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ゆたかの怪奇列島第一章「地下深くからの憎しみ」  作者: こうた


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第一章「地下深くからの憎しみ」 第19話「境界」

山の空気は、さらに冷たくなっていた。

夜が明けているはずなのに、空はどこか暗い。

遠くの村からは、まだ黒い霧が立ち上っている。

ゆたかは地面に座り込み、荒い息を整えていた。

「……もう一回だ」

まさきが横で呟く。

「無理するな。さっきのでかなり削られてる」

ゆたかは首を振る。

「時間がない」

静かな決意。

その様子を見て、預言者は小さく笑う。

「ようやく顔になってきたな」

そして指を鳴らす。

パチン——

その瞬間、地面の下からさっきより濃い黒い霧が湧き上がる。

まさきの目が鋭くなる。

「……さっきの倍はあるぞ」

ゆたかは立ち上がる。

「……来い」

霧が一気に襲いかかる。

冷気、怒り、憎しみ。

頭の中に直接流れ込んでくる。

——裏切られた

——奪われた

——殺された

「……っ……!」

膝が揺れる。

だが——

今回は、踏みとどまる。

ゆたかは目を閉じる。

「……逃げない」

霧が胸の中へ流れ込む。

普通なら拒絶するはずのそれを——

あえて受け入れる。

「飲まれるなよ」

預言者の声。

ゆたかの呼吸が深くなる。

霧の中の感情が、暴れ回る。

怒り

恐怖

絶望

だがその奥に——

“核”があることに気づく。

「……これか」

小さく呟く。

その瞬間、霧の流れが一瞬止まる。

まさきが息を呑む。

「今の……制御したのか?」

預言者の目が細くなる。

「……見つけたか」

ゆたかは拳を握る。

「全部じゃない……でも」

「触れた」

霧が再び暴れ出す。

今度は、さっきより強い。

「ぐっ……!!」

体が震える。

視界が赤く染まる。

——殺せ

——壊せ

——奪え

声が変わる。

それは怨念ではない。

もっと原始的な“衝動”。

ゆたかの意識が揺らぐ。

まさきが叫ぶ。

「ゆたか!戻れ!」

だが——

ゆたかの口元が、わずかに歪む。

「……これ……力か……?」

その瞬間——

空気が変わった。

黒い霧が、ゆたかの周囲で従うように動く。

まさきの顔が固まる。

「……まずい」

預言者が一歩前に出る。

「行き過ぎだ」

ゆたかの目が開く。

その瞳は——

わずかに黒く染まっていた。

「……全部、取り込めば……勝てる……」

声が変わっている。

人間の声ではない。

その瞬間——

預言者の拳が、ゆたかの頬に叩き込まれた。

ドンッ!!

衝撃で空気が弾ける。

ゆたかの体が吹き飛び、地面に転がる。

霧が一気に散る。

「……調子に乗るな」

預言者の声は冷たい。

ゆたかは咳き込みながら、意識を取り戻す。

「……っ……今のは……」

まさきが駆け寄る。

「危なかった……完全に飲まれかけてた」

ゆたかはゆっくり起き上がる。

手を見る。

まだ、わずかに黒い霧が残っている。

「……でも」

拳を握る。

「手応えはある」

預言者は腕を組む。

「半分成功、半分失敗だな」

「だが——」

少しだけ笑う。

「ようやく“戦う資格”が見えてきた」

ゆたかは息を整え、村の方向を見る。

黒い霧は、まだ消えていない。

だが——

さっきとは違う。

あの霧に、触れられる感覚がある。

「……次は、制御する」

まさきも頷く。

「ああ。次は、負けない」

風が吹く。

山の空気がわずかに変わる。

——まだ未完成

だが確実に、

反撃の準備が整い始めていた。

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