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イリペス02

亡き母の意思を継ごうと、ボランティア活動を積極的にやってきた。

 でも、はたして私は心から他人のためにと行動していたのだろうか?

 答えは、自分でも分からない。

 でもこのときばかりは、心の底から、守りたい。

 そう思えたんだ……。




「熱情の赤き光、ルービス!」

 自分でも、訳がわからずにそう口走っていた。

 状況が全く理解できない、

 一般的には、魔法少女と呼ばれる類のものだろうか? よくあんなものを着用して外出できるなと感心されるような、ひらひらとした衣装に身を包んだ私がそこにいた。

 下を見ただけでは服装の全容はわからないが、まずそういった服装とみて間違いない。

 ただ、こんな服に身を包んだからなのだろうか?

 自分がなにか不思議な力に包まれている、そんな気がしてならない。

 変身した。 非現実的なことだとは思うが、それ以外は考えられなかった。それに、非現実的なことは、目の前にいる二人の少女や、彼女たちと戦っていたあの少女もまた現実のものとは思えないだろう。

「……新手!? お姉ちゃん!」

 青い方の少女が、もう一方に向かってそう叫ぶ。

「そっか、貴女もイーリトス側の一員だったのね……」

 緑の少女はどこか悲しそうにそういった。

「だったら、仕方ないわね。ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね」

 刹那、地面を強く蹴り、彼女は私に向かって接近してきた。陸上選手、いや、下手したらそこらの自動車よりも早いかもしれない。そんなスペードを出されては、普通なら対処はできないだろう。

 でも、不思議と私はそれを避けることができた。

(体が、軽い!? もしかしたら、あの二人に勝てるかも)

 そう思って私は、間一髪のところで避けた彼女の背中を蹴る。運良くその中央をとらえることに成功し、彼女の身体はフェンスを突き破り地面へと落下していった。

「やった!」

 そう喜んだのもつかの間、もう一人の少女の拳が私に命中した。

 デパートの内側へとつながる自動ドアのガラスを粉砕し、中へと吹き飛ばされる。そのまま十数メートルほどして、フ機向けの部分から一階へとまっさかさまに落下していった。

 全身が強く打ちつけられ、激しい痛みが身体を駆け巡る。

 あまりの痛さに思わず、私は声をあげてしまった。

 その声で居場所が判ったのだろう。先程フェンスから落ちた少女が私のもとにやってくる。

「お姉ちゃん、これ!」

とどめをさすためにやってきたのか、青い方の少女が、緑色の少女めがけて、あの少女を投げる。

緑色の少女は重力に従って落ちてくるそれをしっかりと受け止めると、

「まったく、この娘は今変身していないのよ? そんな風に扱ったら死んじゃうじゃない」

 その少女をそっと地面に下ろして、そう妹をたしなめた。

「さてと、今日のところはこれで帰りましょうか。早く行かないと、卵が売り切れそうだし」

 吹き抜けの部分から飛び降り、彼女に歩みよってきたそのスピカと呼ばれた少女に向けて、彼女はそういった。

「お、お姉ちゃん!? 今ならこの二人にとどめをさせるのに卵優先なの?」

「何を言ってるの。今日は特売日で一パック六十八円なんですもの。それに、た―くんは今晩オムライスが食べたいって言っていたじゃない。それに、みーちゃんだってオムライス好きだし後の二人もそうでしょ? それに今、卵切らしてるのよ」

「いや、でも……」

「でもじゃないの。さ、お一人様一パック限りなんだから早く行くわよ」

「いや、だから私たちの使命は……」

「そんなことよりも、今日の食事当番が先決よ。先生にだってあまり迷惑はかけられないんだから」

「それとこれとは……」

「ちがわないわ。人間誰だって食事をとらないと生きていけないものよ?」

「それはそうだけど……」

「それに、」

 彼女はそこで一呼吸置いて言った。

「どこかの誰かさんの大好物な茹で卵、しばらく食べられなくなるわよ」

「わかった、早くスーパーへ行こう」

「それじゃあ、決まりね」

 そういうなり、緑色の少女は私のほうへと歩いてきた。

「たてる?」

 彼女は沿って右手を差し出してきた。それに応えようとしたのだが

「まあいいわ。<セラピア>」

 ふいに身体の痛みが引いて言った。目の前の少女が、私のことを回復させたのだろうということはすぐにわかった。でも、私にはその理由が判らなかった。

そして、その理由といい、私にとどめを刺さないことといい、私が彼女に抱いた第一印象が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちて行くのが感じられた。

 私は、そっと痛みの消えた身体を起こした。

「まだどこか痛いところはある?」

 私はそれに対して首を横に振った。

「そう、それは良かった。それじゃあ、改めまして。私はエルナトと申します」

 ぺこりと、エルナトと名乗る少女は腰を曲げた。

「一応言っておくけど、本名じゃないわ。そしてあっちにいるのが私の妹のスピカよ。これから長い付き合いになるかもしれないから、私たちの名前は忘れないでね? …………それに、貴女には期待しているんですから」

 最後の言葉だけは、今までの発言よりの大幅にボリュームを落として呟くようにいった。おそらく、スピカには聞こえていないだろう。

 どういう意味?

 そう訊こうと思ったが、それっきり彼女は何も言わずに倒れている少女へと歩いていった。

 今なら、あの背中に攻撃することもできるだろう。でも、私にはそうすることはできなかった。それほどに彼女が発した先程の言葉が頭の中に反芻していたのだった。

 期待している? 一体何を?

