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ナリスとの関係

――げげ、なんて戦闘スキルが高いんだ!! シラネ以上に力もあるぞぉ……頭の中まで筋肉か? バカ皇太子だけはある……あれ、ちょっと待てよ――


「殿下、これを受けた時に酔っぱらってましたよね?」


「だから、さっきから少ししか飲んでないって言っているだろう。飲み屋のボトルを二本ほど(から)にしただけだ!」


――やっぱり、殿下はバカの上にアル中だ――


「もう一度、今度はこのデスクの上にある奴で測ってみましょう。お手をお願いします」


 皇太子はうんざりした顔をしたが、立ち上がって測定機の上に手をかざした。

キュルルルル……と音がした。そして箱の下の方からスコアカードが出てきた。


 イツキはそれを手に取ると

「ふふん! やっぱりね」

と呟いた。


「どうした? 魔導士だってなれそうか?」


「それは流石に無理です。が、魔道剣士ぐらいなら……何とか……」


――と言ってもそんなに変わらないが――


「まあ、ロイヤルファミリーは優先的に士官学校には入れますが、本当のバカは入れないですよ。だから気になってもう一度測らせてもらったんですが、やっぱり最初の奴はアルコールのお陰で正確な数値が出てませんね。だから、本当のバカではないようです殿下。ご安心ください」


「お前、俺をバカにしてね?」


「いえいえ、全然」

イツキは皇太子から視線を外して答えた。


「兎に角、問題は解決しました。

このスコアカードを持って転職の神殿へ行ってさっさと魔道剣士にでもなってください。そしてレベル1がら修行し直してください!!」


イツキは新しいスコアカードを皇太子に手渡した。


 スコアカードを受け取った皇太子リチャードは、ソファーに深く腰を下ろしたまましばらくそのカードを見つめていた。


「ところで、あんたの名前を聞いて良いかい?」

カードを見つめたまま皇太子はイツキに聞いた。


「……キャリアコンサルタントのイツキです」

イツキは怪訝な表情を浮かべながらも答えた。


「そうかぁ……じゃあ、俺はちょうどいい場所に担ぎ込まれたという訳だな」


「ある意味そうですなね」


「で、あんた、ナリスとどういう関係だ?」

皇太子は顔を上げゆっくりと腕を組んで質問した。


「それはどういう意味ですか?」

イツキは聞き返した。


「言ったセリフのまんまだよ」

表情も変えずに王子は言った。


 イツキはしばらく考えて

「別に、ちょっと知っているというだけですよ」

と言った後、微妙に視線をそらした。

「ほほ~。レベル5程度の女剣士をか? 奇遇だな。そんなもん世の中に掃いて捨てる程居るぞ。

ナリスはたしかに美人だが美人だけなら他にもいくらでもいる。あんたさっきキャリアコンサルタントとか言ったよな。もしかして、ここでナリスの転職を手伝ったんじゃないのか?」


――そのナリスに舞い上がっていたバカは誰だよ?――


 イツキは皇太子への認識を一つ改めた。

――単なるバカ王子だと思っていたらそうでもなかった。勘だけは良い――


 イツキは黙って皇太子を見ていた。


「なあ、ナリスの前職はなんだ?」

と皇太子は聞いた。


「ふぅ。流石ですねえ……。やっぱり単なる王子にしておくには勿体ない。

そうですよ。ナリスはここで転職のカウンセリングを僕に受けました。個人の情報は本当は流しちゃいけないんですけどね。今回は相手が相手だけに仕方ないでしょう。

ナリスの前職は……踊り子ですよ」

少し考えてからイツキは諦めた様な表情を浮かべてナリスの前職を教えた。

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