紳士の助言
「ジュールさん!」
それまで下を向いていた僕は咄嗟に頭を上げた
ジュールさんだ。前に僕がお金を落とした時一緒に探してくれて助かったことがある。すごく丁寧で親切な人で見た目の通り紳士って感じだ。
どうやらこの人も僕と同じで推理小説や謎が好きらしく趣味の合う推理仲間になった。おすすめの本や面白い豆知識とかを僕に教えてくれる。
ジュールさんなら何かわかるかもしれない。
「何やらお困りのようですが」
ジュールさんがベンチに座りながら言った。
「今、市長の横領疑惑について調査してるんですけど、何も手がかりが見つからなくて…お手上げ状態です」
僕は一縷の希望を抱いてありのままをジュールさんに言った。
「聞き込みをしたんですけど思うように情報が手に入れられませんでした」
僕の後に続いて補足するようにヴェリテも言った。
「なるほど、そうでしたか。市長の疑惑というのは今日の新聞に載っていたものですよね?」
少し考えた後、ジュールさんが落ち着いた声で言った。
「えっ!?知ってるんですか!」
僕は驚きのあまり目を見開いてジュールさんの方に目を向けた。流石と言うべきか、やはりと言うべきか、ジュールさんはこの疑惑を知っていた。
「ええ、存じておりますよ。ですが、私も詳細は分かりかねます。」
ジュールさんは胸に手を当てて申し訳なさそうに言った。流石のジュールさんにもこの件はわからないらしい。
上げて下げられた気分だ。
「このまま聞き込みや調査をしていても手掛かりを掴める気がしません。ジュールさんがこの謎を解くとすればどう調査しますか?」
ヴェリテが真剣な眼差しで言った。
「市長の疑惑は記事にこそなっていますがあまり出回っていないのでしょう?聞き込みをするとすればこのような大きな通りではなく人通りの少ない路地が効果的かと。裏の人間であれば知っている人もいるかと思いますので。
しかしながら、あまり治安がよろしくないのでおすすめはしませんが」
と生ぬるい風に吹かれながらジュールさんは言った。そのオレンジ色の髪が夕日に染まってさらに深い橙色になっている。
「それでは、私は野暮用がありますのでこれで」
ジュールさんはすっと頭を下げて歩いて去っていった。
5時のチャイムが鳴り響いている。
僕はぼーっとチャイムを聴いて段々と人の数が少なくなる公園を眺めていた。これからどうしよう。路地裏は危ないらしいし、他に行くあてもない。本当に手詰まりなのか…?
「人気の少ない路地、行ってみるか?」
沈黙の中ヴェリテが口を開いた。




