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自衛団

「え、あるんですか?……言ってみるもんだな」

とヨッシーは喜んだ。


「それでは行こうか」

とイツキは資料を戸棚にしまうと振り返って言った。


「どこへ?」


「ヨッシーに紹介する軍団に行くんだよ。実際にその目で見た方が早い」

そう言うとイツキはヨッシーの肩をポンと叩いた。


 二人はイツキの部屋を出てギルド建物の出口へ向かった。

イツキはギルドの受付で暇そうに座っていたマーサに

「彼は剣士で登録しておいてね」

と書類を渡した。

「はい分かりました」

マーサはその書類を受け取るとさっと目を通した。


「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

とイツキはマーサに声を掛けながら玄関に向かった。


「行ってらっしゃい」

とマーサの声を背中で聞きながら二人はギルドから出て行った。


「これから行くところはね。この街の自衛団の事務所なんだ。実はね、そこの団長も君と同じように転移してきた人なんだ」


「え、そうなんですか?!」

とヨッシーは驚いたように声をあげた。


「基本的に自衛団は未経験者はダメなんだが、君の潜在レベルは高かったしね。実際、剣もそこそこ振れたから取りあえず紹介してみようと思ってね」


「ありがとうございます」

ヨッシーは腰を90度に折り曲げてお礼を言った。


「こんな道端で良いよ。それよりもあそこに見える建物がそうだよ」


「え? 近いんですね」

ヨッシーが頭を上げると、石畳の通りにある十字路の角に建っている三階建ての建物が見えた。

玄関には大きな旗が飾ってあったが、それは軍旗なのか国旗なのか分からなかった。


 入り口の衛兵に

「通るよ」

とイツキが挨拶すると、

「団長は今、部屋に居ます」

と衛兵が敬礼しながら教えてくれた。

「ありがとう」

とイツキは応えて中へ続く石段を上った。


 そのまま、二人は一度一階のロビーに出てから三階まで上がった。建物の真ん中にある階段を三階まで上がると目の前が団長室だった。


 イツキが

「団長、居る?」

とノックをすると中から

「どうぞ」

という声がした。


 ドアを開けると正面に大きな窓が目に飛び込んできた。

その前に古い年季の入ったデスクがあって、そこに大柄な男が座っていたがイツキの顔を見ると笑顔で立ち上がった。

「イツキさん、どうしたんですか? 呼んでくれたら僕が行ったのに……」


「いや、一人紹介したい剣士が居てね。彼なんだけど」


「ほほ~。団長のシラネだ。よろしく」

と唐突にヨッシーに握手を求めて来た。


思わずその手を握り返したヨッシーだったが、あまりの握力に顔をしかめながら

「よ、よろしくお願いします」

と答えるのが精一杯だった。


「この人、馬鹿力だから気を付けてね」

とイツキが言うと

「あ、ごめんごめん」

とシラネは手を放した。

「いえ。大丈夫です」

とヨッシーはジンジンしびれる手をさすった。


「この子ね。今さっき転移してきたみたいなんだけどね。名前はヨッシー。標準型エクスカリバーを両手だけど普通に振り回せたから連れてきたよ」

と言いながら持ってきた書類を団長に渡した。


「え、未経験でエクスカリバーをですか?」

シラネは驚いたように聞き返した。


「うん。そう。だから連れてきた。剣士で雇ってあげてよ」

イツキはそういうとシラネにさっき事務所で作成した、ヨッシーの能力に関して記載されている書類を手渡した。


シラネはその書類を受け取ると、さっと目を落とした。

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