第22話「雨のような魔法、武器の嵐──そして三位一体の悪魔、召喚」
雲を突き抜けるほどに高まった魔力圧。
その空気を割くように、突如――
ズラララララッ!
天から、魔法の雨が降り注いだ。
火球、氷槍、雷撃、毒霧、重力弾――
ありとあらゆる遠距離範囲魔法が、シンディール領へと降り注ぐ。
「……ようやく来たか。だが」
シンディールはあらかじめ**畑の地下に埋めておいた“魔力吸収石”**の封印を解く。
「この地は、魔力を“喰う”。」
範囲魔法が空中で炸裂する直前、すべての魔力が大地に吸い込まれた。
魔力吸収石:改
効果範囲:半径500メートル
効果:魔法を即時吸収 → 地中経由でマンドラゴラ畑へ流し込む
発動条件:高密度魔力環境 + 錬金術触媒
次の瞬間、畑全体が震え、
無数のマンドラゴラたちが一斉に変異を始めた。
「……!? 叫ばない……?」
マンドラゴラは通常、引き抜けば悲鳴を上げるはずだ。
だが今回は違う。彼らは静かに、自ら地中から這い出てきた。
その姿は完全に変異していた。
《ユニーク個体マンドラゴラ》
外見:宝石のように輝く瞳、黒金の蔦、複合属性の葉
ステータス:通常比 約10倍、特性:自己再生・属性適応・擬態
特殊能力:使役者の魔力量に応じて進化
覚醒数:73体(畑全体)
「いい子たちだ。魔力を、ちゃんと“根”に流してくれたか」
プレイヤーたちは、魔法が効いていないことにすぐ気づき、
次は物理遠距離攻撃に切り替える。
シュババババッッ!
矢、槍、チャクラム、手裏剣、ブーメラン、
あらゆる武器が雨のように飛来する――が、
シンディールの胸元に輝く**“識別ネックレス”**が反応。
「素材:金属系、鋭利度:S、ランク:C、取得中……」
空中の武器は全てアイテムボックスに吸収されていく。
【素材アイテムを追加しました(34件)】
「……どんどん増えるな。いい鍛治素材だ」
それでも、敵の手数が多すぎる。
この状況ではベルゼバブに目的を尋ねるどころか、視線を合わせる暇すらない。
「ならば、足止めを立てよう」
そう言って、シンディールは3枚の契約札を取り出す。
「召喚──応えろ、大地を砕く三位の災厄」
悪魔召喚:三体構成
■アトラス
筋肉と岩で構成された“破壊の巨兵”
・特性:広域衝撃波/挑発ヘイト集中/地面を盾に変える
■バズズ
暴風を纏った“空中支配者”
・特性:高速移動/範囲スタン/魔法反射の竜巻壁
■ベリアル
冷酷なる知略者、“地獄の将軍”
・特性:敵行動の先読み/幻影分身/使役悪魔の指揮力アップ
【ユニーク召喚『三位一体の災厄』を実行しました】
【召喚者の魔力不足を補うため、領地全体から魔力を吸収中】
「ベルゼバブには10分もてばいい。それまでに、俺が交渉のチャンネルを探す」
3体の悪魔がそれぞれの役割で前線に立ち、
魔法、物理、奇襲と対応してプレイヤーの侵攻を寸断する。
この瞬間、シンディール領は
悪魔による“自律防衛国家”と化していた。




