第15話「ドロップ神、森に降臨す」
神殿街から北、3マイル先。
“レベル帯20〜25”の中級狩場《霧の尾根》は、昔から狩人の登竜門とされてきた。
「このくらいが、今の俺にはちょうどいい」
オーマエハ・モー・シンディール侯爵は、
杖ではなく、農具をベースに改造した刃付きシャベルを携えて、静かに森に踏み込む。
【エンカウント!:森林種ハウルウルフ Lv.23】
→《アルカナ・スパイラル・ヘリオス》を詠唱(ランダマイザー成功)
→“燃えながら発芽する”効果で、倒した場所に自動種まき
【ハウルウルフを撃破!】
【ドロップ:銀牙の首飾り(R)/魔獣の脊髄液(SR)/精霊骨の欠片(SSR)】
【LUC補正により:ドロップアイテムがグレードアップ!】
「……おい、いきなり3つとも光ってるんだが」
さらに、数分後――
【エンカウント!:牙猪バルグ Lv.24】
→スキル暴走:アルカナが“毒薬生成”属性に変異
→攻撃せず、呼気だけで倒れる
【ドロップ:闇猪の胆石(UR)/暴食の牙(SSR)/封印された骨牌(???)】
1時間後、バッグの中はレアドロップ100個超え。
討伐モンスター全24体、ノーコモンという奇跡が記録される。
そして、ついにログが走る。
【称号獲得:《神のダイスを振る者》】
効果:敵討伐時、低確率で“エリアボス”に自動昇格する可能性
副効果:戦闘後、自動で周囲の“未鑑定ドロップ”を識別・高位分類
【新スキル獲得:《エリア・ドロップ・フィールド》】
分類:常時発動型バフ
効果:戦闘時、範囲内の全敵からドロップ判定が“2回”行われる
追加:一定確率で《未登録アイテム》が発現する
「……これはもう、狩りじゃない。採掘だな」
この日、彼が霧の尾根に放ったログは、
わずか3時間で世界チャットに拡散された。
《全ドロップがSR以上》
《新称号“神のダイス”》
《レア未登録アイテム:神核の欠片(伝説級)出現》
それを見ていた者たちがいた。
かつて、彼の教団を敵視した**“破戒の12教会”**、
そして――
旧世界からアクセスする、運営の“監視端末”。
「対象、観測完了。コードネーム《DiceGod》をアーカイブ群に移動」
「次接触時、《神殺し》プロトコル解禁可能域へ遷移」
主人公の運は、世界の運命すらも捻じ曲げ始めていた。