パーティへの紹介
――凄い人見知りだな。でも自覚はあるんだ――
とある意味感心しながら
「そうなんですね……」
とイツキは応えた。
「それでヒキニートになったと?」
イツキは確認するように聞いた。
「そうです。それが一番の理由です」
「なるほど……わかり易い理由だ。でも、それで見知らぬ人達とパーティ組めます?」
一抹の不安がイツキには残った。
ヒキニートのスチュワートはしばらく考えてから
「初日はほとんど話が出来ないかもしれませんが、二日目以降なら大丈夫かと……」
「会話も何とかなる……と?」
イツキはもう一度確かめるように聞いた。
「はい」
そう言ってスチュワートは頷いた。
「それならなんとかなるかも」
と言った瞬間にイツキはひらめいた。
「紹介したいパーティがあるのですが、そこのリーダーに会ってみますか?」
イツキの瞳がきらりと光った。
――そういえば今週末、ナリスのパーティが旅に出るはずだ。吟遊詩人が欲しいと言っていたな。未経験でもその内レベルも上がれば歌えるようになるだろう――
――そうだ! ナリスも転職したばかりだからレベルは低い。暫くはこの辺である程度までレベリングをするはずだ――
イツキは彼にしては珍しく頭をフル回転させていた。
「ちょっと待っていて」
イツキはスチュワートを置いて部屋を飛び出し、ギルドの受付に向かった。
「マーサ! まだナリスのパーティは出てないよね」
とマーサを見つけると聞いた。
「そうね。まだ出てないわ。明日の予定よ。慌ててどうしたの?」
驚いたような表情でマーサは聞き返した。
「今日は、ナリスはギルドに顔を出していないか?」
マーサの質問はイツキの耳には届いていないようだった。
「え? さっき見かけたわよ」
そういうとマーサはギルドのホールを見渡した。
「あ、あそこで誰かとお茶を飲んでいるのがナリスじゃない?」
イツキはマーサの指さした方向に同じく冒険者と思われる女性と丸いテーブルでお茶を飲んでいるナリスを見つけた。
「あ、本当だ。ありがとう。マーサ!」
そういうとイツキは自分の部屋に戻り、スチュワートの腕を掴むやいなやナリスの元に走った。
「ちょ、ちょっと待ってください……息が続かない……」
スチュワートはもう息が上がっていた。
「何言ってんだ。そんな事では冒険も出来ないぞ」
イツキはお構いなしに走る。
「そう言われても、ゼイゼエ……もう何年もヒキニートだったので……ゲホ」
イツキ達がナリスの前に辿り着いた時はスチュワートは肩を大きく揺らしてゼイゼイと息をしていた。
「あら? イツキどうしたの? 万引き犯でも捕まえたの?」
と不思議そうな顔でナリスはイツキに聞いた。
「え? 違う違う」
とイツキは否定したが、どう見ても逃げた万引き犯を捕まえた私服警官の図にしか見えなかった。
あるいは陸に上がったトドを保護した動物園の飼育員にも見えるかも知れない。
「実はナリスの今度のパーティに、この人を連れて行って貰いたくてね」
イツキは首を振りながらスチュワートをナリスに紹介した。
「え? その万引き犯を?」
怪訝な顔をしてナリスはスチュワートの顔を覗き込んだ。
「だからぁ! 万引き犯ではないって……彼は吟遊詩人だ!……まだ見習いだけど」
イツキは声を少し荒らげ気味に言った。
「え~!」
とナリスは驚いたように声を上げた。そして同じテーブルに座ってお茶を飲んでいた女性に
「どうする?」
と相談した。




