表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/36

第27話 D&D&D: Demon & Depths & Death

 地鳴りが、大地の底から響いた。

 地龍型のワーム――《アルケウス・ワーム》が咆哮しながら、地下深くへと体をうねらせて掘り進めていく。錬金術で創り上げられたこの巨大生物は、全長百メートルを超える人工龍。シンディールの手によって“縦穴掘削用生命体”として設計され、今まさに地層を貫通していた。


「まずは三十階層まで垂直掘削。それが済めば……次だ」


 その後方では、ゴレムスを筆頭としたゴーレム部隊が次々と下層を整地していく。階段、通路、天井補強、空間拡張。無駄がなく、正確で、疲れを知らない。


 そして――三十階層地点に達したとき、シンディールは深部の岩盤に向かって黒い結晶をそっと置いた。


「ここが、“起点”だ」


 《ダンジョンコア》――これは、迷宮を自己拡張させる魔術機構であり、異世界の一部を取り込みながら、独自の生態系を築く“心臓”だ。さらにその二十階層下、計五十階層の地底に、第二コアを仮設し、迷宮の深淵に繋がる基礎構造が整えられていく。


 コアが動き出せば、自動で部屋や罠、枝分かれする通路が形成される。だが――


「入口と動線は、こちらで作る。それが“デザイン”ってものだろう」


 あえて自力で作業を行うのは、他のリソースを運用可能にするため。そして完成後には、ダンジョンの自然発生機能により、モンスターが無尽蔵に湧く構造となる。


 ベルゼバブは三十階層に“配置”された。毎夜、魔力がゼロになるまで垂れ流され、その影響により《レッサーデーモン》《シャドウインプ》《マグマブラッド》といった自我を持たない下級悪魔たちが迷宮内に発生する。


「立地もいい。リスボン拠点との中間地点――これは冒険者が寄るしかないだろうな」


 そして整備が完了すれば、ゴレムスは畑へ帰還。収穫担当へと戻される。だが、ほかのゴーレムたちはモンスター扱いとして迷宮に常駐させ、罠の番人や戦力の中核とする。


 しかも今では――


「余剰資材からゴーレムを増産できるようにしてある。削岩で出た岩や金属を使って、階層ごとに最適な奴を作らせればいい」


 シンディールの設計により、材料を吸収することでゴーレムが自己増殖できる仕様が実装されていた。これにより建設速度は倍増し、整備の完了も近い。


 その背後では、アルケウス・ワームが鳴き声一つ上げると、土砂と鉱石を吐き出しながら、新たな縦穴を形成していた。


 準備は整ってきた。

 やがて、冒険者たちが自ら足を踏み入れる、“絶対死守型”の迷宮。

 それは、合理性と狂気、管理と放任の果てに生まれた、真なる魔王の遊技場。


 シンディールは、少しだけ笑った。


「――終わったら、遊びに行くとしよう。……誰かが壊さないうちに、な」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