「それじゃあ、私たちはこれで失礼するわね」

「待って、お姉ちゃん」

 エルナトが優雅に一礼して立ち去ろうとしたとき、スピカが彼女を止めた。

「ラーピスのプレアーストーンを奪っておいた方がいいんじゃない? 少しでも戦力を落とせるように」

 ゆうが早いか彼女はラーピスと呼ばれは倒れている少女に地下ずいてなにかをやった。

「これでよしっと。じゃ、いこっか、お姉ちゃん」

「それじゃあまた次の機会に会いましょうね、あかねさん?」

 なんで私の名前を?

 立ち上って、二人のもとに行こうとした、そのとき。

「ままー、きょうのごはんなーにー?」

「あ、はい。今からそちらへ伺います」

「私あれ欲しいなぁ」

突如として、辺りに人々が現れ喧騒が訪れた。それは、いつもの見慣れたデパートの風景だった。

そして、

「おい、人が倒れたぞ!」

「とりあえず、どこか横になれそうな場所へ」

「救急車呼んだ方がいいのかしら?」

あの少女が近くを歩いていたであろう男性に支えられてベンチに運ばれていった。

「先輩!」

 そういって私は、彼女を支える男性に近づく。

私が、この少女と一緒にこのデパートへ来た事。そうしたら先輩とはぐれてしまったこと。そのために、彼女を探していたこと。それ他を適当にでっちあげて彼女を引き取ることにした。

幸い、私が彼女と同じ制服を着ていたことで男性はベンチまで彼女を連れていくと、何の疑いもなく去っていった。

 不思議なことだが、辺りにもとの風景が戻ってきたのと同時に、私の服装は元の制服へと戻っていた。

 本当に、どうなっているのだろうか?


彼女が目を覚ましたのは、それから十分後くらいたってからのことだった。

「ここは? それに私は一体……?」

「先輩、あまり無理しないでください」

 そうは行ってみたものの、彼女はゆっくりと起き上り私のほうに向きなおった。

「すまない、君は誰だい? みたところ私と同じ高峰の制服を着ているようだが?」

 その疑問はもっともだったので、私は彼女に軽く自己紹介をした。

「はじめまして。今日高峰学園に入学した1-Aの紅葉路あかねです」

「そうか。……っと、失礼。まだ私は名乗っていなかったな。2-C所属の洋蘭ようらんあいかだ。よろしくな」

「あいか先輩ですね、わかりました」

「うむ。それではあかね君。すまないが私はこれに失礼させていただくとしよう。本日は助かった。学校生活で何か困ったことがあったら、是非私にいってくれたまえ。こんな私でも、一応は生徒会のメンバーだからな」

そういって彼女はベンチから立ち上がった。

「あ、ちょっと待ってください」

「なんだね?」

 動きを止め、あいか先輩が私のことを見る。

「あの……、先輩が気を失っている間にスピカって人が先輩のなんとかすとーんっていうものをもっていったんですけど……。それに、いーりとすとかいろいろとききたいことがあるんですけど」

 その一言で大方の状況は理解したのであろう。彼女は着いてこいとだけ行ってエントランスに向けて歩いていった。


 十分ほど歩き、私たちは大通りから一本外れた小道にある喫茶店に来ていた。

 道中、空は再び澄み渡っていて、信号の光も灯っていた。まるで、さっきのあの世界がウソだったかのように、日常の風景に戻っていた。

Cafeteria:Galaxia. 

 そんな看板が掛けられた喫茶店だ。

「カフェテリア:ガラクシア?」

「ああ、君はこの店に来るのは初めてかい?」

 庫君と、私は頷く。

「ガラクシアはスペイン語で銀河系という意味だ。さあ、入ろうか」

 哀歌先輩が、度はを手前に引く。

 店内は落ち着いた感じのする、普通の喫茶店といった感じだった。

 個人経営の店なのだろうか? 店内は普通のファーストフード店の半分くらいのスペースしかなかった。

「いらっしゃいませ」

 店内にいた二人のウェイトレスが、笑顔で接客してくる。

「やあ、いらっしゃいあいかちゃん。おや、そっちの娘は初めて見る顔だね」

 この店のオーナーだろうか?三十代か四十代くらいの男性がカウンターから声をかけてきた。

 それにしても、顔を覚えられているあいか先輩はこの店の常連なのだろうか?

 ふと、そんな疑問がわいてきたが、今はそのことは置いておくとしよう。それよりも優先してあいか先輩に聞きたいことがたくさんあるのだ。

「そのことについてなのだが、マスター。今ちょっと時間あるかい?」

 その一言でなにかを悟ったのだろう。

「みそらちゃん、おうなちゃん、ちょっと店番たのめるかな?」

「銀河殿安心するのであります。このような小さな店になど、常連客以外に訪れる者など皆無に等しいではありませんか」

「うん、僕として見れば君のその口調のほうが心配だけどね。それに沙羅っとひどいこというのやめてくれるかな?」

「何を言うのでありますか、銀河殿。小生はこれで困ったことなど一度もありませぬ。それに小生は嘘などつきたくないのであります」

「……そうかい、もういいよ。それじゃあ、後店番よろしくね」

「了解であります」

 右手でびしっと敬礼する彼女に見送られて私たちは喫茶店の奥へと入っていった。


 


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