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**第30話:侵入者が遭難者に**

**GM視点:


GMは険しい表情のまま、立ち止まっていた。目の前には、深淵のような黒い通路。複雑に絡み合う迷路状の構造、壁に浮かぶ不気味なルーン、底知れぬ気配。これまで見たどんなダンジョンとも違っていた。


「何だここは……?」


冷静に、そして機械的に「GMスキル:マップ」を起動する。即座に空間全体の構造図が表示されるはずだった。だが、表示されたのはただ一行。


> *エラー:新ダンジョン*


「……新ダンジョン?登録されてない?おかしいな……」


次に「GMスキル:強制脱出」を試みる。何があっても即座にフィールドを離脱できる絶対命令――そのはずだった。


> *エラー:脱出不可能*


GMの眉がぴくりと動く。


「GM権限が通らない?……いや、通らせないように作られてる。なるほど、やるじゃないか……」


薄らと苛立ちが胸に湧く。しかし、ここで立ち止まっても意味はない。まずは最短突破を図る。GMは天井へ向けて、強力スキル「デスライトニング」を放つ。


まばゆい閃光と轟音がダンジョン全体を震わせた――が。


> *天井:少しだけ削れた*


「……はぁ? 330レベルだぞ、俺は!」


圧倒的な自信にヒビが入る。とはいえ、怒っても抜け出せるわけではない。しぶしぶ階段を探して歩き始めたその時、周囲からうめき声と足音が重なって聞こえてくる。


「来たか……」


### **戦闘:ダンジョンモンスター戦**


最初に現れたのは、骸骨兵10体。装備こそ貧弱だが、動きはやけに俊敏だ。GMは片手を振る。


「圧縮斬撃。」


空間ごと斬るような魔力の刃が走り、骸骨たちは一瞬で砕け散った。が、それはほんの序章だった。


次に現れたのは、闇に染まったケルベロス型モンスターが3体。足音が雷鳴のように轟き、赤い三つの目が闇にぎらつく。GMは距離を取ることなく、正面から歩いていく。


「吠えてる暇なんてないぞ。」


指先から放たれた衝撃波が三頭同時に叩き込み、ケルベロスたちは体内から爆裂して倒れた。


が、その直後。地鳴りと共に、黒い装甲に身を包んだ“呪鉄兵”が数十体、トンネルの奥から突進してきた。盾を構え、魔法障壁を展開している。


「ただの群れじゃないな。作戦組んでる……!」


GMは初めて軽く息を吐くと、魔力を指に集中させる。


「タイムブレイク・全範囲。」


一瞬、すべてが静止する。時間が止まった世界で、GMだけが動き、全モンスターの弱点にマーキングを入れていく。そして、時間が動き出すと同時に――


一斉にモンスターたちの急所が爆ぜ、鉄と骨が飛び散った。爆発の連鎖。光と音が飽和し、視界が揺れる。


そして、最後に現れたのは……魔法防御特化型の“大盾ゴーレム”。4体が連携し、魔力を無効化する結界を張りながらじわじわと迫ってくる。


「物理で抜けってことか。……はいはい、やってやるよ。」


拳を握った。魔力を一切乗せず、純粋な筋力だけで殴る。ゴーレムの巨体が吹き飛び、壁に激突。結界ごと粉砕された。


「まだ来るのか……いい加減面倒だな」


その時、警戒の隙を突くように――地面が突如として割れた。


### **ワーム襲来:転移直前**


「っ!?」


天井が崩れ、巨大な口が現れる。全長数十メートルはあろうかという“魔喰いのワーム”が、階層をぶち抜きながら襲いかかってくる。


GMはすぐさま跳躍し、回避行動を取る。


「速い……だが、読める!」


空中で魔法の足場を生成し、ワームの軌道から抜け出すように旋回。直後にワームの顎が地面を飲み込み、周囲が崩壊する。


「ふぅ……やれやれ、あんなのに食われるわけにはいかない……」


だが、その着地の瞬間――


「……っ!」


右側から飛び込んできたのは、先ほどの大盾ゴーレムの残存個体。砕けていたはずのボディを再構成し、体当たりを仕掛けてきたのだ。


不意打ち気味に吹き飛ばされたGMの体が空中で回転する。そしてその先――ワームが残した魔法陣の中心に、ちょうど投げ込まれるように落下した。


### **転移発動**


「マズい……!」


しかし間に合わない。魔法陣が発光し、空間がねじれる。


視界が白く染まり、次の瞬間には――


GMは見知らぬ空間の中心に立っていた。周囲にはぽっかりと空いた天井、そして湧き続ける無数のモンスター。その数、ざっと700体。


「……ヤバいな、これ。」

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