女探偵 見津崎 香苗
『犯人はこの中にいる!!』
ドラマなんぞではよく聞くチープなセリフである・・・
『そうっ!!犯人は貴方よッ!!・・・・』
はい。お見事!事件解決!!
------------------------
【リアル??金田一現る!? 女探偵 見津崎 香苗】
2年前、、、私が高校3年生の時だった・・・
この見出しが或るスポーツ紙の一面を飾った。
父が毎日、朝食の時に見ているスポーツ新聞だ。
「へぇ~、迷宮入りの難事件を見事解決~。ふ~ん」
と、父得意の記事の朗読が始まった。いつからか分からないがもう癖付いてしまい、これが父の日課となっている。
誰に向けるわけでもなく語られるそれは、隠居した老人が喋り相手も全く見つからず、終いにはテレビに話かけ、まるで向こうからも話しかけられているように頷き首を傾けるそれと同じだ。
いや、、それよりもたちが悪い・・・てか、、オッサン臭い。
勿論、いつもならば(はいはい)と心の中で思うこともせず、右から左へと聞き流す。
長年、嫌でも耳に入ってくる朝のゴシップ情報は私にとって小鳥の囀りと同じ様なもの、情報として脳が処理をしない。
しかし、この日ばかりは違った。
「何々?女探偵 見津崎 香苗 24歳、10年前におき迷宮入りしていた連続強姦事件を解決。当時の資料を集め独自の捜査で犯人像を絞り出し、警察へ情報提供。それを元に捜査開始、犯人逮捕に大きく貢献!!へぇ~すごいねぇ~若いのに」
40過ぎ初老鳥のいつもの長い囀りは、私の中で情報へと一瞬で変換された。
『ちょっと』っと強引に新聞を奪い取り、食い入るような眼で記事を読んだ。
【(私は当時14歳でしたがこの事件を鮮明に覚えています。多くの女性が被害を受け、涙を流されました。絶望のさ中、自ら命を絶ったかもいらっしゃいました。しかし!この事件は僅か2年で迷宮入りし。犯人だけがノウノウと普通の生活を送っているという事実。それが許せませんでした・・・・・・)】
胸に衝撃が走った。
漠々と脈打つ心臓。自分でも感じ取れるほどえらく興奮していた。
「私、探偵になる!!」
鳩ならぬ初老鳥は豆鉄砲を食らった。