変わったチート
意外なところで彼女の興味を引いた事に驚きながらも
「今ならもれなく入れますし、この前入ったのも女性でした」
とイツキは応えた。
「それじゃあ、あのキース様の部下ってことですよね」
「残念ながらそうです」
――ちっ! またキースか――
とイツキは心の中で苦々しく思っていた。
「全然、残念じゃないです。私、これにします!!」
アイリスは即決で黒騎士になる事を即決した。
さっきまでのやる気のなさが一気に吹き飛んでしまっていた。
「あの……これ魔王の眷属ですよ。冒険者と戦うんですよ」
とイツキの一応は確認してみた。あとで聞いていなかったと言われると非常に困る。
「大丈夫。私が黒騎士となって、愚かな冒険者をこのオリハルコンでぶった切ってやります」
「いえ、それラグナロックでしょ? 名前間違ってますよ」
イツキは思わずツッコミを入れた。
「あ、そうでした。このラグナロックでぶった切ってやります」
――やっぱりこいつはギャグ体質だ。それにあんたもまだその愚かな冒険者だぞ……やっぱり道化師になればいいのに……――
とイツキは思っていたらアイリスが
「まだ道化師引きずってますか?」
とラグナロックを今度は抜いて言った。
「全然」
とイツキは慌てて首を振った。
――何なんだ? 何故分かる?――
――もしかしてこいつはチート持ちか? 読心術でもできるのか?――
そう考えたイツキは試しに心の中で
「アイリスの馬鹿女!」
と詰ってみた。
「なんだとぉ!!」
とアイリスは怒り狂った。剣がイツキの喉元まで迫って来た。
「な、なんであんたは人の心が読めるんだ!! 読心術でもできるのか?」
イツキは剣先を人差し指で軽く押さえながら聞いた。
「あ、……いや……実は私に悪意を持った感情は読めるようなんです」
我に返ったようにアイリスはそう答えた。
「じゃあ好意とか善意の感情は読めないんですね」
とイツキは確認した。
「そうなんです」
アイリスは小さい声で答えて剣を鞘に収めた。
「ふ~ん。そうかぁ……」
イツキはそう言うと心の中で
「アイリスちゃん可愛いね。大好き!」
と叫んでみた。
アイリスはイツキが急に黙ったので不思議そうな顔をしてみていた。
――ふ~ん。本当に分からないみたいだな。じゃあこっちはどうだ――
と、イツキは
「アイリスのブ……」
と思った時点でアイリスが
「なんだとこの野郎!」
と怒鳴った。
その瞬間、イツキは大笑いして
「いや、済まない。確かめさせて貰ったけど、相当笑えるチートな力を持っているね」
イツキは涙目になるぐらい笑って謝った。
「まあ、そのチートがどこで役に立つかは分からないが、すごい才能だと思うよ。殺意に敏感なのはこの世界で生きるには凄い能力だと思う」
「あまり、おちょくらないで下さい」
とアイリスは軽く不満げにイツキに言った。
「はい。失礼しました。それで、なんでしたっけ? 黒道化師でしたっけ? 人を笑いの渦に巻き込んで窒息死させる職種……でしたっけ?」
イツキはまだ笑いが止まらないようだ。
「違います! 黒騎士です。笑いの渦に巻き込んだりはしません!」
アイリスは大きな声で否定した。
「あ、そうだった。本気ですか?」
とイツキは真顔に戻って聞いた。
「本気です」
「う~ん。本気かぁ」
――また女の子連れて行ったらオーフェン怒るかなぁ……かと言ってハウザーのところにはまだ何も言ってないから連れて行けないしなぁ――
とイツキは少し悩み始めた。




