5.守り神
音が、なくなった。
「死んだ…?に、二回目の冗談にしてもタチ悪すぎるわよ?神!」
私は声をふるわせてそう言う。
しかし神は表情一つ変えずに、
「本当だよ?君の友達は、自殺してたんだ。」
淡々と告げてスマホを差し出す。
写真には、
手が変な方向に曲がった私の親友がいた。
「うっ…うえ」
私は耐えきれず手で口を抑え、近くの茂みに吐瀉物を吐き出した。
「う、嘘。全部嘘。信じない信じない信じない。」
日比谷は私の方を見て、無言で背中をさする。
「神、嘘だったら殺すからな」
そして神の方を睨みつけた。
「だからー嘘じゃないって。見てみなよ。」
神はスマホをフリフリと揺らす。
「どうして…」
私はぼやぼやとした視界の中で床を睨みつけた。
「おそらく殺人じゃないかなー?1人じゃ付けられない傷あるしー。」
神は飄々と言う。
「誰が殺したの?」
私はぐいと神の胸ぐらを掴む。
「ちょ、大胆…」
「あんた神なんでしょ!誰が殺したのか知ってるなら教えて」
私はすっかり頭に血が上っていた。
「それはー…」
神はじっと私を見つめる。
「言わない♡」
神はそういった後、どこかに消えてしまった。
「なんなのよ…」
私は暫く動けなかった。夢だと信じたかった。
「笹宮…」
「………」
私は日比谷を睨みつける。なんでこいつはこんなに平気そうなの?
「許さない。許せない。どうしてあの子が死ななくちゃいけないの?」
私はひっくひっくと嗚咽しながら床を殴る。
しばらくして、日比谷がそっと手を握ってくれた。
いつもだったら振りほどいていたんだけど、今回ばかりは自分を安心させたかったから、握り返した。
「お前は泣いてたらキモイんだよ」
「はあ?」
私は突然の暴言にびっくりして目を見開いた。
なんだこいつ。良い奴だと思いかけてたのに。
「ふざけんなバカ。」
私はあっかんべーをしてその場を去った。
夕暮れ、学校の屋上で、2人の話し声が聞こえる。
「誰が殺したんだ?教えろよ神。」
「落ち着いてよ日比谷。…いや、今は守り神か。」
神が手すりからすっと降りてくる。
「ま、答えは君たちが探すんだな。」
神はウインクをしてまた消えていった。
「…………」
日比谷は無言で空を見つめていた。