プロローグ
1996年3月16日21時43分。
3506gの大きさで、私、樹咲 杏璃は生まれた。
とても大人しい子だと看護婦さんに言われたと、母は言う。
だが、このあとに問題は起こった。
そのあとすぐに母は意識を失い、私と母は別の部屋に運ばれていった。
それから母はしばらく目を覚ますことなく植物状態のまま入院し、私は父の手によって育てられた。
母が目を覚ましたのは、私が1歳になってから2ヶ月が経った頃だった。
目を覚ましてからすぐ退院したものの、その後も入退院を繰り返していた。
そして私が中二の時、何の前触れもなく、母は息を引き取った。
あれから4年が経った今、私は定時制の高校に通っている。
定時制と言っても、普通の高校と同じように朝から通い、昼には授業が終わる、1日4時間しか通う必要がない、便利な定時制だ。
「杏璃ー!
お待たせー!」
こっちに向かって走ってくる一人の男子高校生。
彼の名は、弥浪 和磨。
一応私の彼氏だ。
「待った?」
『いや、別に。』
クラスが違うため、いつも昇降口で待ち合わせしている。
「行こっか。」
『うん。』
そう言って、歩き始めた時に
「じゃあな、樹咲。」
後ろから聞こえた声。
同じクラスで隣の席の男子、
川神 慶人。
「ばいばい。」
手を振りながら言った。
「...今日もうち来いよ。」
手をつかみながら言う和磨。
『...うん。』
これが私の日常生活。
そう思っていた。