第36話 **聖域牧場:交わる精霊の調律**
果実の聖域として名高い畑に、静かに新たな来訪者が現れ始めた。最初に現れたのは一本の優美な蹄を持つユニコーン。その全身は純白の光に包まれ、まるで天界から舞い降りたかのようだった。続いて空から舞い降りたのは、銀色の翼を広げたペガサス。聖域の魔力に惹かれるようにして、精霊たちは次々と畑に足を踏み入れていく。
「これは予想以上だな…」
シンディールはその神秘的な光景に驚きつつも、すぐさま対応を決定した。聖域の一部を牧場へと変え、精霊種の保護と繁殖を目的とした新たな計画が始動する。
その計画の一環で、聖域にはカーバンクルやケットシーといった愛らしい精霊種、さらにはノームのような地属性の精霊も姿を見せるようになった。各々の精霊が持つ属性の調和と共存が進むにつれて、牧場には興味深い現象が現れ始める。通常は異なる属性を持つ精霊たちが接触し、一緒に暮らすことで、属性のエネルギーが混ざり合い、新たな性質を持つ個体が誕生するのだ。
「全属性耐性を持つ精霊…それに全属性攻撃を繰り出す個体なんて、想像するだけで面白い研究対象だな。」
シンディールは熱心に観察を続けながら、慎重に品種改良の計画を進めていく。精霊たちの調和を乱さぬよう、トライアンドエラーを繰り返し、最適な交配条件を探る日々が続く。そして、精霊たちのエネルギーが互いに響き合い、ついには全属性を操る新種の精霊が誕生する可能性が見えてきた。
これまで別々の棲家で暮らしていた精霊たちが、同じ牧場で共に生きることで、新たな命の可能性が生まれる…。聖域牧場は、その神秘と進化を続けながら、シンディールたちの期待を胸にさらなる高みを目指していた。




