第16話「職の選定、神の選択肢(オプション)」
教会の最奥、神霊の間。
そこには水晶でできた転職の祭壇《グラン・セレスの鏡石》が、淡く脈打っていた。
「Lv.25到達。転職条件、満たしました」
信徒NPCが神妙に頭を下げる。
この世界では、Lv.25に到達した者は“職業”を授かる権利を得る。
ただし、与えられるのは無限の選択肢ではない。
――プレイヤーがこれまで行ってきた行動、選択、交友、思想、すべてを記録し、
“適性”という名の運命として返される。
そして、それは一生を左右する最初の決断となる。
【神前転職の儀:開始】
神官が鏡石に両手をかざすと、
光が走り、画面に適性の【メイン職業】と【サブ職業】候補が浮かぶ。
メイン職業候補(適性評価により出現)
神霊術士
信仰+錬金+召喚を併せ持つ、奇跡使いの上位職候補。
錬成導師
魔術理論と実践錬金の融合型。変性と創造に秀でる。
運命改変者
LUC極振り者にしか現れない超レア職。
スキル発動に“運”の介入が常に作用する。
魔導農師
植物魔法・農業・支援術が融合。マンドラゴラ適性最大。
サブ職業候補(活動ログにより出現)
教皇見習い(カーディナル・ノヴァ)
宗教的威光+政治的交渉スキルを持つ支援サブ職。
降霊調合師
精霊/死霊を錬成し、バフ・デバフを調合する支援専門。
「……迷うな、これは」
シンディールの脳裏に、これまでの戦いがよぎる。
ゾンビと踊った日々。マンドラゴラに刷り込まれた時間。
教会を建て、神薬を生み、レアドロップを拾い続けたあの奇跡の運。
そして、彼は選ぶ。
メイン職業:運命改変者
サブ職業:降霊調合師
【運命改変者】は、ステータスのLUC値を利用して、
スキル成功率・ドロップ率・戦闘イベント発生率・確率変動全般に干渉する、まさに運ゲーの神。
【降霊調合師】は、
過去に使役したマンドラゴラやゾンビ、精霊素材を調合し、
戦闘中に一時召喚ユニット+複合バフ・デバフ薬を生成できる。
《職業決定》
《称号【変数なる者】獲得》
《固有スキル開放:ラッキースロット・オーバードライブ》
効果:確率を一時的に限界突破させる超運ゲーバフ(CT:5時間)
副効果:周囲の“運命確率”も変動する(仲間・敵双方に影響)
水晶が静かに沈黙し、祭壇は闇に包まれる。
しかしその時、外で異変が起きる。
【警告:転職儀式の完了により、《ギルド・バンルーク連合》が動きを開始】
【高位者《確率殺し(アンチラック)》が派遣されます】
「……このタイミングで来るか。さすがに運が良すぎたようだな」
だが――
“運命改変者”の彼には、運さえも操れる。