師匠
「最後の一撃どうやってやったんですか?」
王都への帰り道、私はおじさんに尋ねた。
あの一撃は私の「知識」を持ってしても、理解不能である。頭が弾ける、言葉にすれば簡単だが、それは常識ではあり得ない。
そして、何より美しかった。
あの光景が脳裏から離れない。
ぶちまけられた脳漿が、咲き乱れた血が、おじさんの頬に着いた一滴が、常識であり得ない強さが、それを成し遂げる技量が、
全てが全て美しい。
私も使ってみたい、そう思わずにはいられない。
私の問いにおじさんはあっさりと答えた。
「魔力だよ、魔力。棒に魔力を纏って寸頸をした。簡単に言えば、内側から破壊したってわけだ。」
ふむ、答えを聞いたがさらに謎が深まった。
が、私はあることを確信した。
「知識」を得て感じた違和感、魔物と呼ばれる化け物、そして魔力。
ここはどうやら「知識」とは異なる世界のようだ。
「知識」によって全能を感じていたが、異世界となると話が違う。
分からないことだらけだと思うとワクワクする。
「魔力について教えてもらう事ってできますか?」
結局、一日一緒にいたのにこのおじさんのことは分かっていない。
ドコの誰で、何をしているのか分からない人を信用することに不安が無いわけでは無い。
でも、悪い人では無いと私の勘が言っている。
そんな覚悟を決めた私とは裏腹に、やはりおじさんはあっさりと答える。
「俺は暇だから別に構わないが…
今日みたいに釣りのついでとかだったら教えるぞ。」
「ありがとうございます、師匠。」
教えてもらうなら敬意を払わなくてはならない。
「師匠、いい響きだな。坊主、今日から俺のことは師匠と呼ぶように。」
師匠は快活に笑い、うざったく頭を撫でるのであった。




