報告
マリアがシラネのグラスにワインを注ぎ終わると
「それではジョナサンの黒騎士転職を祝ってかんぱ~い」
と、まだ酔ってもいないシラネが叫んだ。
全員がグラスを持ってワイングラスを一気に空けた。
「あっそうだった。その話をしていたんだったな。忘れていたわ」
イツキは笑いながら思い出した。
「マジで?」
ジョナサンが突っ込んだが
「俺も忘れていたわ」
カツヤも頷いた。
「酷いなぁ……」
ジョナサンは二人の友達甲斐の無さに苦笑しながら呆れた。
「まあ、女子校生とお仕事がしたいジョナサンの夢は明日叶えてやるよ」
イツキは笑いながらジョナサンに言った。
「それにしても、この面子でパーティは組んだ事ないな」
カツヤが面子を見回して言った。
「当たり前だ。こんな暑苦しくてむさ苦しいパーティは嫌だ」
アシュリーはまた強く否定した。
「せめてアンナぐらいはいて欲しいな」
カツヤが思い出したように一人の女性の名前を挙げた。
「アンナ?……もしかしてアンナ・リベラか? バーサクヒーラーの?」
イツキが聞いた。
「そう。イツキと最初からずっと一緒に居たアンナ」
とカツヤが応えた。
「最初からではないが、結構古いな。知り合ったのは、この世界に来て一年ぐらい経った時かな。その時に一度パーティーを組んで……二回目はちょうどカツヤと組む前……鍛冶屋する前のパーティで一緒だったから……アシュリーは知っているよな?」
「ああ、知っているどころではない。イツキが無茶をするからいつも後ろで怒鳴っていたな」
アシュリーはアンナとイツキとパーティを組んだ事があった。
「そうかぁ? 話を盛ってないか? アシュリー」
「盛ってないぞ。嘘だと思うなら本人に直接聞けば良い」
「どうやって?」
「もうすぐここに来るよ」
「え? そうなの? なんで?」
「え、それは……実は……俺はアンナと結婚した」
というとアシュリーは顔が少し赤くなった。
そして更に顔を赤らめて
「だから今はアンナ・オーエンだ!」
と叫んだ。
「え~!!」
全員が驚きの叫び
「なんで今まで黙っていた!」
と怒鳴った。
「なんか……恥ずかしくて言えなかった……」
アシュリーは下を向いて顔を上げない。
「言えよ。バカ!」
イツキとカツヤはアシュリーを詰った。その後ろでシラネも小声で笑顔で「バカ!」と言った。
「こら! お前らまで言うな!」
アシュリーは顔を上げて怒った。
「あ? 聞こえましたか?」
カツヤとシラネは笑いながら謝った。
そこに今はアシュリーの嫁になったアンナがやってきた。
「お久しぶりね。イツキ」
「おお、アンナ。聞いたぞ、アシュリーから……」
イツキがそういうとアンナはアシュリーを睨んだ。
「ごめん。先に言ってしまった」
アシュリーは頭を掻きながらアンナに謝った。
「もう、私が言いたかったのにぃ……」
アンナは拗ねたが、すぐに気を取り直してイツキ達に
「そうなの。先月結婚したの。内輪で軽くパーティだけしたんだけどね。
今日、ここにアシュリーが『シラネのとこに行く』っていうからイツキに報告しようって一緒について来たの。でも、みんなが集まっていてるとは思わなかったわ」
と嬉しそうに語った。




