第13話「神の教会に、国家の使者来たる」
礼拝堂の鐘が、朝の風に響く。
昨日、森の奥から現れた巨大トレントを“農薬”で瞬殺したことは、
動画化され、あっという間にゲーム内のトップニュースになった。
そして今日、教会の前に――異様な行列ができていた。
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「センセイ、軍服の人たちが……“外交任務”って名乗ってます」
カイが緊張した声で報告してくる。
見ると、教会前に整列するのは、\*\*第七帝国ギルド《ゼル=レギオン》\*\*の正式外交使節団。
青と黒の軍装に、金のレリーフ。
魔法国籍と国家級ギルドの中でも、特に“他国干渉”が厳しいとされる組織だ。
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> 「初めまして、聖導師殿……いや、“モー・シンディール侯爵”とお呼びすべきか」
> 「我々は、陛下よりの勅命を受けて参りました」
使者の一人が恭しく頭を下げ、文書を差し出す。
そこにはこう書かれていた。
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> 【帝国正式勅命】
> 《貴殿が有する“信仰による万能薬”および“異世界干渉能力”の技術提供を希望する。》
> 対価:
> ・帝国の宗教領地3区画提供
> ・国家ギルド内序列資格の付与
> ・年額1億Gの技術顧問契約
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「なかなか派手な餌をぶら下げてきたな……」
だが、簡単に頷くわけにはいかない。
この申し出の裏には、**教会の支配権**を奪おうとする目論見があるのは明白だった。
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「カイ、交渉の“場”を整えよう。
――《礼拝交渉結界》、展開するぞ」
> 「了解! 祭壇の下に神判石、起動します!」
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### ■ 特殊フィールド:《礼拝交渉結界》
* 効果:交渉中、嘘・詭弁・心理誘導がすべて可視化される
* 相手の“真意”が背景に投影される演出付き
* 成功時:相手は一定時間“信仰耐性低下”状態になる
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交渉が始まった。
だがその最中、外交使節のうちひとりが、ちらりと漏らした。
> 「……それにしても、やはり“神殺し”が存在するとは――」
空気が凍る。
カイが反応し、俺も目を細める。
「“神殺し”……どこの情報だ?」
> 「ああ、これは失礼。“運営直轄の”……いや、何でもない。口が滑った」
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言ったな。
つまり、ゲーム内に――**俺の存在を消せる存在がいる**と、
この帝国は知っている。いや、**持っている**。
ただの外交ではなかった。
これは、“神を試す”外交戦争の火種だった。
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俺はゆっくりと腰を上げ、
交渉の場で、こう告げた。
「ならば、次に話すのは俺ではない――」
祭壇の後ろから現れたのは、**刷り込みマンドラゴラ個体《マンドリンβ》**。
彼はきゅるっと鳴き、外交使節団の前にぽてぽて歩いてきた。
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> 「……この交渉、農業の神が裁定する」