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ゆたかの怪奇列島第一章「地下深くからの憎しみ」  作者: こうた


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第一章「地下深くからの憎しみ」 第21話「奪われるもの

黒い霧が、再び膨れ上がる。

現場の空気は、さっきまでとは別物だった。

重いどころではない。

——押し潰される。

まさきが歯を食いしばる。

「……圧が上がってる…!」

ゆたかも構えたまま動かない。

目の前の“本体”。

その背後に立つ、黒い影。

——神鬼丸。

「……いいな」

低く、楽しむような声。

「人が抗う姿は、美しい」

次の瞬間——

空間が歪んだ。

視界が一瞬、ブレる。

そして——

まさきの体が、宙に浮いた。

「なっ……!?」

見えない何かに、首を掴まれている。

「ぐっ……!」

ゆたかが叫ぶ。

「まさき!!」

駆け寄ろうとする。

だが——

足が動かない。

霧が足元に絡みつき、拘束する。

「……助けたいか?」

神鬼丸の声。

「だがな——」

ゆっくりと、まさきの体が持ち上がる。

「力のない者は、奪われる」

メキ……

嫌な音。

まさきの呼吸が乱れる。

「ゆたか……来るな……!」

それでも冷静な声。

ゆたかの拳が震える。

「……ふざけんな!!」

無理やり足を動かす。

霧を引きちぎるように進む。

その瞬間——

本体が動く。

腕が振り下ろされる。

避けきれない。

ドンッ!!

ゆたかの体が叩きつけられる。

「がっ…!!」

地面に転がる。

視界が揺れる。

立てない。

「……弱い」

神鬼丸の声が響く。

「守ると言いながら、何も守れない」

まさきの体がさらに締め上げられる。

「ぐっ……!」

血が口から滲む。

ゆたかの目が見開かれる。

「やめろ……!」

叫び。

だが届かない。

神鬼丸は、まるで興味がないように言う。

「では、一つ奪おう」

その瞬間——

圧が一気に強まる。

まさきの体が大きく痙攣する。

「があああああ!!」

叫びが響く。

ゆたかは這うように進む。

「やめろぉぉぉ!!!」

手を伸ばす。

——届かない。

あと少しなのに。

その時。

まさきの目が、ゆたかを見る。

そして——

わずかに笑った。

「……いいから……行け」

一瞬の静止。

次の瞬間——

ドサッ

まさきの体が地面に落ちた。

動かない。

完全に。

「……え?」

ゆたかの思考が止まる。

音が消える。

何も聞こえない。

ただ、まさきの体だけが目に入る。

「……おい……」

声が震える。

「おい……起きろよ……」

近づく。

揺らす。

反応はない。

その背後で——

神鬼丸が笑う。

「良い絶望だ」

ゆたかの中で、何かが切れる。

「……てめぇ……」

ゆっくり立ち上がる。

目が変わる。

怒りでも、恐怖でもない。

もっと深い、暗い感情。

「……殺す」

その瞬間——

黒い霧が、ゆたかの周囲で暴れ始める。

制御ではない。

暴走。

預言者の言葉がよぎる。

——飲まれたら終わりだ

だが今は——

止まらない。

「……全部……喰ってやる……」

空気が震える。

本体が一瞬だけ後退する。

神鬼丸の目が細くなる。

「……ほう」

興味を持ったような声。

だが——

ゆたかの呼吸は荒く、

意識は不安定。

まだ制御できていない。

「……いいぞ」

神鬼丸が低く言う。

「そのまま堕ちろ」

ゆたかの視界が、黒に染まり始める。

——ここで止まらなければ

——もう戻れない

だが——

止める者はいない。

地面には、動かないまさき。

空には、黒い霧。

そして目の前には——

圧倒的な悪意。

第一章最大の絶望が、

ゆたかを飲み込もうとしていた。

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