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アイ采10

 私が生徒会長になっても、特に日常に変化はなかった。

 いつも通りに訓練に励み、いつも通りに抗議を受け、そしていつもどおりに出撃する。

 そんな何も変わらない日常。

 ただその風景の中から、沙羅先輩のみがいなくなってしまっただけだった。


 あの後、突如として全校集会のようなものが開かれた。

 内容は主に、ここ最近頻発するそう手以外の<エンシェント・エネミー>や<ヒトガタ>との戦闘、それに伴った前生徒会長である沙羅先輩の死、そして、その任を引き継いだ私についての三つだった。

 一つ目の内容は今までよりも集団での戦闘を心がけ、また増援を要請するなど、その場の戦力だけで対応しないようにとの話だけでほぼ終わった。

 三つ目の内容も、あの<ヒトガタ>を単騎で撃破したという事実もあり、特に目立った反対もなく、そのまま私が生徒会長として決定した。


 でも、問題は二つ目のことだった。

 いくら死神だとか言われていた沙羅先輩でも、やはり心のどこかでは頼りにしていたのだろう。

 そんな人がこの世を去った。

 それがもたらした不安は相当なものだった。

 多くのものが戦闘に関して今まで以上の恐怖心を抱くようことになり、二学年の生徒が一人、学園から逃走を図ったほどだ。

 それだけ、沙羅先輩という存在は大きなものになっていたのだろう。

 だが、そんな沙羅先輩の死にも一つ疑問がある。

 それは、一体彼女はなぜ死んだのか? という根本的なものであった。

 彼女の機体、肉体には目立った外傷はなかった。むしろ、なさすぎて怖いくらいだった程である。

 普通に戦死した場合ならば、かなりの損傷がみうけられるはずである。

 そう、あのティアの死の時と同じかそれ以上になるケースが多い。

 しかし、先程の言ったとおりだが彼女に遺体は不自然なほどきれいだった。

 ではなぜ、肉体に過大すぎるダメージを受けたわけではない彼女が戦死したのか?

 そう言った報告は一切なかった。彼女がただ単に戦死したという事実のみの発表となった。


「梨香さん、なんだか私防衛軍の人たちが何か重要なことを私たちに隠してる気がするのだけれど……」

 式が終わった後、私たち生徒会メンバー五人はラウンジに来ていた。

「うん、私もなんかそんな気がする」

 アリサ先輩の意見にアーラが同意する。

「なにかがおかしい。付近にいた<エンシェント・エネミー>がすべて殲滅されていたことを踏まえると、戦闘終了後から私たちが到着するまでの間に何かが起こったと推測できる。だけど……」

