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友達  *レオン視点

閑話です。

「はぁー……」


俺は溜息を吐いた。集まったのは約500人。俺たちの軍隊と合わせて計600人。

想定以上の人数に内心は嬉しいが、大勢から一斉に視線を向けられるのはどうにも慣れない。


「貴様は貴族だろう?何をそんなにも気疲れする。これまでも兵を率いてきただろう。」


「そうだが数が違う。それに兵たちは気心が知れているし、俺を慮ってくれる。今回とは様子が違うんだ。」


俺の必死な弁明にも、前の男は意に返さず鼻を鳴らす。


「あれは下賤な民。気にすることはないだろう。」


「口が悪いぞ。聞かれていたらどうする?」


この男の選民思想は少々過激すぎる。昔よりはマシになったと思ったが、今回の徴兵で再燃したようだ。

この言動が知られてしまったら、せっかく集めた戦力が減ってしまう。


そんな俺の内心を見透かしたのか、男は弁明をし始めた。枯れ木のような細腕で髪の束から一枚を取り出す。


「これは張り出していた物か?」


「そうだ。よく見ろ、ここの報酬の欄。具体的な金銭の記載は一切無い。別に私たちが払わなくても文句を言われる事はないのだよ。」


俺が反論を口にしようとするが、遮るように話し続ける。


「違う、違うのだよレオン君。ここには命の保証も書かれていないし、死んだ後のことは明記していない。自分が死なないと思っているのか、死ぬことを考えられないかわからないが、知能が低い。未来のことを考えれないか、楽観的で刹那的。そんな物と私たち貴族を同格に扱うのは随分と勝手すぎる。」


ドヤ顔で講釈を垂れる男に腹が立つが、反論できるだけの弁が無い。


「それに、貴様は自分が庇っている者たちを死地に追いやるのだぞ?」


「それとこれとでは話が違う!」


俺の荒げた声に彼は何かを言おうとして…


「もう辞めておこう。今日はお互い気が立っている。」


「そうだな、悪かったよ。」


彼は挨拶代わりに手を上げ、そのまま天幕を出た。

俺はぼんやりとその背を眺める。


彼は天才なのだ。

頭が良く、子供の頃は神童と持て囃された。

伯爵家であることも影響して、彼と交流を持とうとする者は後を絶たなかった。


だが、彼は頭が良すぎた。天才すぎた。

賢いと言われ、神童と持て囃され、化け物と恐れられた。

子供に口で負かされる。プライドの強い貴族にはさぞ屈指的だろう。

口が悪かった事も合わさり、彼は貴族界で孤立した。

友達ができなかった。


「本当に悪いことをしたな…」


天幕の出口を見ながら独り言を愚痴る。

彼の才能に惚れ、俺が彼を誘ったんだ。彼がいなければ商会も軍隊もそして今の地位も今より遥かに劣っているだろう。

未だ恩を返していない。

俺が見たい景色をせめてあいつに見せたい。それが俺の唯一の恩返し。


賢く、頼りになって、でも小心者で、おまけに口が悪い、臆病で、気丈に振る舞う

――俺の友達。



俺の行動一つで何百もの命が左右される。クヨクヨしてはいられない。


「よしっ!」


パン、と頬を叩き、気持ちを切り替えるのだった。

ストックが無くなってしまいました…

内容はほとんど決まっているので毎日投稿もしくは2日に一度になるかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。

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