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第25話 シンディールとベルゼバブ

 戦場の中央、吹き飛んだ瓦礫と蒸発した毒霧の中に、二人だけが立っていた。

 ベルゼバブ――人の姿をとった“それ”は、初めて真正面から言葉を発する。


 ベルゼバブ

「……観測していた。レベル1の下位悪魔が、異世界で経験値を得て強化されていく様を」

「この世界には“仕組み”がある。戦い、倒せば、成長する。

 私もまた、それに乗るために来た。それだけのことだ」


 随分と理性的で、筋の通った返答だった。

 だが、シンディールはわずかに肩をすくめる。


 シンディール

「……随分と、まともな動機だな。なら、提案がある」


 一拍置いて、彼は続ける。


 シンディール

「“ダンジョン経営”ってやつだ。地下迷宮を創り、攻略に来る者を迎え撃つ。

 その中心、“核”は錬金術で用意できる。

 君をそれと連結し、“ボス”として据える。……つまり、在宅勤務だ」


 ベルゼバブがまばたきをする。わずかに口角が動く。


 ベルゼバブ

「……“ボス”? この私が、か?」


 シンディール

「そうだ。攻略者が来れば、戦って倒せ。君に経験値が入る。

 同時に私にも、“ダンジョン主”として成果が還元される。

 無駄に暴れてリスクを生むより、合理的だろう?」


 ベルゼバブは少し黙り、やがて――子供のような響きで答える。


 ベルゼバブ

「……いい響きだな。“ボス”。

 できれば、“ラスボス”がいい」


 シンディール

「勝手に進化していけ。名乗るのは自由だ。だが、拠点は貸す」


 その言葉に、ベルゼバブは微笑に近い表情を浮かべる。

 どこか“中二病”めいた自己認識。だが、だからこそ――コントロール可能だ。


 ■補足描写:メフィストの様子

 少し離れた場所で、メフィストが自分の手を見ている。

 精神リンクからの成長モードはまだ続いているようだが、戦闘意欲は沈静化している。


 シンディール(心中)

(メフィストは後で話すとして……

 召喚系統も安定してきた。魔術書の位相空間に戻すか、仲間とするかは調整次第だ)

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