楽しい楽しいデスマーチ
地平線まで続く草原。ゴールが見えない中、歩き続けるというのは心を削る苦行だ。
変わらぬ景色、膝を擦る硬い雑草、周囲の男達の声にならない悲鳴。
デスマーチ――この一言に尽きる。
貴族との顔見せ?のような物を終えた後、私たちは武器を選ばされた。
樽の中に無造作に入れられた武器の数々。種類は多いが、質は悪く粗悪品ばかり。
私は結局武器を選ばなかった。
近くにいた兵士に聞いてみたが、問題ないとのこと。
それって戦力としてカウントしていないって事では…
少々釈然としない気持ちのまま行軍を開始した。
最初の頃は良かった。
スラムの人で固まって、和気あいあいと話していた。
それが徐々に皆の口数が減り、昼食後は愚痴が増え、夜になる頃には誰もが一言も喋らなくなった。
足が棒のようになり立っているのでさえ痛い。
足の皮が捲れる。
槍を置いている肩が炎症を起こした。
2日目、3日目…1週間。
中には脱落して野晒しにされる始末。ハッキリ言って地獄である。
そんな中で私は比較的楽が出来た。
師匠との稽古や「身体強化」で足腰が鍛えられているおかげで問題ない。足も普段靴すら履いていない私にとっては、軍から支給された靴があるおかげで非常に快適だ。
武器の重さも問題にならない。
棍、具体的には長さはおよそ1m、太さも私の手になじむ大きさと丁度いいため疲れを感じない。
そして何より――
「ってな感じで俺たち精鋭だけの軍が作られたわけ。」
100人いる「精鋭」の兵士達の創設秘話を聞いている。
ランドフと名乗ったこの男はスラムの寄せ集めを監督する役割を任されており、その中でも最年少の私のお目付役になったそうだ。
はじめは子守りを押し付けられたとうんざりしていたそうだが、私が弱音を吐かず淡々とついてくるため今では気安く接している。
私としても彼の話は新鮮でどれも面白いため大歓迎である。
行軍中横で彼と会話しているおかげでどれ程救われたか。
暇で暇でしょうが無かった私にとっては嬉しい限りである。
「凄いですね。でもランドフさんは、その精鋭の中でも強いんですよね?」
私が見抜いたとおり、兵士達一人一人が精鋭なのだろう。ただ、その100人の中でも群を抜いて強いのが目の前の男だと勘が告げている。
「お、よくわかったな。俺はこの軍の中でもある程度の統率権を持っている。まぁ、簡単に言えば隊長だな。
レンも俺を隊長と呼んでいいぞ。」
無精髭を撫でながら、ランドフもとい隊長は照れくさそうにする。
おっさんのデレに付き合う気は無い。喉まで出かかった言葉を飲み込み、やれやれと心の中でため息をつくのであった。
隊長の話が一段落して、今度は質問してきた。
「レンは武器を選ばなかったのか?」
「武器を持っていますからね。」
そう言い棍を高々と掲げるが、隊長のリアクションが宜しくない。
「そ、それが武器なのか?」
「逆になんだと思っていたんですか?」
「子供が適当に拾ったら木の棒で遊んでいるみたいな、
レンと話していて子供っぽくないから気になったのだが、武器だったとは…」
心外だ。そんな子供のように振る舞う精神年齢では無い。
それに、
「これは棒ではありません。棍ですよ。」
堂々とした私の宣言に隊長は呆れたように肩をすくめる。
「やっぱり、ガキじゃねーか。」




