第18話「招かれざる下位者たちと、レベル上限の彼方へ」
教会裏、かつての墓所を改装した**“召喚回廊”**。
石畳には転写された古代語と血の魔法陣。
シンディールは静かに左手をかざす。
「《降霊調合:混沌因子起動》……そして、《召喚連鎖・悪魔式》、詠唱完了」
【召喚:下位悪魔×2体】
1. インクラ・ボルグ
属性:火・怒
特性:突撃型、バーサーク中範囲ダメージ
装備:燃える双角(物理防御無視)
2. ノクス・エレネー
属性:闇・幻影
特性:分身術、敵ヘイト撹乱、暗闇デバフ
装備:影繭のマント(物理必中無効)
呼び出された悪魔たちは、数百年ぶりの召喚主の姿に一瞬沈黙したが、
“彼があの侯爵シンディールである”と理解すると、
跪きながらただ一言。
「……主、再び、我らを現世にて導かれたのですね」
彼の使役モンスター構成は、今や“混沌の五柱”と呼べる存在に進化した。
【使役モンスター構成:5体】
インクラ・ボルグ(悪魔)
ノクス・エレネー(悪魔)
ユニーク個体マンドラゴラ “シェアリィ”(対魔封印術習得)
グレイヴ・ダンサー(ゾンビ合成騎士)(範囲恐怖+HP吸収)
聖遺物ゴーレム(降霊×錬成産物)(物理盾&回復フィールド)
「さて……狩るか」
狩場は適正レベル帯――“崩壊の原生林”。
レベル30前後の中型モンスターが群れをなしているフィールドだが、
シンディールの五体はまるでレイドボス編成。
開始3分で森のエリアが更地と化す。
【現象:モンスター側の“レベル上昇”】
「ん?……おい、ノクス。お前……Lv.36って表示されてるぞ?」
「……元はLv.25固定でございました、主」
ユニークマンドラゴラ“シェアリィ”もレベルが上がっている。
ゾンビ合体体は自己進化を始め、スキルに“進化段階I”の表示がついていた。
《使役モンスターが戦闘参加中に経験値共有》
《召喚主が【世界連結者】の場合、使役者も成長対象に含まれます》
「……あれ、俺、仕様バグったか?」
明らかに、通常のゲームシステムでは起こりえない現象。
本来、使役モンスターのステータスは装備か魔法道具で底上げするのみで、レベル変動は不可のはず。
しかも、使役モンスターが勝手にスキルを覚え始めた。
グレイヴ・ダンサー:「戦闘評価に基づき、《デスパレード》習得」
マンドラゴラ・シェアリィ:「《音律術式》が“群唱”に進化」
インクラ:「《炎獄跳躍》→《煉獄双乱舞》に変化」
これにより、五体すべてがレベル依存型の“半自律進化AI”に変貌していく。
「これは……神でもなく、魔でもなく、プレイヤーでもない存在を創ってるな、俺」
次の瞬間、画面に新たなシステムメッセージが出現。
【システム警告:使役対象に成長値が反映されています】
【これは通常の仕様ではありません】
【運営チケット:#9999──“神格干渉の可能性”】
シンディールは、気にも留めずつぶやく。
「ま、いっか。面白けりゃ正義」