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怪しいおじさんに連れられて…

「坊主、そこの川はおすすめしないな?」


名残惜しく川を眺めていた私は急に話しかけられて驚く。

注意散漫になっていたのか、自分を非難しつつ、相手をマジマジと見る。


おじさんである。

少しお腹の出たいい歳した男で、無精髭をポリポリと掻く姿に毒気を抜かれる。

服はスラムでよく見るボロさなのに、靴と帯剣の品質の良さがチグハグで、奇妙に映る。


男は無言の私にも気を留めず話を始めた。


「よければ良い場所を教えるぜ。ここよりも澄んだ水で、魚も沢山いる。

俺の釣り捌きならちょちょいのちょいだ。」


そう言い釣りの真似をし始める男に呆気にとられてしまう。

ついて行くことに非常に不安だが特段危機感を感じない。


こういったときはいつも嫌な感じがするのだが…

スラムで培われたセンサーが反応せずどうしていいか分からずにいると、私の意見は関係ないとばかりに背中を押され行くことになった。



王都から1時間、どうやら目的の場所に着いたようだ。

森である。

鬱蒼とした木々が折り重なり不気味さを醸し出している。

森の奥が暗闇に覆われ、着いてきたことを後悔した。


「おじさん?

奥が見えないんだけど…」


「あー、大丈夫だ。俺は何度も来たことがあるが生きている。問題は無いだろう。」


いや、生死の話をしているのではない。

そう言おうとするが、おじさんは森へと入っていく。


このまま帰るのも逃げたようで癪だ。

私も背中を追うように恐る恐るついて行った。


「本当に釣りができるの?」

「あぁ、森の中心部に湖がある。楽しみにしとけ。」


「普段何やってんの?」

「色々やっているぞ。」


「どこに住んでいるの?」

「王都だ。」


「そういえば、おじさんの名前は?」

「ひ・み・つ」


会話が弾まない。思えば、会話の経験は孤児院時代の古い物しかないのだ。

そもそも、おじさんが会話をリードして欲しい。それに秘密が多すぎやしないだろうか。


再度話そうと口を開いた瞬間、嫌な風が頬を撫でた。


「おじさんっ!」


訳も分からず叫んだ私に反して、おじさんは冷静であった。

荷物を置き、剣を構える。


「坊主、勘がいいな。」


『Gyazaaaa!!』


嫌に残る叫び声。

茂みから現れた姿に思わず変な声が出た。


「ありゃー、ゴブリンだ。そのまま俺の後ろにいろよ。」


冷静な声を聞きひとまず言われた通りにし、まじまじとゴブリンを観察する。


一言で言えば醜悪。これに尽きる。

人型で身長は私より少し大きい程度。全身が汚い緑で、皮膚に浮き出る大量の吹き出物には相容れない事を直感で理解する。


ゴブリンは金切り声を上げ、棍棒を振り回しながら突っ込んで来た。

おじさんは動じず剣を上段に構え、


体がブレた。


目の前に起きた出来事なのに現実感が無く、私は見入る。


体を落とし、視界から姿を消し、一瞬で肉迫する。

上から剣を一振り。

ゴブリンも気付くが時すでに遅い。ズレていく体をどうにもできず内臓をぶちまけ、ゴブリンは死んだ。

何事も無かったかのように血は払いおじさんは再度歩き始める。


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