ギルドのレストラン その1
暫く二人は雑談していたが、イツキが急にカツヤに聞いた。
「カツヤ。お前昼飯食ったか?」
「いや、まだやけど」
「じゃあ、食いに行かないか? 実は俺は朝から何も食ってないんだ」
「そうなんや。じゃあ行くか。俺も腹が減ったしな」
そういうとカツヤとイツキはソファーから立ち上がった。
そして二人でギルドのレストランに向かった。
ランチタイムを過ぎていたのでレストランは空いていた。それでもイツキはいつものように受付に一番近い席に座りホールスタッフを呼んだ。
ランチのセットメニューを二つ注文すると、イツキはワインも注文した。
「昼間からエエんか?」
とカツヤが聞いたが、
「折角久しぶりに会ったんだからエエんや。第一もう夕方に近い。今から夜に向けてウォーミングアップしておかないとな」
と笑いながら応えた。
カツヤも飲みたかったので、なんの問題も無かった。
暫くしてホールスタッフの女の子がワイングラスと赤ワインを持ってきた。それと氷の入ったワインクーラーも持ってきてくれていた。
そのホールスタッフが
「ワインクーラーもお持ちしましたが、どうされますか?」
と聞いてきた。
「気が利くねえ…もちろん使うよ」
イツキは喜んでワインクーラーを受け取った。
「良く知っていたね。僕が赤ワインも冷やした方が好きだって事」
とイツキが聞くと
「この前、仰っていたのを覚えていたので……」
とホールスタッフが応えた。
「君はたしかマリアだっけ?」
とイツキはそのホールスタッフに聞いた。
「そうです。覚えてくれたんですね。嬉しいです」
ホールスタッフの女の子は、イツキが自分の名前を憶えてくれていた事に驚きながら喜んでいた。
「そりゃ、いつもここで飯を食っているからねえ……なじみの子の名前ぐらいは覚えるよ。これからもワインクーラーよろしくね」
「はい。分かりました」
そういいながらマリアはイツキとカツヤのグラスにワインを注いだ。
「そうぞ、ごゆっくり」
そう言ってマリアは去って行った。
その後姿を目で追っていたカツヤはイツキに目をやると
「イツキ、お前優しくなったなぁ」
としみじみ言った。
「そうかぁ?」
「さっき会った時も感じていたんやけど、お前、いい意味で丸くなったような気がするわ。一緒に冒険している時はお前はそんな事意識していなかったと思うけど、近寄りがたい雰囲気があったで」
「え? そうなんだ。知らなった」
「そりゃそうだろ……知っててやられていたら堪らんわ」
「多分、それはあの頃のカツヤがヘナチョコで弱っちかったからそう感じたんじゃないのか?」
「違うな。確かにその当時の俺はヘナチョコだったが、一緒に居たアルもそう言っていたぞ」
「お前らはそんな目で俺を見ていたのか……」
イツキは少しわざと怒ったような表情を見せてそう言った。
「まあ、今は優しくなったって言っているんだからええやん」
とカツヤは笑いながら、ワイングラスを顔の前に持ってきて乾杯のポーズをしてから飲んだ。
イツキも同じようにワインを飲んだ。




