第7話「石は記憶する」
ある夜、俺は礼拝堂の中で奇妙な音を聞いた。
──「ドクン、ドクン」
まるで心臓のような脈動音。
音の出所は、**祭壇に埋め込まれた赤黒い宝石**……そう、“あれ”だ。
> 「あの石、前世で俺が……確か、最後に錬成して、食ったやつだよな」
そう。異世界で129歳の末期、俺は**不老不死の研究の末**、
“自分自身の魂を媒体に錬成した賢者の石”を食べた。
副作用で数日はラップしか喋れなかったが、
それが“魂の残留構造”を生成し、肉体を失っても**存在情報だけがどこかに残った**。
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「でも、何でこいつがここにある?」
その時、弟子のカイが礼拝堂に飛び込んできた。
> 「センセイ、石が……喋りました」
「は?」
> 「“戻ったか、我が創造主よ”と。
> 声は、女性のような……でも、センセイと同じ声にも聞こえました」
──まさか。
俺は祭壇に手を触れる。
次の瞬間、視界が反転した。
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### 【記憶領域アクセス中──転送先:錬金術アトリエ / 旧世界ログ】
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部屋中に積まれた魔道書、錬成陣、骸骨、笑いながら踊るゾンビ。
懐かしい、異世界の研究所。
中央には、大きな錬金台。そしてその上で、**何かがこちらを見ていた**。
「オーマエハ・モー・シンディール……ようやく、繋がったわね」
その声は──俺自身の声だった。
だが表情は、もっと冷たい。
「貴様、誰だ」
「私は“あの時、石と融合したお前”よ。
あなたが死んだあと、魔力が媒体になり、存在のかけらが**次元情報として拡散**されたの」
「つまり、お前は……俺の“記憶の亡霊”か?」
「ちがうわ。私は**器のない魂**──
お前が連結世界に来たことで、ようやく媒体を通じて起動できた」
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> “教会にあった賢者の石”は、前世で主人公が錬成した**自己錬成石**の残骸。
> 石は時間と次元を超え、ゲームの魔力システムに干渉。
> その影響で、**NPCの信仰も石にリンク**して暴走していた。
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「センセイ……これはつまり、前の世界と今が……?」
「繋がってる。\*\*“サブディメンジョン・コネクト”\*\*は、
まだ発動してない。でも既に、効果だけが世界に残ってる」
「……でも、それなら――」
「いずれ、あの世界ごと、こっちに引っ張られて来る」
俺はそう呟いて、視界が現実に戻る。
手の中の賢者の石が、静かに沈黙した。
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> 「教会の結界、強化しよう。これ以上、過去を喚びたくない」
> 「でもセンセイ……それはきっと、もう“始まってる”と思います」
窓の外。
空が裂けたようなノイズが、僅かに走っていた