第一章「地下深くからの憎しみ」第13話「怨霊の反撃」
夜の村に、黒い霧が再び渦を巻く。
子どもや作業員を覆い、地面全体が波打つように揺れていた。
ゆたかは蹴りの構えを取り、まさきも刀を握る。
「…奴ら、反撃してきた」まさきが低く呟く。
コン……コン……
地下の振動は規則的ではなく、攻撃のリズムを持って迫ってくる。
黒い霧は腕のように伸び、二人の周囲を締め上げる。
冷気が骨まで染み渡り、呼吸さえ困難になる。
ゆたかは蹴りを放つが、霧は跳ね返り、別の方向から再び襲いかかる。
まさきも呪符で応戦するが、霧の形が瞬時に変化し、攻撃はほとんど効かない。
「くそ…奴の力、想像以上だ!」ゆたかが叫ぶ。
まさきも眉をひそめる。
「地下の怨霊だけじゃない…黒幕の意志が直接操作してる」
その瞬間、黒い霧の中心から、巨大な影が地面の奥から立ち上がった。
体はねじれ、腕は異形の形で伸び、顔は怒りと憎しみに歪んでいる。
まるで人間の形を超えた怪物だ。
「…神鬼丸の力…」ゆたかは息を呑む。
影は低く唸り、村全体に冷気と圧迫感を放つ。
周囲の空気は凍りつき、作業員の体はわずかに宙に浮く。
ゆたかは一歩前に出る。
蹴りを放つが、影の腕が跳ね返すように受け止める。
まさきは呪符を振るが、影は自在に形を変えて攻撃をかわす。
——二人は初めて、黒幕の意思と怨霊の力の組み合わせの恐ろしさを肌で感じた。
「…これ、普通の戦いじゃない!」ゆたかが叫ぶ。
まさきも冷静だが、視線は緊張に鋭くなっている。
「…地下の力の源を断たなきゃ…村は終わる」
黒い影は地面から波のように広がり、村全体を包み込もうとする。
子どもたちは依然として虚ろで、作業員の意識も混濁していた。
ゆたかは蹴りを連続で放つ。
まさきも呪符を増やして防御を固める。
だが、霧は二人の動きに合わせて即座に再編成され、隙を作らない。
——初めて、二人は致命的な危機を理解した。
——地下の怨霊と黒幕の力は、人間の限界を超えて村全体を支配しようとしている。
ゆたかは深呼吸し、まさきを見た。
「…まだ諦めない。奴の力の源を探す」
まさきも強く頷く。
「…このままじゃ村が…」
地下の黒い影は、圧倒的な力で村を包み込み、二人を試すように揺れる。
——黒幕・神鬼丸の力、その恐ろしさは、まだ序章に過ぎなかった。




