知識は偉大である!
僅かな光で目を覚ます。
寝ぼけたまま、ほぼ無意識で吊した虫を食べる。
だんだんとハッキリとした意識の中、昨夜のことを考える。
思えばあんなにもネガティブになる必要はなかった。
確かに昨日の短絡的な行動は反省すべきだが、こんなにも沢山の知識を得られたことは正直プラスでしかない。
小さい子供が何年も生き延びられるほど、王都のスラムは優しくない。
それでもこの知識があれば、なんとかなるのではないか?
「よしっ!」
気合いを入れるように頬を叩き、これからの事を考え始めた。
真っ先に考えないといけないことは食料についてだ。
その日に採れた虫や、そこらの雑草で腹を満たすのはあまりにも無謀だろう。
他のスラムの子供のように物を盗むというのにもリスクがある。
ここの人間は小さい子供でも容赦しない。
物を盗んだと分かると平気で殺されかねない。
うーーん。
頭に引っかかった物はあるが、それがなにかわからない。
気分転換に顔を洗おうと考えるが、昨日の井戸の一件を思い返し、少し嫌な気持ちになる。
井戸?
水?
王都?
「川!!」
思わず出た大声に咄嗟に口を塞ぐが、気持ちが晴れニヤニヤが止まらない。
古代人の文明は大河の元で大きく発展した。
黄河にインダス川、チグリス・ユーフラテス川…
歴史に感謝を!
知識に祝福を!
川と言えば魚である。
私は興奮冷めやらぬ中、フードを被り外に出るのであった。
早朝のスラムは静かである。
大通りなのに歩く人はまばらで活気がない。
それでも油断してはいけない。
地べたの隅には、寝転び布にくるまっている人がいる。
家と呼べる物があるだけ、私は幸せなのかもしれない。
時折向けられる視線に意識しないように歩く。
人攫いがいたとしても、ボロぞうきんを纏った血色悪いガキには寄りつかないだろう。
結局何事も無く大通りを抜け、腰ほどある草が生い茂る草原へとたどり着いた。
川はすぐに見つかった。
予想通り都の近くに川があったのは非常に嬉しい。
大河というほどではないが、日本でそうそう見かけない川幅で水深も大きい。
ただ一つ不満点があるとすれば、
「汚い…」
水質汚染の事が頭から抜けていた。
この知識によって無意識に植え付けられていた「川=綺麗」が成り立たない。
川の近くに寄るが変な匂いがするし、川底も見えない。
私の完璧な発想は見事にも打ち砕かれたのである。
思えばもし仮に川が綺麗であったとしても、どうやって魚を捕るのか。
穴だらけの作戦に肩を落とすのであった。




