はたしてそこには宙に浮いた一人の少年が、抱き合って震えている二人の少女になにかを放とうとしているところだった、

 (危ない!)

「メタンフィエシス!」

 赤い光に包まれ、私は変身を遂げる。

「熱情の赤い光、ルービス!」

 そういってあきなたちの前に立ちふ座がる事が、私にできる精一杯のことだった……。





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