ジョナサンの依頼
「何?」
「俺もその黒騎士になれないかな?」
「ええ??」
今度はジョナサン以外の三人が声を上げて驚いた。
「なんで? お前が黒騎士に?」
イツキはジョナサンに問いかけた。
「さっきアシュリーからね。『お前も騎士にならんか』って誘われたんだけど、しがらみが多い騎士は昔からなりたくなかったんだ。だから剣士のままで居たんだけど」
ここまで言うとジョナサンはワイングラスを一気に空けた。
カツヤがすかさず空いたグラスにワインを注いだ。
そして三人はジョナサンの次の言葉を待った。
「元々、イツキに転職の相談をしたいなって思っていたんだけど、今日たまたまアシュリーがこっちに来ているって聞いて、いい機会だからアシュリーに会ってから一緒にイツキに会おうと思っていたんだ。ところが先にアシュリーに声を掛けられて悩んでいたんだけど、黒騎士があるって聞いたらそっちに興味が湧いてしまった。実際に黒騎士ってどんな感じだ?」
ジョナサンは剣士から何かに転職を考えていたようだった。ただ騎士は憧れの職種だったが、貴族との絡みがあり、騎士層はそれ自体が一種の貴族階級でもあったので、元々平民のジョナサンは気後れしていた。
「まあ、黒騎士は魔王の眷属というのは知っていると思うけど、そこに行ったら冒険者や騎士と戦う事になるぞ。ただオーフェンのところは暫くは保護区域になるから一年ぐらいはそれほど戦いを挑まれることはないと思うが、そこから一歩でも出たら冒険者のターゲットだ」
「成る程」
「ただジョナサンの場合、剣士のマイスターだから転職してレベル一からやり直しても、そこら辺の冒険者にやられることはないと思うが……」
「ジョナサンが黒騎士になったら俺が一番に狩りに行ってやるわ」
とカツヤが言った。
「やなこった。狩られてたまるか。逃げるわ」
とジョナサンは笑いながら言った。
「そうだな。暫くは相手を見て勝負をした方が良いな。あと知り合いとは戦いを避ける事だな。お互い気まずいからな。でも本気か? 本当に黒騎士に転職するのか? 団長はキースだぞ」
イツキは最後のキースの部分だけ憎々しげに言った。
「キースかぁ……あの厭味ったらしい奴ね。まあ、あの程度の性格の悪さなら我慢できるかな。あ、そうだ!お前が連れて行った二人ってどんな奴だ?」
「一人は剣士のアイリス。つい最近ハウザーを倒したパーティーのメンバー。もう一人は転生してきたばかりの女子高生」
「女子高生?」
「そう、お前の大好きな女子高生」
とイツキはカツヤを指さして言った。
「人をロリコンみたいに言うな」
「違うみたいやないか?」
イツキもカツヤと話をする時は関西弁がうつる事がある。
「ちゃうわ」
「ジョシコウセイってなんだ?」
アシュリーが聞いた。
アシュリーとジョナサンは元々この世界の住人なので女子高生を知らない。
「あ、そうかアシュリーとジョナサンは知らんのか。俺らが居た世界では十六歳から十八歳の女子学生の事を女子高生と言ってカツヤみたいなロリコンはそれをありがたがっている」
とイツキは二人に説明した。
「そうなんだ。カツヤはそういうのが好きなんだな」
ジョナサンがカツヤの顔を見てニタッと笑いながら聞いた。
「だからそうやって誤解されるだろうが、イツキ!」
「はは、誤解かなぁ?」
イツキは笑いながらカツヤに言った。
「当たり前や」
カツヤはそういうとワインを飲んだ。




