第12話「除草剤と神の一撃」
ゲーム内システムメッセージが突然、村全域に響いた。
【緊急レイド発生!】
【出現ボス:《森厄種トレント・アル=ザルグ》】
【脅威レベル:初級(★3)】
【信仰干渉:不可】【属性耐性:斬 / 火 / 氷 / 神聖】
【弱点:腐食 / 酸 / 除草系】
「来たな……こいつ、**“マップごと潰す木”**だ」
トレント・アル=ザルグ(レイドボス)
巨大な樹木型の怪物。成長し続ける限りマップに根を張り、村機能を封鎖していく
通常の物理・魔法がほぼ無効
弱点は「除草剤」「農薬」「腐食系ポーション」など農業/錬金由来の特殊攻撃
放置すると拠点が沈む(物理的に)
村の外れから現れたトレントは、
礼拝堂の鐘の音をかき消すような地鳴りとともに、のしのしと迫ってきた。
NPCたちは祈るしかない。
だが、信仰は木に効かない。
「カイ、錬成台出せ。素材も運んでこい」
「除草剤ですか?」
「ああ。“やさしくない農業”ってやつだ」
■ 錬金成功:《神農式・超腐食除草液β》
有効成分:マンドリンβの苦味抽出液、信仰高位凝縮媒、サブディメンジョン融合酵素
効果:植物系生命体に対して最大5万ダメージ/秒×30秒
範囲攻撃可(投擲瓶型)、詠唱不要
礼拝堂の屋根から、俺は瓶をひとつ持って立ち上がる。
「神罰、って言うよりは、農薬の時間だな」
瓶を投げる。
空中で封印が砕け、緑と黒の液体がトレントの全身に霧のように降り注ぐ。
【超効果発生!:腐食系×弱点属性】
【連続ダメージ:50,000 × 30秒】
【クリティカル発生! ×3】
「ギギギィィィイイイアアアアアアア!!!!!」
巨大なトレントがのたうち回り、
根を自ら引きちぎって地面ごとえぐりながら、爆発四散した。
【レイド討伐成功】
【参加者:オーマエハ・モー・シンディール、カイ、NPC信者×12】
【レアドロップ:《トレントの心核》】【栽培スキル +5】【LUC +10】
【称号:《農業で神罰を与えし者》取得】
「センセイ……錬金術、って、万能すぎません?」
「神が効かないなら、農薬がある。それが俺の信仰スタイルだ」
トレントを倒したことで、村はひとときの平和を取り戻す。
だが、オークションやレイド攻略によって、
シンディールの名は再び世界ランキング検索の上位に浮上していた。