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第2話 転生したらレベル1だった

◇◇◇◇


「……ここは?」

 ふと目が覚めると、俺はベッドの上に横たわっていた。


 重い体を起こすと、視界に広がるのは見慣れた部屋。れは、自ら作り上げたゲーム――「ドラゴンサーバント」の開始時、プレイヤーに与えられる拠点だった。


「これは……ゲームの世界に転生したのか?」


 その時、”フォン”という電子音と共に、目の前にステータス画面のウインドウが開く。見慣れたステータス画面。全ての数値はレベル1を指している。

「やっぱり、ここはドラゴンサーバントの世界だ! しかもレベル1……ボーナスポイントは付かなかったのか……」


 まさか自分が作ったゲームの世界に入り込むなんて……本来なら小躍りしてもいい場面だが、あまりに非現実的な現実と、先ほどの過酷な体験が頭を巡り、整理がつかない。


 俺は桶に汲んであった水を一杯飲み干し、深く息をつく。冷たい水が喉を通り、ようやく思考が少しずつ冴えてきた。


 オブリビオンが現代に逆転生して、入れ替わるように俺が異世界へと転生した。それが一体、何を意味するのか……

 当然ながら、そんな事態は最新アップデート――「破滅シナリオ」のどこにも書かれていない。

 

 そしてシナリオを思い浮かべた瞬間、俺は残酷な事実に気づいた。


 俺たちのチームが最後にアップデートしたのは「破滅シナリオ」――その後に続くはずだった、世界の復活を描く「再生シナリオ」は……まだ実装すらされていない。

 

 ――つまり、この世界はやがて破滅する運命にあるのだ


 俺は改めて絶望感に襲われる。東京のスタジオは灰となり、支えてくれた仲間の消息も不明だ。学生時代から人生の全てをかけて築いてきた「ドラゴンサーバント」の世界。


「こんな形で終わるのか……」

 そんな事を考えながら、ぼんやりと、ステータス画面を眺め続ける。

 だが――


「……これ、面白そうだな……」

 思わず、そんな言葉が漏れた。

 そう、俺たちが作ったゲーム。当たり前だけど――面白そうなのだ。


「これはゲームだ。サーバントを倒そう。そして、破滅シナリオを書き換る方法が見つかれば……この世界も、現代も救えるかもしれない!」


 俺は強い決意とともに、立ち上がる。そして、頭の中を整理して、これからの行動を組み立てていく。


「とにかく、村のギルドに行って情報収集だ。それと……最低限の装備も必要だな」

 ゲーム序盤のシステムを作ったのはかなり前。記憶を辿りながら今後の予定を立てていく。


◇◇◇◇


「すごい、懐かしい! ここは……はじまりの村、グリーンフィールドだ!」

 村の中心にある広場。その脇に佇む古びた建物。

 このゲームを始めた冒険者が、必ず最初に訪れる場所――ギルド。ここを作ったのは、もう何年も前のことだ。懐かしさが胸いっぱいに広がる。

 

 カランカラン……


 呼び鈴の軽やかな音を響かせ、木の扉を押し開ける。その中には、待合所でくつろぐ冒険者たち。その奥には受付カウンター。このあたりは、徹底的にRPGの定番要素を詰め込んで設計した。プレイヤーが自然と世界観に入り込めるように――そんな意図で作った空間だ。


 しかし、ギルドに入ってすぐに、周りの冒険者から値踏みをするような視線を感じた。サービスに人気が出るほど、古参ユーザーが幅を利かせて、初心者は入りにくくなる。


 本来なら、新しいユーザーは歓迎されるべきだが……シナリオの更新にかまけて、この辺のケアに欠けてたな……とか反省するが、今はそれを考える時期じゃない!


「新しい冒険者ね! 私の名前はアンジェラ・シェリー。よろしく!」

「よろしく、俺は東山リュウジ」

 金髪にがっちりした体つき、腰には赤い柄の剣を差した女性剣士。年齢は俺と同じくらいだろう。ギルドは冒険者自らの手で運営されているので、受付も持ち回りで所属メンバーが担当する。彼女もその一員だろう。


「さっそく、ギルドメンバー登録するわね。えーと、レベルは?」

「……レベル1……」


 そのやり取りを眺めていたギルドメンバーたちのささやきが漏れ聞こえる。


「聞いた? レベル1だとよ」

「ボーナスポイント付かなかったのか?」

「あれじゃ、誰とも組めないな」

 

(うう……なんか居心地悪い……)

 

 ドンッ!


 その時、机を叩く乾いた音が響きわたった。

「ちょっと、アンタたち! そこでコソコソ陰口言ってんじゃねえよ! 誰だって最初は初心者だろ。優しく見守るとか……できねえのかよ!」


 シェリーの一喝、そして冒険者たちは押し黙るが……そのうちの一人が重い口調で語り出す。

「悪りぃな、姉さんの言う通りだ。でもよ、最近……クエストの難易度が急に上がってるだろ。新人をパーティに入れる余裕なんて、どこにもねえんだ」

「そうだ、この前もレベル10のパーティが全滅したばっかだ。まあ、頑張って親切な、命知らずのパーティを探すんだな」


 ここで俺は気づいた。世界的ヒットを飛ばしたこのゲームは、本来初心者にも優しい作りのはず。古参ユーザーが邪魔してる、というより……おそらく、破滅シナリオの影響で難易度が上がっているのだろう。


――世界のバランスが崩れている。


 それは、あくまで破滅を際立たせる演出だった。すぐに再生シナリオをアップして戻すつもりだったが……それはもう叶わない。


 シェリーが申し訳なさそうに話す。

「ごめんね。確かに、今初心者に厳しいのは確かだけど……頑張ってね」

「……ああ、頑張るよ……」

「そうだ! まだお金ないでしょ? 古いけど余った装備一式がかるから、持って行きな!」

 

 シェリーは受付の奥から、古びた剣、弓、鎧などありったけの装備を持ってきてくれた。

「ありがとう、助かる!」

 

 俺はさっそく使えそうな装備を身につけ、ステータスを確認する。


装備:

木の剣

木の弓矢

木の胸当て


ステータス:レベル1

HP(体力):10

STR(攻撃力):10

DEF(防御力):10

……

……


(おおお……色々ちょびっとずつ上がってる!)


 バタン!


 その時、ギルドの扉を乱暴に開ける音と、叫び声が聞こえた。


 「レベル20、ファイアドレイクだ! 村が襲われてる!」

「ええっ!」

「なんだと!」


 待合室の冒険者たちは、血相を変えて飛び上がり、ギルドの外に出る。受付にいた俺とシェリーも後を追った。そこには、地獄のような光景が広がり、思わず息を呑む。


 巨大な竜。その周囲には、護衛のように群がるゴブリンやオークの大群。村のあちこちから炎が上がり、悲鳴が響き渡っている。

 

 ドンッ!


 その時、さっき俺に忠告していた男が、突然俺の胸を突き飛ばした。俺の体はよろめき、ギルドの中へ押し戻される。


「いってえ……! 何すんだよ」



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