剣士誕生
「そうだよ。後で魔法剣士になったり、戦士になったりできるよ。あるいは騎士とかね。その時は前の職種の能力を案外持っていけるから、全くの無駄ではない。特に騎士は剣士をやってからジョブチェンジしたほうが有利だな」
「そうなんですね。じゃあ、剣士でやってみます」
「了解。職種は剣士ね」
イツキはデスクの上に置いてあった用紙に職種を剣士と書いた。
「さて、剣士は了解したけど、ヨッシーの実力を見ないとな。ちょっとこの剣を振ってみて」
イツキは立ち上がって青銅の剣をヨッシーに手渡した。
受け取ったヨッシーはその剣を軽く振った。
「どうだね? コントローラーではなく本物の青銅の剣を振った感触は?」
イツキはヨッシーに優しく笑いかけながら聞いた。
「はい。案外軽いですね」
ヨッシーは青銅の剣を振り回しながら応えた。
「ほほ~、じゃあこれは?」
とイツキはヨッシーの答えに満足げに頷いてから、今度はツヴァイハンダーを手渡した。
「あ、これしっくりきますね」
ヨッシーは剣を頭上から振り下ろした。
シュッと空気を切る音がした。
「なんだ、全然余裕じゃん。じゃあ、ちょっとランクを上げてこれは?」
イツキは壁に掛けてあった標準型エクスカリバーを手に取ると、少し感触を自分で確かめてからヨッシーに手渡した。
「ずしっと来ますね。片手より両手で持つ方が安定します」
そういうとヨッシーはエクスカリバーを両手で持って振り下ろした。
「うん。いい感じだな。だいたいのレベルは分かったよ」
イツキはそう言うとヨッシーからエクスカリバーを受け取って鞘に収めた。
「なかなかのもんだな。これなら結構いいところへ行けるよ」
「本当ですか?」
ヨッシーは明るく応えた。
「うん。後は潜在能力を見たいな。ちょっとこの装置の上に手を置いてくれるかな」
イツキはデスクの端に置いてあった四角い箱を指さした。
それは箱の天井が円形で水晶が嵌め込まれているようだ。箱の周りにはきれいな装飾が施されていて、ちょっと大き目な宝石箱みたいな感じだった。
「これはなんですか?」
とヨッシーは聞いた。
「能力を鑑定する機械だよ」
「スカウターですね」
ヨッシーは昔見たアニメを思い出しながら言った。
「ま、そんなもんだな」
とイツキは応えながら自分でもヨッシーのスキル鑑定を行っていた。
イツキはこんな機械を使わなくても鑑定スキル持ちではあったが、カウンセリング中は敢えて相談者にも自覚させるためにこの鑑定機を使っていた。
「その丸いところに手をかざしてみて」
イツキに言われてヨッシーは手をかざした。
キュルルル……と何かを計測しているような音がしたかと思うと、箱の下の方から紙が1枚出てきた。
イツキはそれを手に取ると
「ほほ~、だいたい思った通りだけど、運動能力は思った以上に高いな……おお、地頭も良い。本当に魔法剣士でも行けるな。どうする魔法剣士にする?」
イツキはヨッシーに聞いた。
「いえ。このままで良いです」
ヨッシーは迷わず応えた。彼の中ではもう迷いは全くないようだ。
「了解」
イツキは頷くと自分の椅子に座りヨッシーに聞いた。
「さて、ここからが本題だ。ここで君はこのギルドのどこかの軍団かパーティーへ所属する事になるんだけど、アテはあるかい?」
「あるわけないですよ」
とヨッシーは即答した。
「だよねえ」
イツキは軽く笑った。
「ヨッシー。ここで君は二つの選択肢がある。一つは軍団あるいはパーティに参加して仲間と協力して腕を上げる。
もう一つは軍団には参加せずソロで戦っていくか……だ。どうする?」
「どうするって言われても、こんな世界に一人で放り出されても訳分からないですよ。どっかのパーティでも軍団でも入りたいです」
ヨッシーは力を込めてイツキに訴えた。
「だろうね。そこでだ。僕はここで君に合ったパーティを紹介する訳だが、僕の紹介を受けるかな?」
「はい。是非お願いします。」