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貴族

時間を知らせる鐘の音が鳴る。開けた広場はいつもの騒々しい様子とは異なり、どこか緊張感が張り詰めている。

私は辺りを見回す。

総勢600人ほどだろうか。随分と人がいる。

そのうち正規兵と思われる人が100人で私たちを囲むように配置されている。


師匠からは観察目を鍛えると言われていたため、相手の力量はおおよそ分かる。

立ち姿、姿勢、武器あらゆる物を見て私では到底勝てない事を理解する。


師匠からは一般の兵には勝てると言われていたんだけど――誰一人にも勝てない。



そう思うが現実は無情である。

まぁ、師匠の話だ。信じた私が馬鹿だったということで…


強引に気持ちを切り替え、今度は集まった500人の男達を見る。

身なりは不格好なのに綺麗に整列している事が滑稽で、笑みが漏れてしまう。

期待や不安からか私のようにキョロキョロと辺りを窺う人が多いようだ。




しばらくすると壇上に上る一人の男が見えた。

遠くからでも分かるはち切れんばかりの筋肉に、オークと見紛うほどの巨躯。

私は緊張からか自然と背筋が伸びる。



「口を閉じろ!静まれッ!!」


地を震わせるような声が広場全体を覆う。


身構えていたが、想定以上の音圧に身をすくませる。

周りでは、驚きのあまり後ろに倒れるものも出る始末。

その姿に満足したのか壇上の男は降り始め、代わりに一人の男が壇上に立つ。


「私の名はレオンハルト=ディナール。ディナール子爵家の三男にして、この場を預かる者である。」


歳は15前後だろうか。純白の白髪に真紅の瞳。

一張羅の軍服は黒をベースとしたシンプルな作り。それだというのに襟に施された細かな刺繍は千金の価値を持つ。


私はこれまで貴族という者を見たことが無かった。

別に興味が無かったし、権力を振り回しているだけのボンボン、そう思っていた。が、本物を見て自分の認識が甘かったことに気がつく。

貴族とは私たちと違う。

造花のような美しさをたたえ、神聖さすら感じさせる。

師匠の言葉を思い出す。




「貴族はな、色んな奴がいるんだ。それこそ俺みたいなちゃらんぽらんな奴もいるし、いけ好かない奴もいる。だけど、本物の貴族って者は俺たちと別の生き物だ。考え方も、価値観も、全部、別。」


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