 そう、そこまでは事実を知ってさえいれば誰だってたどり着くのは容易なことだ。

 だが、実際はその先にどんな真実が待ち受けているのか俺たちにはわからない。

「はい、私も沙羅先輩の大まかな時間帯はそこであってると思います。でも……」

 ユリアの言葉。

 彼女は、先程からずっと俯いたままだ。一向に顔をあげようとしない。

「うん。やっぱり、防衛軍は真実を知っているはず。でも、それが何なのかは私たちにはわからないし、そう簡単に教えてくれるとも思わない」

 私の言葉に、その場にいた全員が頷く。

「そうだね。わざわざ隠すくらいなんだから、そんな情報、簡単に教えてくれないか、あるいは偽の情報で上手くはぐらかすにきまってる」

 サーシャ先輩はそうつぶやくと、テーブルに突っ伏した。

 そして、さらに言葉をつなげる。

「もっと…………。もっと私に力があったら、沙羅先輩は死なずに済んだかもしれないのに…………」

 ぎゅ。

 そんなサーシャ先輩のことを、隣に座るアリサ先輩が抱きしめた。

「サーシャのせいなんかじゃない。そして、私たちのうちの誰かのせいでもない。沙羅先輩にたまたま運がなかっただけ。そういうことにしてましょう」

 そうしてしばし二人は抱き合っていた。

「……でも、あの時私たちのうちの誰かがあの場所に残っていたらまた状況は変わっていたのかもしれない…………」

 そんな中で、アーラが言葉を放つ。

「そうですよね……。私が残ろうとしていた梨香先輩にあんなふうに進言しなかったら、沙羅先輩は…………」

 それにユリアが賛同する。

 確かに、あのときの私には残るという選択肢があり、事実それを選ぼうとしていた。

 そして、そんな中で結局私はユリアの言葉に突き動かされた。でも、それは違う。

「…………それは違うよ、ユリアちゃん。私はね、沙羅先輩の意思を尊重しただけ。だから、ユリアちゃんは何にも悪くないんだよ」

「でも…………」

 それでも食い下がらないユリアの頭を私はそっとなでる。

 その行為が、ユリアにとっては意外なことだったのか、驚いた顔で彼女は私を見る。

「それにね、もう終わったことなんだよ。今更悔んだって、結果はもうどうやっても変わらないんだよ。だったらさ、前を向いて、私たちは今何をすべきか。それを考えてこれからをいきていこう、ね?」

「わかりました……」

 ユリアはそう言って強く笑って見せた。

 だけど、そのほうを輝くなにかが流れていくのが見てとれた。

 やっぱり、かなしくないわけはない。それも、編入したばかりでまだ右も左もわからない状態で先輩を失うのはやはり辛いものだ。

 私の場合は入ってから一年がたったころだったが、それでも、頼りにしていた先輩を失うのは辛いものであった。




 二年前。レベッカさんの葬式の翌日の出来事。

 その日は特別に沙羅先輩が自宅に帰ってきていた。

 私の家と沙羅先輩の家は、お互いのお母さんの趣味で隣同士だ。

 だからその日。斎場から帰ってくるときも私と、私のお母さん、そして沙羅先輩の三人だった。

「なあ梨香。もういい加減泣くなって。確かにレベッカ先輩が死んじゃったのはさ、つらい出来事だよ。だけどよ、アタシたちはそれを乗り越えていかないといけないんだ。それに、さ。アタシなんとなく思うんだ。きっとレベッカ先輩も立ち止まってなんかいないでのりこえてみろって言ってるよな、そんな気がするんだ」

 どこか無理をしたような、そんな笑顔で沙羅先輩は私に言った。

「でもさ、さらねぇ。さらねぇは悲しくないの?」

「…………。悲しいに決まってるさ。レベッカ先輩はアタシの目標だったんだ。認めてもらいたくて、頑張って点だ。それなのに……、それなのに……」

 なんだかんだ強がって見ても、やはりそれは十六歳になりたての少女にはとても辛いことだ。

 やはり沙羅先輩も辛くないわけがなく、私たちは悲しむのは今日だけ。明日以降はそれを乗り越えていこうと、そう決意して帰りの電車の中で抱き合い、泣いていた。


 目の前のユリアを見る。

 やはり状況は若干違うだろうが、あのときの私と同じ心境だろう。

「ねえユリアちゃん。確かに沙羅先輩が死んじゃったのはさ、つらい出来事だよ。だけどさ、私たちはそれを乗り越えていかないといけないんだよ。それに、さ。むかし似たようなことがあったときにある人が言っていたんだよね。きっとその死んだ人も立ち止まってなんかいないでのりこえてみろって言ってるよな、そんな気がするんだってさ」

