ヘンリーからの手紙
「ソロンを倒した後に調子に乗ってここにまでやってきおったわ。適当にあしらってやったら逃げて帰って行きおったが……。ワシとソロンを同じ扱いしよってからに……失敬な!」
と笑いながらオーフェンは憤慨していた。
「そんな事があったんだ……まあ、ソロンとオーフェンのおっさんとではなぁ……確かに格が違うからな。負けても仕方ない……無事に逃げられただけでも奇跡だな」
イツキはなぜオーフェンがヘンリーを知っていたのか納得した。
「しかし、ソロンを最初に倒したのはイツキだったな。案外あっさりやられたとソロンが言っていたな」
「そうだったかな。あの時は僕も結構、経験積んでいたし剣士だったからな。で、そのソロンを倒したヘンリーが、『モンスターが足りないので異世界からきた奴らを冒険者だけでなく魔人にもしたい』って言い出したんだけど、どう思う?」
とイツキはすかさず本題を切り出した。
「なんだと? 異世界からの人間を魔族にするだと??!」
そう言ってオーフェンとサルバは顔を見合わせた。
「まあ、取り敢えず、ヘンリーから手紙を預かって来たから読んでよ」
そう言うと、イツキは手紙をオーフェンに手渡した。
ロンタイルの魔王 オーフェン陛下
拝啓
私は都のギルド『シュレンツェン』のギルドマスター、ヘンリー・ギルマンと申す者です。
本日はイツキに託したこのメッセージをお伝えする機会を頂き感謝しております。
現在のこのナロワ王国、いやこの世界を取り巻く状況は非常に歪なものになっていると言わざるを得ません。
なぜならば、既にご存知の通り、異世界からの転生者の異常なる増加のお蔭で冒険者が一気に増え、本来であれば百年に一回程度で現れていた勇者の冒険が毎日のように行われ、それにより魔獣や魔族の方々も減少の一途をたどる様になりました。
この集団発生した冒険者軍団はパーティと言う名の徒党を組み、集団で魔人・魔獣を虐殺し、そして魔王の宮殿に押し入り、数々の魔獣・魔族を倒しただけはなく財宝や宝刀のを略奪していく有様です。
更にこの冒険者どもは貴族の娘を拐かし、無知なエルフをだまくらかしてハーレム状態であったりします。
流石にこの冒険者が過剰に発生する事態を当ギルドとしても看過する訳には行かない状況となりました。
そこで、当ギルドとしては、やってきた転生者を冒険者だけではなく、魔族をも選択できるようにできないかと考えました。
これからも当分は増えるであろうヒキニートな転移者を公平に冒険者と魔族に振り分け、この世界の平和を魔族の皆様とも取り戻したくご相談にイツキを送りました。
また、ダリアン山脈周辺、特にエルガレ山付近は重要魔人魔獣保護区として指定。モンスターの繁殖を促進し冒険者の立ち入りの制限も検討しております。
これに関してましては王宮の元老院にて国王よりの裁可を頂いた後になります。
何卒ご検討を賜りたくお願い申し上げます。
敬具
ナロワ王国ギルド シュレッツェン
ギルドマスター ヘンリー・ギルマン
この手紙を読んでオーフェンはため息をついた。
「ギルドマスターから魔王への依頼なんて聞いた事がないわ」
オーフェンはヘンリーからの手紙をイツキに手渡した。
「僕もないよ」
そう言いながら、イツキもその手紙にざっと目を通した。




