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その名はヨッシー

「名前ですか……吉沢雅史です」


「そうかぁ。まだちゃんと覚えているんだ。ところで、今までネットゲームかなにかでハンドルネームとか無かったの?」

とイツキは聞いた。


「あります」

「それは?」

「ヨッシーとか……」

「分かり易いな。じゃあ、君はこれからヨッシーね」

「はいぃ?」

男は……いや、ヨッシーはまだ理解できていない顔でイツキを見た。


 イツキは背もたれに体を預けて椅子を揺らしながら

「いやいや、ヨッシーなんて普通のハンドルネームで良かったねぇ。この前来た奴なんか人前で名乗るのも憚れるような変なハンドルネームだったからな。流石にその名前は選ばなかったけど。でも、なんだか不満そうだね?」

と聞いた。


「そういう訳ではないのですが、ちょっと安直かなぁっと思ったもので」


「そっかぁでもね……この世界で吉沢雅史なんて言ったって誰も分からんよ。ヨッシーならまだ通じるな。どうせこの国でモブキャラの名前なんか『何とか村のヨッシー』程度の呼ばれ方だからそれで大丈夫だ」


「もし君が間違って貴族とか勇者にでもなれば、苗字も名前も必要になるけどな。それまで名前なんてなんだって良い」

とヨッシーに言い放った。


 ヨッシー(吉沢雅史)は力なく

「はぁ……そういうもんなんですね」

と項垂れながら応えた。完全には納得していないようだ。


「おいおい、『こんな事ならもっとカッコいいハンドルネームを言えばよかった』なんて思っているんだろう?

仕方がないな。良いよなんでも。良い名前が思いついたらまた教えてよ。改名なんていつでもできるから。ただ受け狙いで変な名前は付けない方が良いと思うな」

とイツキはヨッシーに優しく言った。彼も少しばかりきつく言い過ぎたと後悔していた。


「ところでヨッシー(仮)君……」


「いえ。(仮)はもういいです。ヨッシーにします」

ヨッシーは腹をくくったように言った。


「そうか。男は思い切りが大事だからな」

イツキは面倒な事が一つ無くなったとホッとした。


「では、ヨッシー。この世界に来たからには、君はこれから働かなきゃならん。働かざる者食うべからずだ。その(ことわり)はここでも同じだ。RPGでも職業を選んだだろう? 何になりたい?」


「何があるんですか?」


「もっともな質問だ。ほらこれが全職種だ」

とイツキは職種が書いてある表をデスクに広げてヨッシーに見せた。

そこには十数種類の職業が書いてあった。


「ただ職種はこれ以外にもどんどん増えている」


「え? そうなんですか?」


「ああ、そうだ。この前なんか『話術士』なんて職業もあったよ。本当にいつの間にか職種が増えているなんて紹介するこっちの身にもなってほしいもんだわ」

とイツキはため息交じりに言った。


 ヨッシーは椅子から立ち上がるとそれを食い入るように見ていた。

暫くして

「僕は何が向いているんでしょうか?」

と不安げにイツキに聞いた。


「何がしたい?」

逆にイツキが聞き返した。


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