 だから、当時沙羅先輩に言われたことを私自身の言葉に直して、ユリアに言ってみる。

 ふっと、ユリアは笑った。

「それって、そのレベッカ先輩って人が亡くなった時に梨香先輩が沙羅先輩からいわれたことばですよね?」

 そのユリアの言葉で、サーシャ先輩がピクリと反申した。

 それで、ユリアも状況を察したのだろう。

「サーシャ先輩、あの、なんかごめんなさい」

 そう言うユリアに、サーシャ先輩は笑顔で言葉を返す。

「うんうん、大丈夫。もう自分の中けじめはつけてるから」

 その後は、何処となくぎくしゃくとした空気になり、早めに解散された。



 翌日。

 その日の授業はすべて中止となり、校内一斉の訓練が執り行われた。

『本当に一人で大丈夫なの?』

 端末越しに、憩えるアーラの声。

「大丈夫。…………だと思いたい」

 今回私が行う訓練は、MTE―06aとLTE―04aの討伐。基準目標タイムは八分半。三学年が主におこなう訓練のうちの一つである。

 そう、沙羅先輩が一瞬で終わらせたあの訓練だ。

『それでは、カウント入ります。五……四……三……二……一……』

 ゼロ。

 端末からそう聞こえた瞬間、私は飛びだした。

「一気に決めさせてもらうよ!」

 肉薄し、MTE―06aのうち一体に先制攻撃を仕掛ける。

「Strength」

 召喚した剣で敵のうちの一体を切り裂く。

 あっけなくそれは切断彼、光の粒子として消えてゆく。

 だが、そちらには目もくれずに私は次の行動にうつる。

「Temperance」

 近くにいたお手頃な一体を拘束する。

「The Chariot」

 そして、近くの敵のところへと射出する。

「The Hermit」

 そして、衝突した場所には簡易ブラックホールを作成。

 その一連の流れで簡単にMTE―06aを三体倒すことができた。

 しかし、こんなのもはまだ戦いの序幕にすぎない。まだ的戦力は、LTE―04aが一体とMTE―06aが四体残っている。

 流石に、的にも学習能力というものが備わっている。

 したがって先程までの私の攻撃は通用しない可能性も多々ある。

 だったらここは、

「The Tower」

 きれいに三体巻き込めそうな位置に敵が固まっているところに爆発を起こす。

 予想どうりにその場所に存在していた敵をまとめて焼きつくすことに成功した。

「さてと……MTE―06aから先に片付けますか」

 そう思って正面から近づいてきたMTE―06aに接近しようとした。そのとき、

「っ!」

 そちらに気を取られ過ぎたせいで、背後から迫ってきたLTE―04aへの対応が若干遅れた。

 なんとかぎりぎりでその攻撃を回避したが、当然急に進路を変え、軌道を逸らしたのだから無理が生じることになる。

 そのままバランスを崩し、地面と衝突する。

 そして、そんな隙を見逃すほどLTE―04aは甘くはない。

「The Hanged Man」

 だから私もあくまで冷静に子に事態に対処した。

 とげのある尻尾が私に向けて迫る。

 しかし、それは私の目の前で突如として消滅した。

 いや、途中からぽっきりと折れたと言った方が正しい。

 異変をすぐさま感知したのか、その翼を使用して後方へと飛翔し、サソリはいったん私からの距離をとった。

 そして、私もまたそのすきを見逃さない。

 トライアングルブースターを用いてすぐさま加速する。

 もちろん向かう先にいるのは、MTE―06a。

「Strength」

 たったそれ化けの行為で、最後に残っていたMTE―06aの撃破にも成功した。

 そして、最後に残ったLTE―04aを見る。

 そいつは、先程私が展開したThe Hanged Manによって失った尻尾を補うように、上空からの急降下を狙っているようだった。

 The Hanged ManはThe Emperorと同じく防御用のスキルだ。

 しかしThe Emperorが全体に展開し、攻撃を無力化するシールドなのに対して、こちらは前面にのみ展開される代わりに、受けた衝撃をそのまま跳ね返すという性質を持っている。

