第一章「地下深くからの憎しみ」 第12話「広がる黒い力」
夜明け前の村は、重苦しい空気で包まれていた。
子どもたちの寝室の窓はわずかに揺れ、微かな霧が忍び込む。
作業員たちは昨日の疲労も癒えぬまま、現場で倒れていた。
ゆたかとまさきは、現場に駆けつける。
「…昨日より被害が拡大してる」まさきが低く呟く。
コン……コン……
地下から響く、あの規則的な振動が村全体に広がる。
黒い霧は単なる形を変えた怨霊ではなく、意思を持った波のように村中を包んでいる。
保健室に向かうと、倒れた子どもたちの体が、霧の影にわずかに浮き上がっている。
ゆたかはすぐに蹴りを構える。
「…霧が、子どもたちを直接攻撃してる」
まさきは呪符を振るい、霧を押し返す。
だが、霧は瞬時に形を変え、攻撃の軌道を学習して避ける。
「奴の力…俺たちの攻撃を完全に読んでる」ゆたかは眉をひそめる。
そのとき、黒い霧の中から低く歪んだ声が響いた。
「…我が力、恐怖となれ…」
声には怒りと狂気が混ざり、村全体の空気を重く変える。
作業員の体温は奪われ、震えが止まらない。
子どもたちの目は完全に虚ろになり、まるで意識を失った人形のようだ。
ゆたかは蹴りを放つが、霧は腕のように伸びて蹴りを跳ね返す。
まさきは呪符で霧の一部を押し返すが、霧は別の方向から襲いかかる。
「…奴の力、村全体を直接操作してる」まさきが息を切らす。
ゆたかは霧を凝視する。
——地下深くで、黒幕・神鬼丸の意思が怨霊を通して広がっている。
——このままでは、村は完全に彼の支配下に置かれる。
「まさき…どうする?」ゆたかは冷静に訊く。
まさきは短く答える。
「…地下の力の源を絶たなきゃ、この村は守れない」
二人は互いに目を合わせ、決意を新たにする。
黒い霧はますます力を増し、村全体を覆おうとしていた。
——これは、単なる怨霊との戦いではない。
——黒幕の直接の力との戦いが始まったのだ。
コン……コン……
地下からの音は、もはや単なる振動ではなく、意思を持った脈動になり、村全体を震わせる。
ゆたかは蹴りの構えを取り、まさきも刀を握る。
「…次で、この黒い力の正体を突き止める」
闇の中で、霧は蠢き、子どもや作業員を飲み込もうと迫る。
二人の前に立ちはだかるのは、黒幕の意志を宿した怨霊そのものだった。




