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1.ついてない日

『ジリリリリリリリ』

目を擦りながら私、笹山美奈は強くアラームを叩いた。


「なんか懐かしい夢を見たような…」

正夢、っていうやつかな?

スマホで調べようとすると、すごい量の着信履歴。


「全部非通知設定じゃん…」

はあっとため息をついて、今日はついてないなあと嘆く。


「美奈ー!!いつまで寝てんの!!起きなさい!」

ばんっとドアが勢いよく空いたかと思うと、お母さんが入ってきた。

「ママ、うるさい。大きな声で朝から叫ばないで」

「なっ、あんたなんなのよその態度!生意気よ!」

その声を聞いたお父さんが、

「ママー朝ごはんまだー?」

とのんびりした口調でやってくる。

「どいつもこいつも甘えたなんだからーーーーっ!」


一家の大黒柱は私のママ。いつもご苦労様です。

私は大きいあくびをし、学校の支度を始めた。

-------------

始業のチャイムが鳴り響き、校門が閉められる。

「やっば!!どーしよ」

電車の遅延により少し到着が遅れ、このままだと完全遅刻だ。


私は校門の柵を両手でつかみ、両足をくっつけて勢いよく上にジャンプして校門を越えた。


「はあっ、はあっ」

「あっ!みな!やっほー!あと1分くらいで先生来るよー」

上から声がしたので見ると、友だちのなつきが教室の窓から顔を出していた。

「やっほなつき!まじか急ぐわ!」

「応援してるー!」


私は時計を見ようと上に顔を向けると、

頭上の窓が外れて落ちてきそうになっていた。

「えっ………」

目をつぶって覚悟した、その瞬間、


体をグイッと引き寄せられたかと思うと、間一髪のところで窓の破片を逃れた。

『ガッシャーーーン!!』

破片はあちこちに散らばり、音を聞いた生徒たちが顔を出す。

「こっわ…」

しばらく呆然としていた私だが、はっとして、

「すみません、ありがとうございます」

と見上げてお礼を言うと、


「お前とっっろいな!なまけものかよ」

見慣れた顔。日比谷守だ。

「は!?なによ日比谷守!」

「朝からお前の顔見るとか最悪だわ〜まじどーしてくれんだよ」

悪態をつきながら日比谷ははよ歩きで私の前を歩き出す。

「こっちこそ願い下げよ!お礼言って損した!」

ふんっとそっぽを向き、日比谷を抜かす。

日比谷は頭にきたのか、また私を抜かす。


そんなことを繰り返していると教室に着いた。

「お前ら、廊下にたっとけ。」

「は、はい…」

先生はもう来てたみたい。なんであそこで窓落ちてくるかなあもーーー。

「お前のせいでくそ暑い廊下に立たされてんだけど」

「文句言うなら落ちてきた窓に言ってよね」

日比谷はちっと舌打ちして、スマホをいじり出した。

ほんっと、どーなってんの今日は!!



「災難だったねー美奈」

「災難どころじゃないよ!災害だよ!さ、い、が、い!」

今は昼休み。私は机にひじをつき、顔をしかめていた。


「まあまあ、あの人気者日比谷くんに助けられたし、いいじゃん!」

「あいつが人気者とか、みんなどこ見てんのよ」

私が嘲笑って言うと、ちょうど近くを通った日比谷が睨んできた。

「ちょっと睨まないでよ…ってあー!!」

私はお弁当を開けると絶望した。


「こ、米しかない」

「ほんとだー!美奈具材置いてきたの?」

「いいんじゃね?なまけものだし米が高級食材なんだろ」

日比谷が過去最高に嬉しそうに笑う。

「はーーっ、食堂でなんか買ってくる」

「行ってらーみな」



------------------

「なんか取り憑いてんのかなあ今日」

食堂の帰り道、とぼとぼと歩きながらつぶやく。

非通知設定も結局なんだったんだろ…


そんな風に考えていると、

ドンッ

誰かに当たってしまった。

「ごめんなさい!」

「ぼーっとしてんじゃねーよ笹山」

げっ、よりによって日比谷かよ。

「ぼーっとしてないし!考えてたの!」

「同じだよバカ」


日比谷は自販機前に立ち、おしるこのボタンを押した。

「おしるこって…夏に合わなくない?」

「てめーにはかんけーねーだろ」

そんな言い方ないじゃん。

「あ、そうそうお前、今日屋上には行くなよ」

「えっ、なんで?」

屋上に行かれたら困る理由でもあるのかな?

「なんでもだよ。行ったら、だめだ」

「?………わかった」


こいつさては女の子とイチャイチャする気か?

私がニヤつくと日比谷はゴミでも見るような目で見つめてきた。

「まあ、行くなって言われたら行きたくなるよね」

私がぼそっと呟いた声など、日比谷には聞こえるはずもなかった。




やっと7時間目のチャイムがなり、放課後になる。

「みなばいばーい」

「バイバイ」

私は疲れていたので屋上のことなどすっかり忘れ、帰宅しようとしていた。

すると、

「え…?なつき?」

窓から見える屋上に、なつきがたっていた。

しかも、柵を越えて、今にも落ちそうになって。


「なつき!!!!」

私はただただ走った。

階段をのぼり、

廊下を走って、

ハシゴを昇った。

屋上のドアの前、一瞬日比谷の顔が横切った。

『絶対、屋上に行くなよ。』


「……友達のピンチに、駆けつけないはずないじゃん」

私はぐっと拳を握りしめ、ガチャりとドアを開けた。





目の前が真っ白になったのには

時間がかからなかった。



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