 だからこういった攻撃に対して発動するのが最適な活用法というわけだ。

 もっともその性質上、The Emperorと比べて防御性能はやや劣っている訳だが。

「Strength」

というわけで、またしてもこれを発動して、反撃を行う。

 LTE―04aは自身の攻撃の威力のせいで、盛大に吹き飛ばされた。

 しかし、腐っての翼をもつ<エンシェント・エネミー>だ。空中で羽ばたきその姿勢を立て直そうとしている。

 だから私も、相手にそんなことはさせない。

「いっけー!」

 再びトライアングルブースターを起動。

「Justice!」

 自身の前に呼び出した剣を掴み、敵のもとへと地下ずく。

 LTE―04aもなんとかそれに峰せんしようとしているが、攻撃に移ろうにも、いまだ態勢は立てなおせていない。

 そのままあっけなく切り裂かれ、そこで訓練は終了した。


「お疲れ様」

 そのままシャワーを浴び、着替えてから観戦席のほうへ移動すると私のことを待っていたのか、観戦席の入り口のところで声をかけてきた。

「サーシャ先輩は一緒じゃないんですか?」

 とりあえずは、アリサ先輩が一人で行動していることに疑問を感じたのでそこを聞いてみる。

 だがアリサ先輩はその質問に答えずに、ある一点を指し示すのみだった。

 そして、そちらに視線を移動させる。

 それですべてを悟った。

 サーシャ先輩は、座席のうちのひとつで寝ていた。

「ちょっと梨香さんとお話ししようと思ったから、サーシャを起こさないようにここまできました」

 ここまで、といってもたった十五メートル程度しか離れていない。

「……三分四十三秒六二。こんなタイム三学年でもなかなか出すことはできないわよ。今までこのタイムを切ったことがあるのは…………」

「レベッカ先輩と沙羅先輩の二人だけだったと思います。もっとも、その二人はともに三分を切っているはずですよね?」

 アリサ先輩の言葉にかぶせるようにして私はそう言った。

「ええ。でも、それでもすごいタイムであることには変わらないわ。だって二人のその記録は三年次での記録なわけですから」

 アリサ先輩のその言葉。だが、それでは意味がない。

「アリサ先輩、いいですか。実戦には学年なんて関係ないんです。どれほど迅速に、どれだけ正確に敵を倒すか。それがけが重要なんです」

 いつの間にかアリサ先輩は地面を見ていた。

「そうだよね。私たちも負けてなんかいられない」

 だが、突如ガバっと顔をあげそう意気込みをあらわにした。

 そう言えばこの訓練、前回はアリサ先輩たちもおこなっていたんだっけ。

 正確なタイムは訊かない方がいいかな。

 そう思って私は観戦用の席に腰を下ろした。


「六分二十九秒七四か……。まあ、いいんじゃないかな?」

 しばらくして、観戦席にやってきたアーラとユリアに私はそう声をかけた。

「そうは言っても、やっぱり梨香先輩のあんな姿を見せられたら、こんなんじゃ駄目だって思わされますよ」

 ユリアがそう言った。

 ちょうど今はアリサ先輩たちが訓練を行っている順番だ。

 今の状況はかなり良好のようでMTE―06aはもうすでに全滅している。後はLTE―04aを撃破するだけだ。

 そんなとき、それは起こった。

 ――――デンジャー、デンジャー――――

  ――――第二階層に中型エンシェントエネミーを確認――――

   ――――その数およそ五……六……七……特定完了 その数九――――

――――合同政府は第一警戒態勢レッドゾーンを発令――――

     ――――住民はシェルターへ避難の避難準備を開始してください――――

      ――――上級訓練兵以上の防衛軍は至急第二ゲートまで――――

       ――――繰り返す……――――

 相変わらずの<エンシェント・エネミー>の襲来である。

「行こう」

 私のその言葉に、二人が大きくうなずいた。




「The High Priestess」

 索敵スキルを発動させるが、一向にヒットする様子はなかった。

「どこにいるかわからない……ってことは、少なくともこの周辺の半径五キロメートルの範囲以内にはいないということか」

 とりあえず、この周辺にいないということだけわかった。

 それは事実上、捜索範囲が広がったというわけだ。

 何せ、このアルカディアは<中央セントラル・階層移動用車両(エレベーター)>を中心に半径二十キロメートルにわたり広がっているのだ。

 そんな中で、たかが半径五キロメートル。面積にして七十八点五平方キロメートルの索敵範囲では、当然外れた方が索敵に手間がかかるようになる。

「さてと、どうします?」

 現在この場にいるのは生徒会メンバー五人。

 私たちがコネクターに着替えているうちに、二学年組の訓練の終了したようで、途中で合流しての出撃となった。

「うん、だったらいつもどうりに……」

「待ってください、アリサ先輩」

 と、いつもどうりにサーシャ先輩と二人で行動しようとしたアリサ先輩のことをあわてて止める。

「? 梨香さん、どうかしましたか?」

「アリサ先輩、沙羅先輩の件があったばかりでそういった行動は危険ですって」

