オーフェンからの相談
エリザベスには会わない代わりイツキは
「オーフェン、今回は文句を言わなかったな」
と、まだ何か言いたげな表情をしているオーフェンに話しかけた。
「うむ。大した事ではないのだが、少しな。また、いずれお主に相談するかもしれん」
「分かった。また何かあったら言ってくれ」
そう言うとアイリスに振り向き
「これからここでやっていけそうか?」
と声を掛けた。
「はい。憧れのキース様と一緒なら大丈夫です」
アイリスは目を輝かせながら言った。
イツキはアイリスの耳元で
「こいつからは悪意の波動は感じないの?」
と聞いた。
「全然感じません。感じるとすればイツキさんへの憎悪は感じますが……」
アイリスは幸せそうな顔のまま応えた。
「それは僕にでも分かるから……」
イツキは苦笑しながらそう言うと
「じゃあ、頑張ってね。折角モチベーションが上がったんだからね」
とアイリスを送り出した。
「はい」
その返事を残してアイリスはキースと一緒に広間から出ていった。
「それじゃ、僕は帰るからあとはよろしく」
用が済んだらこんなところに長居は無用とばかりに、イツキはさっさとテレポーテーションの呪文を唱えようとした。
「あ、イツキ、ちょっと待て! やはりお主に相談しておく事がある!」
オーフェンはテレポーテーションしようとしたイツキを押しとどめて、奥の部屋へと案内した。
部屋に入ると木製の丸テーブルと同じく木製の椅子が四つあった。
その内の一つにイツキは腰を下ろしながら聞いた。
「どうした? オーフェン」
「いや、大した事ではないのだが、お主、黒薔薇騎士団を覚えているか?」
オーフェンはイツキの向いに座った。
「ああ、あの見目麗しき、気高いお嬢様軍団かえ?」
イツキは記憶を辿りながら思い出した。
「そうだ。お主も戦った事があるじゃろう?」
「ああ、女子供と戦う趣味はないからやりたくはなかったが、オーフェンがアイツ等をけしかけるからな」
「けしかけてはおらん! ワシに対する愛と忠誠心だ。それをお主は本当に一瞬で木っ端微塵にしよってからに……」
オーフェンは寂しそうに呟いた。
初めてのオーフェンとのボス戦の折、イツキはこのお嬢様軍団を蹴散らしていた。
文字通りの瞬殺だった。
「まあ、忠誠心は認めても良いが、魔王が愛という言葉を吐くと違和感を感じるな。その木っ端微塵になったアマゾネス軍団がどうした?」
イツキは苦笑いしながらオーフェンお顔を見た。
「それらがポツポツと復活してくる時期だ」
とオーフェンはイツキの顔を凝視しながら言った。
「あ、そうか!」
思わずイツキは叫んだ。
魔王とその眷属で力のある魔族はある一定期間経つと蘇る。それでイツキたちに倒された魔王オーフェンもサルバもキースも蘇ってここにいる。
魔王といえども元は神。あるいは堕天使のように元は神の眷属だったものが多い。この世界では神に勝つことはあっても滅ぼす事はできない。
そして黒薔薇騎士団のほとんどは魔王の眷属で力のある魔族だ。
昔であれば魔王が滅して数百年から千年ぐらいは平穏な時代が続くのだが、冒険者が雲霞のごとく湧いてくるこの現状の中、それに合わせるかの如く数年単位で魔王はもとより魔族も蘇ってくるようになってしまっていた。
ある意味『需要と供給のバランスは保たれていた』と言っても過言では無かった。




