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不思議な少年

「司書さん、あの本入ってる?」

と言いながら夜の少しひんやりとした空気と共に人が入ってきた。

スタスタと静かな足音だけが店内に響く。


このタイミングで本の受け取り…間違いなく店長さんの言っていた「何でも屋」だ…!


「やばい、来たよ!何でも屋さん」

僕は小声でヴェリテにちらちらと目配せした。ヴェリテも気づいたみたいで様子を伺っている。


「ああ、入っているぞ。「大気中の物質」の本だったか?」

何でも屋が頷くと、老店長はゆっくりと立ち上がり、のそのそと店の奥へ入っていった。


「…何でも屋さんってどんな仕事してるんだろ」

僕は何でも屋から目を離せずに言った。自然とそんな疑問を抱いた。


カウンターの前に立っているのは僕達と同じくらい、ーいや、むしろ僕たちよりも年下なんじゃないかと思うほどの風貌の少年だった。

全体的に黒くて、目の紫色がやけに目立つ。スーツを着ていてなんだか大人っぽい雰囲気ではあるけど…その様子からは何か得体の知れない異物感のような物を感じる。


「ペット探しとかじゃないか?」

ヴェリテにしては珍しくそんな冗談を言う。

何でも屋は危険な仕事などしていないように思えた。きっとヴェリテの目にもそう映っているのだろう。

何でも屋っていうからもっと数々の任務をこなしてそうな威厳のある、強そうな人なのかと思っていたけど。


拍子抜けっていうか、安心したって言うか。なんとも言えない複雑な気分だ。


「待たせたな。この本で間違いないか?」

本をカウンターに置いて表紙を見せながら老店長が言った。


「うん、間違いないよ。ありがとう」

何でも屋と思われる少年はそう言いながらポケットからお金を取り出した。


店内にはチャリンという金属の音とそれを数える店長さんの声だけが反響している。


「あの何でも屋さん、調査手伝ってくれるかな?見た感じ温厚そうな人だけど」


僕は自然と手に力が入って握り拳を作りながら言った。それまで意識が現実離れしていた僕は今から依頼をするんだという実感が湧いてきてなんだか緊張してきた。


「それとあそこにいる坊達の話を聞いてやって欲しい。何やら困り事があるようだ」


老店長は本を紙の袋に入れながら言った。

老店長さんは僕達のことを気にかけてくれているようだった。


「困り事ねぇ、ま、わかったよ。聞いてみるね」

何でも屋の少年は本と言葉を交換するかのように言った。


ー何でも屋の少年が僕達に近づいて歩いてきている。


「君たち、おれになんか用があるのかな?話なら聞くよ。場合によって報酬は安く済むかもね」


僕たちの心を完全に見透かされているようだった。

その声のトーンは穏やかで、滑らかで、それでいて重力に身を委ねる雨のようにつかみどころがなかった。


「でもねぇ、今日はもう暗くなってきたし、今から話を聞くってなると君たちの家の人も心配すると思うんだよね」


何でも屋は考える素振りを見せて淡々と落ち着いた声で言った。


確かに時計はもう19時を回っていて、孤児院の門限である18時はとっくに過ぎている。そろそろ帰らないと本格的に不味くなってくる頃だ。


「だからまた後日来てよ。何でも屋の事務所の住所渡すから。あ、火、木、土曜日にやってるからそのとき来てね」


と何でも屋は小さいメモにサラサラと住所を書きながら言って僕に紙を手渡した。


その帰り道は実に不思議な気分だった。現実なような、現実ではないような、ぼやけたビルの灯りも相まってどこか夢見心地だった。さっきまで静かなところにいたからか大通りの騒音がやけに大きく聞こえる。


ーあの人は一体何者なのだろうか。


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