 そう言って止めてはみたものの、どうすればいいか私には思いつかなかった。

「The High Priestess」

 意味はないかもしれないが、再度発動してみる。

 すると、今度はかろうじて、有効範囲内に反応があった。

「北東北五キロ先に反応が出現しました」


 スキルで位置を特定し、移動を繰り返すこと四回。

 ようやく敵を捕捉することができた。

「MTE-11ですか…………」

 ユリアがいやそうな声を出した。

 MTE-11。色彩はブラックメタリック。形状はあの衝撃を加えると丸くなるあの生命体に似ている。

 一応言っておくが、甲殻類ではなく動物のほうだ。

 アルマジロのような外見をしたやつらが固まって移動していた。

「いくよ」

 サーシャ先輩のその言葉が戦いの火ぶたとなった。

 トライアングルブースターを起動し、加速する。

「はぁっ!」

 拳に全神経を集中させ、攻撃を放つ。

 しかし、相手はかたい装甲をもつ<エンシェント・エネミー>。ましてや防御特化型。

 大したダメージも与えられずに、閉じこもられてしまった。

 だが、私の狙いはそれだ。

 こいつは、まるまって防御姿勢をとるときは決まって動かなくなる。

 それすなわち、

「The Chariot」

 そいつをまた別の敵へと謝すつすることが簡単におこなえるということである。

 もちろん、スキルを使わないために、こちらへとかかる負担は若干勝くなるという利点付きで。

「The Hermit」

 もちろん、最後はいつもの技で占めるのだが……。

 目の前の敵を撃破し、余裕が生まれたので、他の戦闘を見てみると、各々が戦闘を終了させたようであった。

 敵が防御特化型ゆえにこちら側に目立った負傷はない。

 捜索がいつもよりも手間のかかったこと以外概ねいつも通りの戦闘となった。






 午後十時半を少し過ぎたあたり。

 夕食を終えて自室に帰りくつろいでいたところ、唐突にドアがノックされた。

 ベッドから起き上がり、ドアを開ける。

「夜分失礼します、梨香先輩」

 するとそこにいたのはユリアだった。

 とりあえず、部屋の中へあがってもらい、適当にお茶でも入れる。

「で、私に何の用かな、ユリアちゃん?」

「あの……、昨日は時間がなかったんでわたせなかったんですけど、沙羅先輩から梨香先輩にこれを、って……」

 そう言ってユリアは、持ってきた通信端末を私に見せてきた。

「なに、これ?」

 画面にはいつの日か沙羅先輩とレベッカ先輩から送られてきたファイルを見たときのようにロック解除に私の許可が必要だという旨の文章と、その下にイエスと、ノーの二つのボタンが記されていた。

 一瞬の迷いもなく、イエスを選択する。

 そして映像が映し出される。


 撮影場所は、沙羅先輩の自室のようだ。

 自身のベッドに腰掛ける沙羅先輩が映っている。

「よう、梨香か。梨香がこの映像を見てるってことは、もうアタシはこの世界のどこを探してもいないんだろうよ」

 沙羅先輩は頭を掻きながら言葉をつづける。

「まあ、困難がアタシに似合わねえってのは重々承知してる。ただな、この間のレベッカ先輩の映像ファイルを見てたらさ、アタシも後輩になんかも越しておこうって、双思っちまったんだよな」

 コホンと、沙羅先輩が一つ咳払いをする。

「さてとまあ、アタシの死因なんてものは今のアタシには何見当もつかねえ。でもな、なんとなくわかるんだよ。普通に戦死ってのはまずないと思う。アタシがそんなへまするとは自分じゃ思ってねえからな。でもよ」

 そこでいったん、言葉を止める

 なにか思いつめたような、そんな顔をしながら、一瞬沙羅先輩は言葉をためた。

「誰もが、あんなにあっけなく死ぬとも思われていなかったレベッカ先輩が、原因不明で死んだんだ。アタシは、過労死なんて信じねえ。絶対分が何かを隠している。そう思って自分なりに少し調べてみたんだ。そしたらな、ある事が判ったんだ。それは…………」

 とそのとき、室内に再びドアをノックする音が鳴り響く。

 仕方がないので、いったん映像を停止して、ノブを捻る。

 そしてそこにいたのは、肩で息をしているアリサ先輩の姿だった。

「ど、どうしたんですか、先輩。とりあえず中に入ってください」

 アリサ先輩をベッドに座らせ、急いで水を持ってくる。

 アリサ先輩はそれを一気にあおると、一度深いため息をついた。

「あのね、私さっきまで先生に呼ばれて手部屋にいなかったんだ。それでね、戻ったらこんな書置きが机の上に置かれてて、サーシャがいなくなってたんだ…………」

 そこに書かれていたこと。それは、予想していなかったことだった。

『これから、ちょっと防衛軍と戦ってきます。探さないでください』

 たった一言だけ、そう書かれていた。

「もしこれが事実ならば……、やっぱり止めに行かないと」

 その言葉に、全員が頷いた。


 そして、室内からは誰もいなくなった。

 再生途中の沙羅先輩からのだけを残して…………。


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